王都。
アリスと別れ、王都に入った。
アリスは、お城へ向かうのだろう。
愛するダーリンの元へ。
リゼは、どうしてるかな。
トマール村から、歩いて20日くらいかかったかな。
湖で遊んだり、魔物退治したりしながらだけど。
本気で走ったら、1日で行ける距離ではある。
会いに行くことだって出来るか…。
でも、今優先すべきはナナコのこと。
リゼとのことは、将来ゆっくり考えていく。
…でも、会いたいな。
アリスとリチャードを見ると、俺もそんな気持ちになる。
人族最大の国であるリベルト王国の首都。
王様がいる城があり、リベルト国教の総本山の協会があり、冒険者ギルド等の各種ギルドの本部があり、他にも、人族の活動のあらゆる施設が集まっている。
西の都イストと比べても、3倍位の規模。もっとかな、大きすぎてわからん。
「おおきいねぇ!」
大きな建物も多い。二人と一匹は、キョロキョロと回りを見ながら歩く。
オノボリさんスタイルである。
「とりあえず、冒険者ギルドへ行こう」
「うん。」
コダちゃん撃退、レッドGグリズリー他数多の魔物の討伐の報告。セブの従魔登録。結構やることがあるな。
冒険者ギルドも、地方都市のお城くらいある。
受け付けに並んでいると、
「パパ、あっちあいてるよ!」
ナナコに言われる。そだね、あっちだよね。
無意識に、胸の大きい受付嬢の列に並んでいた。
…。無意識に、だよ。
「おう、いらっしゃい。」
空いていた方は、強面の男性受付だ。そりゃ隣の受付嬢の笑顔の対応の方がいいよな。
たまたまギルドマスターが、受け付けにヘルプで入っていたようだ。強面で誰も来ないので、ヘルプにならんが…。
ギルドマスターだけあって、会ったことがある。知ってる顔だ。
「【勇者エイト】じゃねえか!久しぶりだな。」
あ、言っちゃった。
ナナコを見る。呪いを停止魔法と解除魔法で無効化している。
わが娘ながら、凄いです。
「…だいじょうぶ。」
「キツかったら、俺が解除してやるからな。」
「うん。この〈うでわ〉から、ちからもらえた。だいじょうぶ。」
アリスがくれたブレスレット。魔力補助の特殊能力あるのかな?
「あの、俺が勇者だってことは内緒で。」
「あぁ、わかった。何か事情があるのか?」
「まあな。で、用件なんだが。」
上述した件を報告していく。
荷物が多くなるので、あまり素材は持ってこれていないが、レッドGグリズリーの牙や爪、コダちゃんの卵の殻なんかは、高く売れた。
ナナコの口座には、早くも3桁万リルの残高が…。
もはや、お金の教育できないな。
一応、大事に使うことを教えよう。
「ナナコちゃんだが、Aランク魔物の単独討伐、災害級の撃退メンバーだ。ランクアップできるぞ。」
流石は、ギルドマスター。話が早い。
「カードが白いキラキラになるぞ。」
Sランク冒険者。超一流の証。
こんな幼女が、であるが、ここは冒険者ギルド。完全実力の世界である。
「一応、実力を確認したいから、俺と模擬戦な!」
「って、受付の仕事は?」
「後ろ見ろよ!誰も並んでねえ。」
確かに…。
「というわけでアマンダ。席外すわ。」
「もう!だからマスターじゃ役に立たないって言ったのに!」
一人忙しそう。お気の毒に。
でも、この並んでいる人達は、そのアマンダちゃんに対応してほしいんだし。仕方ないね。
それにしても…。
勇者のスキルでサイズがわかる。
うん。最大級だな。Gクラスだ!
「パパ。あんまりみるとイヤがられるよ!」
う、娘に注意されるなんて…。恥ずぅ。
数秒凝視しないとダメなのが、このスキルの欠点だな。
錬成場の様なところで、模擬戦をやる。
刃のない武器を使うようだ。
このギルドマスター。元Sランクだが、現役を退いてるし、対人タイプの戦闘スタイルじゃない。
アリスに鍛えられて、数多の魔物を屠ってきた、成長著しいナナコの敵じゃない。
ヒマつぶしに、ナナコと手合わせしたこと後悔するぞ。
「いきます。」
ナナコが言う。
思った通り、ギルドマスターは、ナナコのスピードに全然ついていけていない。防戦一方である。
防御は上手く、ナナコと言えど急所がつけない。
マスターは、ナナコの息継ぎの間に距離をとり、剣圧を飛ばす。
範囲攻撃か、これなら横には避けれない。
ナナコは、飛び上がって避ける。
上空で、体制は変えられない。ギルドマスターは、ナナコの着地点で待ち構える。
ギルドマスターの剣戟を、空中で受け流すナナコ。
レッドGグリズリー戦の経験が生きている。
それにしても、空中でか!高等技術だぞ!
降り際に、ナナコの刀が後頭部にヒット。
勝負あり。だな。
ギルド職員から回復魔法をかけられて、気が付いたギルドマスターは、あの三男シグルド君、Aランク冒険者ベイス君と同じく
「ナナコ様、これがSランクのギルドカードです。」
ん、態度が…。ナナコ様?
ナナコのしもべが増えました。
「しろいキラキラ。」
Sランクはプラチナカード。
俺のSSランクはブラックカード。
「俺のが黒いから、なんかセットみたいだな。」
「せっと?」
「うーんと、お揃いってこと。」
「うん、おそろい。」
ナナコが笑ってくれた。
良かった。何があっても、ナナコの笑顔が見れれば、それでヨシ。なのだ。
新章が始まりました。
これからもよろしくです。




