卵から孵った竜。
「久しぶりだな。リチャード。」
と語りかけるものの、聞いてない…。
リチャードは、アリスと向かい合ってる。
「リッ君。会いたかったんじゃー。」
「俺もだよ。あーちゃん。」
熱い抱擁。熱い口付け。
いいんだけど、恋人同士でいいんだけど。
見た目は、美丈夫だけどアラサーのおっさんと、初等学生の美少女の抱擁とキス。
アカンやろ。犯罪やろ!
実際には、初等学生のアリスが年上なんだが…。
「ナナコ。あっち向いてようね。」
子どもの教育に悪いぜ。
「アリスおねえちゃん。うれしそう。…あ、うん。わかった。」
俺たちが向いた先には、コダちゃんが作った壁が壊れて、その先に大きな巣のようなものがある。
コダちゃんは、卵を残して行くと言っていた。
ナナコと巣の中の卵をみる。
「大きいね。」
「うん。わたしくらいある?」
そこまでは大きくないが、それでもナナコの頭くらいある。
「魔力を注げば孵るって言ってたかな。」
「まりょく?」
「あ、でも、俺、ほとんど魔力切れだな」
「わたしの、ななこのまりょくなら?」
そっか。ナナコはほとんど魔力使ってないか。ブレス避けて、鱗剥がしを手伝ったくらいで。
実のところ、ナナコの潜在魔力量は高い。
それこそ、アリスには及ばないかもしれないが、俺やリゼに匹敵するくらいだと思う。
「やってみるか?」
「うん。やってみたい」
「よし、卵に手を当てて。魔力を流し込んでみて」
ナナコが言われたとおり、卵に魔力を流し始める。
「あ、もうだめかも」
ナナコの魔力を吸い尽くしたようだ。
「ダメみたいだな。明日、魔力が回復したら俺もやってみよ、って!」
その時、卵が光り出す。孵化するのか?
「パパっ!たまごが…。」
「うん。魔力はもう止めても良いと思うよ。」
卵が割れ、翼を持った小さな竜が生まれた。
飛龍?コダちゃんは地竜だよな?
お父さんが飛龍なのかな。
他の幼竜に翼はなかったような…。
だから、コダちゃんが孵せなかったのかな。よくわからんが、コダちゃんとこの幼竜とで、属性が違いすぎたと言うことにしよう…。
生まれたばかりの飛龍は、ナナコにまとわりつきだす。
鳥は初めて見たものを親と思うという。竜もか?
それとも、魔力を注いで孵したものを親と思うのかな。
わからないことは多いけど、ナナコが歩くと後ろをヨチヨチとついてくる。
「かわいいっ。パパ。このコ、つれていっていい?」
ナナコがキラキラした目で訴えてくる。
うわっ。かわいいのはナナコだよ。ナナコの後ろについてくる幼竜。ほほえましい感じ。どうしよう、ダメなんて言えない。
何かを育てると言うことも、ナナコの成長を助けるかもしれない。
「ナナコ。面倒見れるか?」
なんか、犬を飼う時の約束みたいだな。
ナナコは頷く。
この世界には、従魔とか魔物使いなんてのもいるので、きっと問題は無いだろう。
飛龍なら、竜騎士なんて職があるくらいだし。
撫でてやると気持ち良さそうにする。
「名前、どうする?」
ナナコに聞いてみる。
「わたしが、つけていいの?」
「ああ、どうやら、ナナコが、このコのママになっちゃったみたいだしな。」
「ママ、か、。」
戸惑いつつも、満更でもないようだ。
「パパのことばで、ななばんってなに?」
「俺の言葉?あ、エイトが8って言う?」
「うん。それで、ななこといっしょにしたい」
「うーんとな。確かセブンだったけな。」
「じゃあ、セブにしようかな。」
「セブちゃん。か、いいんじゃないか。」
雄か雌かわからないけどね。
「きまり。セブ。なまえは、セブだよ。」
ナナコが幼竜を抱き上げて、セブと名付けた。
「キュウっ!」
ナナコにほほ寄せるセブ。良かったな、気に入ったようだよ。
………。
「ちょっと見ないうちに、またキレイになった。」
「うん。リッ君も逞しさが増してる。」
「あーちゃんの角、俺は好きだよ。」
「ありがと、ちょっと髭生えてきたね。カッコいい!」
…えっと、まだ続くのかなぁ。
「う、ううん!」
咳払いしてみる。
「髪少し伸びた?可愛いよ。似合ってる。」
「リッ君は少し切った?カッコいい。」
俺を無視して、続くんだ。言ってやらんと。
「おい。それいつまでやるんだ?」
いちゃつく二人に、話しかける。いい加減にしないと子どもの教育に悪くなると困る。
「なんだエイトか?まだ、あーちゃんの良いところ、まだ49個しか言えてないんだ。邪魔だよ!」
おい、数年ぶりにあった親友に対して、なんだエイトか?ってどう言うことだよ。
「そうじゃ。100コまであるんじゃ。邪魔じゃ!」
おい、アリス。なんか俺に対する言葉遣い…。もとに戻ってる…。
とはいえ、ぐぅの音もでねえな。
二人が熱すぎて、触れると火傷しちゃうぜよ!
仕方ないので、ナナコとセブと三人で向かい合って、
「ナナコは、かわいい。」
「え、」
「キュ?」
「なんか、悔しいから俺のこと褒めて。」
「…へんなパパ。えっと、パパカッコいい。」
「クウ。」
「ナナコは、優しいよな」
「パパはねぇ、つおい!」
「キィイ」
かわいいとか、賢いとか、色々言ったけど、いくら褒めても、誉め尽くせないな。
パパカッコいい。とか、もっと言って!
誉め言葉ってあまり無いものだけど、結構続いたな。
「パパはねぇ。うーんと、うー…」
限界か…。でも、
「もうひと声!」
「グゥウ!」
「何やってんだ。お前ら…。」
「お主。ナナコに何言わせようとしてるんじゃ?」
リチャードと彼に寄り添うアリス。
何か冷たい目線で、俺達を見てる。
…いや、お前らが、イチャイチャして誉めあってて全然終わらんから…。
というか、お前らが始めた遊びなんじゃねぇか!
アリス編も佳境に入ってきましたが、アリスの出番が減ってしまった。。。
これからも、よろしくお願い致します。




