親友との再会
何はともあれ。
「久しぶりだな。会いたかったぞ。」
リチャードが手を差し伸べる。
握手して、
「ああ、俺もだ。親友よ」
ガチッと抱き合う。
「で、そのコが?」
ナナコを見てリチャードが聞いてくる。
「あぁ、娘のナナコだ。」
「俺は、エイトの親友のリチャードだよ。よろしくな!」
「はい。パパがおせわになってます。よろしくおねがいします。」
ん、どこで覚えたんだ。そんな挨拶。
「おほ、賢い娘だ。エイトには勿体無いな。俺の娘にしたいくらいだ!」
ん、お前の娘ってと、お姫様になるな。
…お姫様として着飾ったナナコ。想像するだけでも、可愛いよ。あー、違う違う。
「リチャード!ナナコは俺の娘だからな。お前にはやらん。」
ちゃんと言っておかないとな!
「…社交辞令に決まってるだろ!冗談だよ…。」
「…。パパ、ナナコでも、じょうだんだってわかるよ。」
おう、そうか。
…あれ、なんか場が白けてる?
ナナコは、セブに裾を引っ張られて、離れていった。
それはおいておいて、リチャードが俺のことを【勇者エイト】と言うことはない。だから大丈夫。
「で、お前に娘っていうと、リゼは?ダメだったんか。」
ん?勘違いか。リチャードはリゼのこと知ってたっけ?ダメってなんだよ?
いろいろと、わからないこともあるか。
「いや、事情を話すと長くなるんだが…」
仕方ないので、事情を話した。
ナナコと親子になったいきさつを話した。
呪いの件。力になってくれるかもしれん。
「そっか…。分析や解析なんかは、得意じゃないんだが、俺の聖魔術でも、探ってみるか。」
「おぉ。頼むよ。ナナコ。こっちにおいで。」
セブと遊んでいたナナコを呼ぶ。
いい遊び相手が出来たようだ。やはり小さい子どもは遊ばないとだな。
…火の吹きあい、とかやってる…。ちょっと、やめてほしいけど。
「なぁに、パパ。」
「リチャードはな、聖属性なんだよ。呪いとは対極の。」
「たいきょく?」
「反対だから、なにかできるかもしれん。ちょっとリチャードに見てもらおう。」
「うん。」
リチャードから聖属性特有の青白い魔力が発散する。
「なにか分かったか?」
「うーん。やはりこう言うのは聖女に任せた方が良いな。」
ま、聖女に会わないとダメって事が分かっただけでも、良しとするか。
「そっか、ま、初めからそうするつもりだったし。」
「分かったことは、なかなか複雑な術式と言うことと、無理やり解除しようとすると、自爆が作動する。」
「自爆なら、止めてるぞ…」
停止魔法で止めてしまえる?
「いや、その場合の自爆魔法は、恐らく外からは干渉できないかも知れなくなる。」
普段の呪いの発動は、【勇者エイト】とか物理攻撃の停止といった外的要因で作動するために、外からの干渉を受けられるように呪いが作動する。
無理やり呪いに干渉するといった、内側から呪いの発動を起こしてしまうと、外からの干渉を受け付けなくする可能性があるということか。
ナナコ自身が内から解除するやり方は?
危険だな。無理だった場合に、なにもできないまま、ナナコを失ってしまう。
そんな博打うてんよ!
どうしようもなかったら、…その時は、俺の命と引き換えだ。ってそんな方法があるかどうか。
ナナコの呪いを解くために、犠牲はいらない。
俺は、自分を犠牲にしてもいいが、それは、ナナコのこれからの長い人生に負担となってしまうだろう。
その為にも、色々な方法を模索して、ナナコ自身の成長もさせる。
できるだけ万全にして、イリアス教団の術者に対峙するんだ。
日も陰ってきた。ここらで野宿かな。
何時ものように、テントをはり、結界を作り、晩御飯の用意を始める。
一人多いのを忘れて。
立ち尽くしている一人を残して。
本日のご飯係のアリスだけは、
「リッ君に儂の手料理じゃ。胃袋掴むんじゃ。」
とか独り言言ってたみたいだけど。
なんか忘れている気がするな。
アリスは、昨日ナナコと狩った、魔物の肉でシチューを作っていた。
俺、ナナコ、リチャード、アリスと飛竜の子どもセブ、4人と一匹で晩御飯を食べる。
「あーちゃん。料理上手くなったな!」
リチャードとアリスは、当然のように密着している。
確かに、美味い。3人で旅してた時は、みんな料理出来ないから苦労したよな。
今、俺が料理できるのは、必然というか。
アリスは照れながら言う。
「うん。頑張ったの。」
もう暗いから分からないけど、アリスの顔は真っ赤になっていることだろう。
…でも、何時もの偉そうな口調はどうした…
「アリス。何時もの口調は?」
「なんじゃ。何時もの口調とは?」
あれ、俺には、「じゃ」言葉なんだ。隠している訳ではないのか?
ご飯も終わり、ナナコもおねむな感じ。
セブは、テントの横で既にお休みである。
考えてみたらこの竜、生後一日。なのに凄いしっかりしてるよな。肉食ってるし。
ま、竜だし、そんなものなんだろ。きっと。
「テント…。ちっちぇえな…。」
呟くリチャード。
「あ、」
リチャードは入れないか…。
じゃない。大事なこと忘れている気がする。
「テントは一つなのか?」
リチャードが、戸惑いながらも聞いてくる…。
あ、土下座案件…。
連続投稿!
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