表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

3/79

娘になりました。


「大丈夫?」

呆然としている少女に声をかける。返事はない。こちらを向いて少し頷く仕草をしただけ…。



仕方が無い。

「ちょっと動かすよ。ごめんな」

俺に乗ったままの少女を抱えて、机に座らせた。



子ども用の椅子なんて無いけど、上手く座ってくれた。

少女を見る。黒髪が肩まで伸びて、目は綺麗な二重でパッチっとしているけど、顔のパーツのそれぞれは、少し小さめか。


俺を襲ってきた刺客では、あるのだけど…。

これ、小さくてカワイすぎるよな。このまま罪を問うのは可哀想すぎる…。

大人は子どもを守らんとイカンだろ…。


「これ、飲む?少し落ち着くよ。」

少し温めたミルクを出す。戸惑っているようだけど…。

「悪い物は入ってないよ。ほらっ」

俺もそのミルクを飲む。うん。やっぱ落ち着くにはホットミルクだ。ホッとする。


「それと術は、一時的にだけど解除されているから大丈夫だよ。」

それを聞いた少女の表情に、少し変化があったような気がした。


「落ち着いた?」


机の向かいに座っているのは、5.6才くらいの黒髪の少女。

子供用の椅子なんてないから、顔だけが机からでている。

それでも、なんとか俺が出した飲み物を飲んで、少し顔に色味が戻ってきた。


しばらくして。

「ごめんなさい」

そう言って涙を流す少女に、ハンカチを渡すだけで、俺は何も言ってあげられなかった。



数分か、もしかしたら数十分たっていたかもしれない。

泣きやんだ少女に質問すると、少しずつ答えてくれた。


「どこから来たの?」

「わからない」


「名前は?」

「ない…。すうじでよばれてた。ななばんって」

…。ひどいな。でも、こんな子どもが、他に少なくとも6人いるのか?

国王リチャードに言ってなんとかしないとな…。

もっとも、国内の問題じゃないかもしれないが。


「親はいるの?」

「わからない。いない、とおもう」

あ、聞いちゃ、ダメなやつか…。少女を見ると表情に変化はなく、少しホッとする。


「これから、どうしようか…」

少女をみるが、返答は無い。そりゃ、わからんよな。


「…かえりたく、ない」

少し、間が開いて少女がつぶやいた。

「うん。大丈夫だよ。」

何が大丈夫なのかわからないけど…。


「わたしっ、ゆうしゃを、ころせなかったから…」

少女が肩をふるわせながら続ける。

「かえったら、たぶん、ころされる…イヤっ」


少女は、再び泣き出した。

無意識だったけど、少女の横に立ち、肩を抱いた。

「大丈夫だよ。俺の名前、エイトって言うんだ。」


あ、俺の名前は、エイトって言います。勇者エイト。

綺麗な黒髪を優しく撫でてみる。

5.6才くらいか…。人魔対戦が終わって数年、もうこんな娘が居てもおかしくない年なんだけど…。

ま、その前に嫁さんが必要だな!


「…え・い・と?」

「そうだよ。外国の言葉で八番って意味だよ」

「はちばん?ななのつぎ?」


「うん、そうだよ。だからね。俺は君の味方だよ」

意味分からん論法だけど、自分が言ってて意味分からんけど…。


あ、数字で呼ばれるの、きっとイヤな思い出だよな。

なんか、間違えた気がする…。


でも、ぎゅっと少女から感じる抱き返してくる手に力が入った気がした。

少し安心感を与えたらしい…。


「キレイな髪だね。俺と一緒の黒だね」

黒髪は、この世界では珍しい。遙か東方の国では、一般的らしいけど。

「いっしょ?」


少女からそっと体を離し、少女の肩に優しく手をあてながら言う。

「ずっとここに居ても良いし。出て行っても良い。君の自由だ。」

こんな可愛いコが、家に居てくれていたら、この家にも花が咲くように明るくなる気がする。

今は、このコも暗く落ち込んだ感じだけど…。


あ、でもこのコいると、女の子連れ込めないか…。


目の前の少女をみていると、そんなことは些細なことに思う。

でも、決めるのは彼女だ。


「ここに、…いたい」

少女から、出たのはここに居たいと言う言葉。

「うん、わかっ」

了承を意を言おうとした瞬間。扉をたたく音がした。



ドンっ、ドンっ


「エイトさん。居るか?大丈夫か」

村長のモルドの声だ。人と魔族のハーフである彼は、魔力の感知に優れている。


自爆魔法ディストラクトを解いたやりとりで、かなり魔力を使ったからな。感知したのだろう。


ライトの魔法使ってるし、居留守も使えんか。


「モルドさん。大丈夫。問題ないですよ。」

扉を開けると、村長のモルドが立っていた。


「なら、良いんだけど。何かあった?」

「いや、何にも無いよ。」


モルドさんが、中を覗こうとする。

いや、心配してくれるのはありがたいけど、少女の存在を見られるわけには…。


モルドさんの視線を遮ろうとするが、

「あ、エイトさんをすごい美女が、訪ねてきたんだった。」


えっ、すごい美女。俺を?

一瞬、心を奪われた隙に。


「エイトさん。その女の子は?」


あちゃー、えっと、うっとーぉ。


「む、娘、そう俺の娘です。」


…娘にしちゃったよ。大丈夫かな?

不安そうにこちらを伺っている少女をみると、このコがよければそれも良いかな。

なんて、考えていた。



ここまで読んでくださり、ありがとうございます。


もし良かったら、ブックマークや評価頂けると、嬉しいです。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ