角ウサギ戦
何が天才かって?
あれだよ。スピードもさることながら、急所を確実に突いているんだよ。
普通なら、初めての攻撃なら体のどこにも当たらないし、当たってもかすり傷を負わせるくらいだろう。
何度も攻撃させて、攻撃を受けて、泥仕合をさせて、経験を詰ませようと考えていたんだけどね。
そういえば、初めてナナコとあった日。
あのナイフは、確実に俺の心臓を突こうとしていた…。
やっぱ、すげぇ。
才能なんだろうか、スキルだろうか。
クリティカル必中。ってやつかな。
良い武器があれば、センドル平原のドラゴンの急所を突いてくれたりして…。
いや、ドラゴン戦は危ないから見学だよ。
それに、良い武器持たせると、俺の命もやばくなるよね。
あのスピードで、急所を確実に、さらに切れ味鋭い武器で刺しに来たら…。
ゾクゾクっ。…。じゃねえ。ブルブル。
「パパ。やったよー」
返り血で血まみれの幼女が手を振る。…そんな姿もかわいい。
「血抜きをするのじゃ。今晩のご飯じゃな」
アリスは血抜き、処理を行う。角は売れるしね。
でも、俺は、ナナコに浄化魔法を…。
せっかく買ってあげた服だからね。
「エイト。おぬし…。まあ良い。良くやったぞ、ナナコ。」
「えへへっ」
ナナコの笑顔。
「綺麗にしてやるから、ナナコはアリスの解体をよく見ておくんだ」
「うん。つぎは、ななこもやるね」
「うむ。良いコじゃ」
よし。綺麗になった。血のにおいもしない。
解体も終わったようだ。ナナコの目がキラキラしてる。
知らないこと、知ったから?
あー、俺がやれば良かった。でも、綺麗になったナナコの姿は満足だ。
「あ、髪が解けてるよ。こっちおいで」
「あ、うん」
髪をときなおして、結い直してあげる。
「俺でも最初は上手く狩れなかったんだよ。ナナコは凄いな 」
髪を触りながらの会話。俺が好きな時間の一つ。
「えー。パパはすごいよ。でも、ちょっとうれしいな」
「うん。ナナコは俺の娘だからな。凄いんだよ」
意味は分からんが、そういうことだ。
「うん。ななこ、パパのむすめ。」
「お、できた。」
りぜとお揃いの後ろに束ねた髪型。鏡を渡す。
「リゼママ…」
あ、さみしい思いをさせた?
「あ、リゼな。」
まだ3日しか離れてない…。さみしいもんだな。
「ううん。うれしいの。パパありがと」
ほっぺにチュ。
うわ、なにコレ。…。頭真っ白だぜ。
「リゼママがやってた。ダメだった?」
「いや、良い。うれしいよナナコ。」
この際、せっせと野営の準備をしている魔王様のことは…。
無視できんよ。
「アリス。ごめん」
「いや、おぬしらが、楽しそうで良かった。」
「アリスおねえちゃん。ごめんなさい。ななこもてつだう。」
「ナナコは悪くないぞよ。で、枯れ枝でも拾ってこようか」
「うん。えだ、ひろう」
手を繋いで、枝を拾いに行く二人。
やっぱ、仲いいよな。良いことだけどね。
なんか、さみしいぞ。
晩ご飯。
角ウサギの味は…。
ウサギの味なんだが、普通のウサギの味なんだが。
「美味いな。めっちゃ美味い」
ナナコが初めて狩ったウサギである。美味くないはずがないだろう。
「うん、おいしい。」
小さい子には、少し堅いかもしれない。でも、しっかり噛んで食べてる。
「美味いことは美味いんじゃが、ちょっと堅いな」
アリス。お子様なのは、そこだけじゃないんだな。
胸元をみて考えてしまった。
「エイト。おぬし、たいがいにせいよ!」
ん、なんか本気で怒っている?
俺を追っかけるアリス。逃げるのにナナコの周りを二人で回る。
黙々とウサギを頬張る幼女。その周りを逃げ回るおっさん、追い掛ける少女。
なぜか、エイトしばき棒を持っているアリス。
「リゼに貰ったんじゃ。ええのう、コレ」
パチパチと叩かれる俺。
リゼ。俺の愛するべき人。
こちらは楽しい旅になっていますよ。
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〈リゼ・ミタール〉
エイトさんとナナコちゃんが旅立って3日。
学校を立ち上げるプロジェクトに参加させてもらって、新都市に通うことになった。充実した日々の予感。
エイトさんの畑とか家畜は、お父さんが面倒を見てる。
生活のことは、何もできないお父さんだけど、仕事はできる人。畑の手入れも上手くできているみたい。
そんなことは、どうでも良くて。
ナナコちゃんロスが、半端なく酷いです。
凄く楽しかった。
エイトさんがいて、ナナコちゃんがいて。
お弁当食べて、お昼寝して、ナナコちゃんとエイトさんのお世話をして。
本当に楽しかった。
なんか、寂しいな。
でも、ナナコちゃんのおかげで、先生になりたいって夢、思い出せた。
私が担当する教科とか、教科書作り、科目を決めたり。
やることがいっぱいあって、凄くやり甲斐ある。
これで、生徒さん達が来て、本当の先生になれたら…。
ナナコちゃん。ううん。エイトさんだよね。
エイトさんありがとう。
やっぱり、エイトさんは、私の運命の人だわ。
早く帰ってきてね。
帰ってきたら、私の一番大切なものあげるからね…。
リゼの大切なものってなんだろう?
自分でもわからないです。
知りたい人は、物語が完結するまでには、明らかになるかもです。
ブックマーク、評価頂けると、完結の力になります。
評価の方は、イマイチだったら星の数少なくても構いませんので。




