王都への道
ランツ伯爵領都 ランシールから王都まで500kmくらい。
ゆっくり歩くと20日くらいかかりそう。
王都への道筋は、まず、王国西部最大の都市イストへ向かう。
イストから王都までの道のりは、北回り、中央、南回りの三通り。
中央には、山脈が連なっており、山越えとなる。
北回りだと、冬には雪が積もり通行が困難になる。
南回りが一般的だが、中央山脈の麓の平原に竜が住み着いており、現在は迂回ルートとしてさらに南を回っている。
3人で朝食を食べながら話す。
「まず西の都イストを目指すとして、後はどこから行こうか」
二人に相談する。
「どこ?」
「うん。山を越えるか、遠回りするか。どっちにしようかって」
「ん?儂がついて行くと言ったじゃろ」
どういう意味だ。
「アリスが付いてくるからって何?」
「中央山脈の南、センドル平原を行くぞよ」
「へ、でもあそこは地竜がいるんじゃ」
「トカゲ退治じゃ。リッ君が道を作るのに邪魔なんじゃ。」
あ、それか。リッ君のためなんだ。
恋する乙女だな。アリスのためにもそれでいくか。
ナナコのためにも危険なことは避けたかったが…。
ま、アリスがいるんだし問題ないか。
「わかった。トカゲ退治か。じゃあさ、練習でちょっと山に入ったりするか?」
「そうじゃな、儂らも戦いのブランクあるしな」
「ナナコもそれで良いか?」
「わたし?、パパがいいならいいとおもう」
うん。いいコだ。
ランツ伯爵が見送りに城の外まで来てくれた。
「アリス様、エイト様もお気をつけて。」
「ああ、伯爵もな」
「ナナコちゃんも、元気でね」
ランツ伯爵が屈んでナナコの頭を撫でる。
「うん。はくしゃくさまもね」
ん、こいつらそんなに話したことあったっけ?いつの間に仲良くなってるの?
「ランツ伯爵様。奥様がお呼びですよ」
騎士のトーマスさんが、ランツさんを呼びに来た。
城の中には、凄く幼い感じの女性がいる。
「ランスさん。あの方は?」
「あ、うちの家内です。挨拶させましょうか?」
奥様がやってきた。どう見ても10代…。
シグルド君がグレル訳だ。シグルド君を責めるのも可哀想になってきた。
「いや、シグルドの母ではないですよ。あれは、戦争で…」
あ、そうだった。ってか、シグルド君より年下でしょ…。
でも、この奥様。
…可愛い。
じゃねぇ。本当に気をつけなきゃダメだったのは、シグルド君なんかじゃ無く、この変態親父だったのか?
「伯爵どの。 」
「え、エイト様。何を畏まって」
「ナナコは俺の娘だからな!」
「はい。存じておりますよ」
涼しい顔をして伯爵はいう。
「わかってるよね。」
少し汗ばむ伯爵。
「もー、パパ。はくしゃくさまがこまってるよ」
あ、ナナコ。コレはキチンとしておかないと駄目なんだよ。
あ、でも、そんなパパ嫌いって言われたら…。泣いちゃう。
この辺で、止めておこう。
「とにかく、ありがとう伯爵。」
円満なお別れをして、とうとう本格的な旅が始まる。
「エイト。さっきのはなんじゃ?」
アリスにたしなめられる。
「いや、アイツちゃんと言っとかないと」
ナナコに手を出しかねん。
「ランツ伯爵にはこれからも世話になるんじゃよ」
「まぁ、そんなんだが…。」
アリスをみる。この平坦さは、アイツの好みかもしれん。
「なんか、また、失礼なことを考えてる様な気がするのぅ」
「いや、ま、アリスも気をつけろよ」
アイツ、リチャードと同じ趣味かもしれんぞ。
「いや、あやつは、生粋のロリコンじゃろ。儂は大丈夫じゃよ」
ふーん、そんなものか。
「なんのはなしー?」
いや、ナナコは知らなくて良い。
イストまでは、歩いて2日と言うところ。
西部地域最大の都市。魔族との戦いの支援都市として、発展してきた。
戦争が終わってからも、西部の中心都市として、活気あふれる都市である。
イスト手前の東側は、俺の活動範囲で魔物を間引いているから、安全な旅ができる。
イストに着いて、それからが本格的な旅になる。
そんなことを考えていたら、魔物が現れた。
角ウサギ。
アリスと目を合わせて、魔力を抑える。
俺たちの巨大な魔力を感じると、魔物はにげてしまう。
ナナコの魔力も大きいが、逃げ出すほどでは無いだろう。
「ナナコ。あれが魔物だ」
「うん。ウサギさん。」
「あの角で、突いてくるから気をつけて。やっつけられるか?」
ナイフを持たせる。
俺でも、初めて魔物と戦った時は、手こずったものだ。ナナコも対人に特化した訓練を受けてきた。
難しいかもしれない。できるだけフォローせねば。
とはいえ、まずは様子見だな。
「エイト。手伝ってはならんぞ」
アリスの方が、わかってる。アリスは角ウサギが逃げられないように、結界を張り巡らせている。
手ぇだしてるのどっちだよ!
「ナナコに倒させるんじゃ」
ま、アリスも俺の旅の理由を分かってくれているんだな。
ナナコの経験、成長のための旅なんだ。
「えぃ」
声と姿は、かわいい。とても、かわいい。
でも、全然可愛く無いスピードで、角ウサギに迫る。
うわ、あれで俺に刺しに来たら…。やばいか?
角ウサギは逃げる暇も無く。ズブっっとナナコに刺されて絶命した。
…天才かよ。やっぱ。
「天才じゃな。」
アリスがつぶやく。
やっぱそう思うよね。
評価とブクマ、入っているの確認しました。ありがとうございます。
自分としても、書いてて、楽しい話ではあります。
これからもエイトとナナコをよろしくです。




