リベルト国教会の聖女
目の前には、規模こそ大きいものの、修繕の跡が目立つ建物。
……うまく言えないが、要するにボロい。
王都で、王城の次に立派な建物…。
そんな建物が立っていてもおかしくない。
おかしくない規模と、影響力を持つ、リベルト国教。
形骸化されていたものの、国王の指名権すら持つ。
戦争前までは、かなり衰退していたようだが、イリアス教団が召還したという聖女を保護してから、復活した。
戦争では、リチャードに味方して、戦後のイリアス教団との対立に勝ち、国教としての権威を取り戻した。形骸化されていた国王の指名権を行使して、リチャードを国王にすることで、更に勢力を伸ばした。
イリアス教団は、北方のイリアス聖国のみの勢力になってしまった。
勇者は聖女を陥落させて、リベルト国教を利用した大罪人。
イリアス教が、俺のことを狙うには、こんな背景がある。
そして、そのリベルト国教の最高権力者。
それが、聖女ミュールである。
いっちゃあ何だか、ボロい教会の前に、二人と一匹が立つ。
お祈りに訪れると思われる人が、あとをたたない。
「ここ、なのかな?」
ナナコは戸惑っている。
「ここだよ。確かにリベルト国教総本山だよ。」
「ななこのしってる〈きょうかい〉は、もっと、なんというか…」
立派だったと?
「綺麗だった?」
「うん。」
「これはな、聖女ミュールの、ミュールが聖女たる所以なんだよ。」
「せいじょさま、ゆえん?」
「うん。建物はまだ使える。そんな金があるなら、孤児院とかの慈善事業にって。」
ちょっと難しかったか。
「せいじょさま。やさしいひと?」
「そう言うことだ。」
尊敬すべき人。ナイスなバディ。お顔も勿論美しい。普段は優しいし、ご飯も美味しい。たまに作るお菓子は絶品。不思議で面白い知識がある。そして、ナイスなバディ。
大事なことは、2回言うものだ。
理想の人。好きだったし、なんで別れたんだろうか…。
………。お、思い出した。
「パパ。ふるえてる?だいじょうぶ?」
ナナコが俺を心配そうな顔で見上げる。
「武者ぶるいだよ。だいじょうb…」
咬んじゃった。
「パパ。あしたにする?いそがせて、ごめんなさい。」
ナナコは、俺に迷惑をかける呪いが何とかなるかもと思い、急いでいたのだろう。
娘の思いに答えるのが、父親だろう。娘に心配させる父親って、ダメだろ!
「大丈夫だ。行こう!」
繋いだ手の温もりは、俺に勇気をくれる。
勇者の俺に勇気をくれる娘。
ナナコ最強説だな。
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聖女ミュールこと、小笠原 美海。
私の本当の名前。
ミウって言ったのに、ミュールって聞き間違えられて、今に至る。
ミュールだと、履き物になっちゃうよね!
ま、いいけど…。
今日の朝、アリスさんがやって来て、エイトとその娘さん?のナナコちゃんが来るって、教えてくれた。
「エイトがつまらんこといったら、これではたけ!」
エイトしばき棒って言ってたけど。
……ハリセンだよね?
あの関西の漫才師が使ってた…。
あ、慰問に行った村で、作ってあげたことあったっけな?
リゼちゃんだっけな。魔族の血をひいためっちゃ可愛い娘。
まさか、エイトとそんなことになるなんてね。
エイトが婚約したことや、ナナコちゃんの呪いのこと。力になってやってくれと私にお願いして、アリスさんは、王城へ向かっていった。
一刻も早くリチャードさんに会いたいだろうに、自分のことは後にする、優しい人。
お願いされなくても力になるけど、アリスさんに免じて、素直に言うことを聞こう。
でも、ナナコちゃんだっけか。
時間的には、私と別れて、すぐの子どもってこと?
同時進行だったら、なんか悲しいけど…。
まぁ、昔のコト。
今は、私にも伴侶がいるしね。
護衛をしてくれているレグスを見る。
筋肉粒々のナイガイ!
私に優しくしてくれながら、例の欲求も満たしてくれる。理想の旦那様よ!
何時も通りに、巡礼の皆様に祈りを捧げていたら、
黒髪の親子連れが入ってきた。
小さい子どもは、ナナコちゃん?
なにあれ、メチャクチャ可愛いじゃん!
で、その二人。
受付でなにやら揉めてる。
リベルト国教会は、予約制だからね。
信者たちが、押し掛けてくるので、予約制にするルールを作ったのよ。
「あれは?」
レグスと頷き合う。レグスも、エイトのことは知ってる。
お祈りの途中だ。レグスに応接室にでも案内してもらおう。
レグスが受付に行き、エイトに声をかけようとした時。
…う、勇者に逃げられた。
あ、忘れてた。
あの時、私の言うこと聞いて、勇者をほりにいったのは、この勇者だったんだった。
レグスが勇者ってのは、文字どおり勇気ある者って意味だよ!
私のお願いとはいえ、嫌がる最強勇者に、襲いかかろうってんだから。
今でも、凄いものを見せつけてくれる。
いや、ま、最後の肝心なところは、見ないようにしてる。
部屋で一人で悶々とすることが、ムラムラしてハァハァ………。
…なんでもないです。
とにかく今、幸せなのに違いないよ。
…お祈りの時間が終わった。
とにかく、エイトを捜さなくっちゃね。
すみません。
更新が遅れました。
まだだ。まだ終わらんよ!
赤い人も言ってたし…。
この時は金色だったっけ?
評価とか入れてもらえると、頑張れるかも…。
ま、よろしくです。




