勇者エイト。それがキーワード。
「えっ?、そうなんだぁ。へぇー。エイトさんに娘か、知らなかった…。」
そりゃ、そうだろ。今、娘にしちゃったんだから。
「ま、俺も、びっくりしてるんだけどね…。」
「あ、そうか。そういうことか。」
モルドさんが、なんか、納得している。なんだろ。
「あ、そうそう。さっきエイトさんに凄い美女が訪ねてきたっていったろ?」
あ、あれ、ホントのことだったの?
「あ、それ、俺を引っかけるためじゃなかったの?」
「いや、そのコのことだよ。」
「へっ?」
どういう話だ。モルドさんが続ける。
「今日の昼、そのコと黒い服を着た男が村の近くに現れてな。エイトさんの家を聞いたりしてたんだよ」
「俺を?」
「怪しかったから、答えなかったけど。娘さんだったんなら、教えても良かったのかな?」
「いや、モルドさんは正しいよ。まぁ、結界があるから、悪意のある奴は、この家には入れんだろうけど。なんで…」
この村に、俺の家を怪しい奴にホイホイ教える人はいないけど…。
「まぁ、こんな大層な結界あれば、検討もつくだろ。」
「それも、そうか…。」
あ、その黒い服の男をつかまえたら、このコの呪いを解くことできるかもしれん。
「モルドさん。その黒い服の男は?どこに行ったかわかる?」
この小さな村で、みんな知り合い。知らない奴は目立つ。
「そうだな。村のみんなに聞けばすぐ分かると思うが…」
モルドさんが、少女の方へ目を向ける。
「おじょうさん。こんばんは。」
少女は固まっている。無理も無いか…。
「あ、人見知りかな。ごめんね。」
モルドさんが優しく微笑みかける
「あ、こ、こんばんは…。」
消え入るような小さな声が聞こえた。
「あ、良かった。嫌われてないようだね。」
「きらい?…じゃ、ないです…。」
「おじょうさん。おなまえは?」
あ、どうしよう。このコ名前無いんだった。
「なまえ?」
「うん。おじょうさんって呼ぶのもなんだし。なんて呼んだら良いのかな?」
「あ、わたし、ななば、」
七番って呼ばれてたって言うのはマズい気がする。
「あ、そうだ。名前な。なな…こ?」
ななって言い始めたから咄嗟にでた。ナナコって。変な名前…。いや、可愛いよな?
「なんで、疑問形なんだよ?」
モルドさんは不思議そうな顔をしているが、少女は頷いている。
ナナコで、良いのかな。
「ななこ。…です。なまえ、ななこ。」
笑顔とまでいかないけど、今までで一番満足そうな顔。ななっていうと、イヤなこと思い出しちゃうと思ったけど、良かったのね。
「じゃあ、明日には、その黒い服の男がどっちへ向かったくらいは分かると思う」
「あぁ、お願いします。ナナコをおいて消えちまったからな」
「じゃあな、でも、まさか勇者エイトにこんな可愛い娘が居たなんてな。じゃあな【勇者エイト】さん!」
モルドさんは、俺に向かって勇者エイトと言って去って行った。
「ふうっ。まあ、なんとかなったか…。」
…殺気。ナイフを拾ったナナコが俺に向かって突進してくる。
瞬速の動き。全く無駄の無い熟練の暗殺者のよう…。
感心している場合じゃ無いな。まぁ、それでも、勇者として世界最強といわれる俺の敵では無い。
ナイフを手刀で落としてナナコの腕を掴み拘束。
「ふう、大丈夫だ…。」
「ごめんなさい。からだが、かってに…。」
涙を拭いてあげる。それが呪いってやつだよ。
あ、自爆魔法も作動するのかな?
…やはり魔力の暴走を感じる。
「解除魔法」
「ふぅっ。もう大丈夫だ。」
「ごめんなさい。もう、いやっ」
「ナナコが悪いわけじゃ無いよ。俺は大丈夫だから、泣くなって!」
「うん。ななこ。なかないようにする…。」
今つけた名前だけど、名前を呼ぶとナナコが落ち着く気がする。
あ、でも、こうやって魔力を使うと…
「エイトさん!なにかあったか?」
えっと、言い訳、言い訳…。
「大丈夫です。ナナコを治癒してただけだからっ!」
「そっか。なんか治癒魔法の感じじゃなかったけど。まぁ、良いか。」
うん。まぁ、良いのよ。それで。俺は問題ないから…。
モルドさんは、去って行ったが、振り返るとナナコがうつむいている。
「わたし。かえらないと…」
えっ?いっしょにいたいって言ってくれたじゃん。なんで?
かえったら、ころされるって言ってたよね。
じゃあ、返したらダメだろ。
「ダメだ。帰さないよ!」
ん、小さい女の子を家に居させて、帰さないよって…。
なんか、犯罪チックな臭いがするでよ。
違うんだからねっ!ナナコのためなんだからね!
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