聖騎士リチャード。
「リッ君じゃ。リッ君がおる!」
アリスが、涙ぐんでいる。
ずっと会いたかったんだよな。
国王と魔王が、恋人同士なんてな。しかも激アツ!
でもこれは、敵同士の恋物語を描いた劇が流行っててて…、いや、多分コイツらが、国家権力使って流行らせて、劇を見た者全てを涙させた。そして、人族の国民も魔族たちも、劇を見た皆がが応援する恋になってる。
コダちゃんが迫ってくる。
恋物語を説明している暇じゃない。
俺は、ナナコを守らないと。
「竜退治なんて、面白いこと俺抜きでやりやがって!!」
崖の上にいたリチャードがこっちに飛び降りて、俺達とコダちゃんの間に割り込む。
「よし、任せろ!」
リチャードは、防御フィールドを展開して、コダちゃんの突進を止める。
数メートル押されたが、リチャードの発散する魔力が上がる
…止まった。
リチャードの後ろに寄り添うアリス。
恋する乙女の顔になってる。
しっかりリチャードにバフかけてるけどね。
「ふっ、愛の力だな。」
リチャードは言う。いや、只の防御力強化のバフだよ。
「…うん。」
赤面して頷くアリス。
いつもの偉そうな口調はどこ行った?
只の強化魔法だよね。
コダちゃんの突進を止めたリチャードから魔力が発散する。
「範囲回復」
おぉ。力が戻ってくる。
タンク件ヒーラーの聖騎士
攻撃魔法と付与術を使う魔道士
器用貧乏…。じゃなくてオールラウンダーの勇者
最強の3人が集まった。
ナナコもいる。…ココ大事!
負けるはずがない。
「リチャード!久しぶりだな!」
呼び掛けてみる。
「話は後だ。くそっ、古代地竜だけあって凄いパワーだ。さっさと片付けろ!」
あんた国王って高貴なお方なんだから、「くそっ」とか言わないの!
とはいえ、ここからの短期決戦に異論はない。
「了解。アリス、行くぞ!」
「おぉ。」
リチャードが、敵の突進を止めて、俺とアリスが殲滅する。俺達の勝ちパターンだ!
「ナナコは、ここにいて!」
このリチャードの背後が、この辺で一番安全だろう。
ナナコは頷いて、言葉を発した。
「パパ、コダちゃんのくびすじ…。」
それが弱点だと?確かに、最初の作戦のように、部分破壊していく魔力は、もう俺達には残っていないかもしれない。
よしっ!決めた!
「わかったよ。ナナコ。いくぞ、アリス!」
アリスを見る。恋する乙女の顔から、戦う少女の顔に戻っている。ような気がする。
いや、戦闘モードになってくれないと困る。
アリスは頷き、少し下がり魔法を発動させる。
「魔王式爆裂魔法」
あ、でた。テンション上がったときしか使えないという魔王専用魔法。
今のアリスは、リチャードに守られて、テンションマックスだしな。
物凄い爆発があり、コダちゃんの魔力の防御膜が剥がれ、さらに物理的な防御の鱗が焦げて、無防備な首筋が晒されている。
てか、コレができたら、最初っから決まっていたのでは?
魔石の回復力を越えるダメージだろうし、鱗剥がれてるから、俺とナナコで切り放題だし…。
ま、今そんなこと言ってても仕方がないか。
「今だ!」
コダちゃんに向かって飛び掛かり、勇者の剣を振り上げて、首筋を一刀両断にするべく振り下ろす。
勇者の本気の力だ。ナナコが見ている。
カッコいいところ見せたい。
切り落とすところまでは出来なかったが、致命傷は与えた。
なんか締まらないな。
返す刃で、古代地竜コダちゃんの討伐を完了させた……。
つもりだったが、まだ生きているようだ。
流石は古代地竜。凄い生命力。
心の中に響く声がする。
ー見事だ。我を倒しものよ!
「コダちゃん?」
つい声が出た。
ーなんだ。コダちゃんとは?
「あ、貴方の名前…。」
ー我に名前か。面白いやつじゃな。何千年も生きてきて初めての名前じゃ。ところで、その魔石に免じて出来れば見逃して貰えんか?
確かにこの魔石の価値は計り知れない。でも…。
コダちゃんの向こう側に、小さい生き物が見えた。
幼竜か?
確かに何かを守りながら戦っているように感じた。
俺達が逃げようとした方向、壁の向こうには巣のようなものがある。
向こう側にには行かせられないということ?
それで壁を、その後、突進して守ろうとしたのか?
「パパ。りゅうのこどもが…」
ナナコも幼竜に気付いたようだ。
ここには、人が通る道を作りたいと考えている。コダちゃんが、去ってくれれば考えても良いかな。
と心の中で思う。
「パパ。りゅうのおかあさん、ころしちゃう?」
ナナコの心配そうな顔。勝ったのは、ナナコのおかげなんだけどな…。
決まったな。ナナコがダメってんなら、ダメ。
コダちゃんは、生かす。
「いいよ。俺にも娘がいる。」
ーありがたい。では、キズが癒え次第去ることにする。
待つ必要は無いかな。
「リチャード。やりとり聞いてた?」
「ああ、人使いの粗い奴だ。超回復魔法!」
そうそう、これに何度助けられたか。
超回復魔法。いかに竜といえど、致命傷を癒すくらいはできるはず。
完全には回復していないものの、コダちゃんは、立ち上がった。
ー孵すことの出来なかった卵が一つある。まだ死んでおらんが、我には無理じゃった。見捨てるしか無いと思っておった。お主ほどの魔力なら、あるいは孵せるかもしれん。孵せなくとも地竜の卵じゃ、それなりの価値はあるじゃろ!
コダちゃんと幼竜たちが去っていく。
一つの卵を残して…。
とにかく、古代地竜の撃退に成功!
更新が空いてしまいました。
決してエタ郎とか考えていた訳では…。
まだまだ、続きますよ!
よろしくね。。。




