新首都計画
「それでは、新都ミッドランドへ、その周辺の我々の領土を割譲せよ。ということですか」
ランツ伯爵にアリスが提案した内容を整理すると、、
ミタール村の南10kmに建設中の新都市は、ミッドランドという国の首都となる。
ついては周辺の30km地域を、新国の領土とするので、人族側の土地の領主であるランツ伯爵の了承をえたい。
ミタール村と伯爵領都ランシールの真ん中に流れる川を境界に考えている。
この新国の建国予定地域は、戦火により荒れ地になっており、なんの価値もない。
トマール村と、俺とナナコが通ってきた道が、唯一、商業的価値がある。
「うむ。領土の割譲については、伯爵も思うところがあると思うが…」
「いえ、あの地域につきましては、私も開発に頭を悩ませていたところです。ですが、領土を割譲するからには、当方にも何か旨味が欲しいところです。領民に説明するためにも。」
「新都市から王都を結ぶ道を建設する予定だが、ランシールをその道に通すというのはどうじゃ?」
ランシールを避けて道ができると、誰もランシールには寄らなくなる。防衛上の利点はあるが、経済的にこの町はしんでしまう。
「道の建設費、建設人員そのほかは?」
「当然、リッ君…。国王によると王国持ちじゃな。あと、リッく、リチャードからは、其方を侯爵にすると言っていたぞよ。」
「まぁ、爵位はどうでもよいのですが、国王様派になると、エイト様と約束したのですから、答えは決まっていますよ。」
アリスとランツ伯爵が握手をする。
対等な交渉、いやアリス上位の交渉なのだが、
無い胸を張って威張っている少女と、威厳があるものの少し腰の低いオジさんの握手の図。
なんか不思議な絵だな。
「退屈だったか?」
大人しく座っているナナコに声をかける。
「ううん。アリスおねえちゃん。かっこいい。」
「そうじゃろ。儂は格好良いのじゃ」
笑顔を見せ合う二人。本当の姉妹のよう。この笑顔、取り戻せて本当に良かった。
領都ランシールでも、最高級の宿に泊まることになった。
ランツ伯爵のおごりで。
大きな風呂もある。当然、男女別だけど。
ゆっくりしたいから是非入りたいが、ナナコはどうしよう?
幼女までは、男湯でも入れて良いんだっけな。でも、他の男どもにナナコの裸を見せるのは、どこか抵抗があるな。
「ナナコ!儂と入ろう。」
アリスがナナコを誘う。
「うん。でも、おとうさんは?」
「いや、男女別だし、仕方ないよ」
仕方ない。うん仕方ないよ。
アリスがナナコを取ったぁ。って泣きたいところだな。
でも、久々に一人でゆっくりするのも悪くなかった。
湯船につかると、疲れが抜けていくようだ。
ナナコなら、アリスが一緒なら安心だし…。
うーん。アリスかぁ。
これがリゼとか聖女ミュールだったら、
…どうにかして、覗きたいところだが…。
でも、声は聞こえてくるな。
「アリスおねえちゃん。ナナコといっしょだね。 」
子どもは残酷だな。なにが一緒かしらんが…。
ナナコは、気に入った人と一緒が好きみたいだ。
リゼと一緒の服、髪型、ネックレス。
アリスと一緒の…。
「一緒ってことはないぞよ。ほれ、少し柔らかいじゃろ。」
アイツ、何やってんだ。
「うーん。リゼママとはぜんぜんちがうから、いっしょがいいのにー」
「そっか、りぜとは違うか…。まぁ良い。ナナコと一緒じゃな。はははっ。」
アリスは泣いているかもしれない。ここからは良く分からないが…。
その後は差し障りの無い会話をしていたみたいだが、ふとアリスがナナコに聞いた。
「ナナコは何が好きなんじゃ?」
お、どうした?何かあげようとしてくれているのか?
「うーんとね。リゼママぁ」
…。そうだよな。リゼ大好きだよな。本当にママになるかもしれんし。良かった。
「そっか。好きな人を聞いたつもりでは無いんじゃが…。他には?」
「アリスおねえちゃん!」
…。なにげに仲いいよな。おまえらって。
「おぉ。儂もナナコが好きじゃな。」
イェーイって、ハイタッチしている絵が浮かぶ。
「モルドさんもすきー。」
「リゼの父親じゃな。あやつ、優しいもんな」
「きょうあった、あの、オジさんはイヤ。はくしゃくさん?エライひとはすきだけどー。」
「あやつか、何かしたのか?エライ嫌われようだな」
オジさん…。シグルド君のことか。せめてお兄さんって言ってあげようね。
ランツめぇ。ほとんど絡んでないのに。うー。
「あと、くびかざり。リゼママとおそろい」
「ほうほう。儂も何か買ってやりたいもんじゃな」
……………。
好きなもの。リゼ、アリス、モルドさん、ペンダント。ついでにランツ伯爵。
…お、俺は?
ななこー。俺は?
「あ、そうじゃ、エイトのことは好きじゃないんか?」
アリスがとんでもないことを聞いた。聞き方ぁー。
好きじゃないって、言われたら。このまま、湯船に沈んで窒息してしまう…。
「んー。パパ?すきじゃないよー」
良く聞こえなかった。うん、良く聞こえなかったよ。湯船に沈んでいく俺…。
涙は、お湯でごまかして…。
「うわー。あやつも、かわいそうにな。ナナコのこと大好きなのにな!」
「そうだよ。パパのことは、だいすきだからー! 」
ぶはっ。もう一回言ってくれ。もう一回。
「パパはねぇ。いちばん、だいすきなんだよー」
結局、力が抜けて湯船に沈んでいく俺。
「うわ、アンタ。どうしたんだ。大丈夫か?」
「のぼせたんか?湯あたりだべか?」
数人の男どもに助け出された俺は、なぜかとても幸せそうな顔をしていたらしい。
予告通り、お風呂シーン。
見た目は、幼稚園と小学生なのでお色気はなしで。




