魔王アリス
2章スタートです。
最初の目的地は、ランツ伯爵領だ。
ご馳走してくれるらしいし、あのシグリド君が気になる。
リゼに手を出さないよう、脅し…じゃなくて、良く言っておかないとだし。
俺達のトマール村から、東側が人族であるリチャードが納める国。
歩いて1日で、伯爵のお城につく予定だったのだが、冒頭?の薬草集めと、お花の髪飾りとかで、時間を食ってしまった。
まぁ、良い機会なので、野宿してみようと思う。
初日だし、何かあったら引き返せる。
晩御飯だが、
今日に関しては、リゼが作ってくれたお弁当がある。
お弁当渡してくれた時、
「伯爵領まで1日だよ?」
って言ったんだけど、
「いいから、持っていって。いらなくなれば、それで良いし。」
流石、俺の嫁。こうなることわかってたか…。
まだ嫁ではないが。
「リゼママのごはん。おいしい!」
ナナコも満足してる。
「そうだな。しばらくこの味ともお別れだし、味わって食うぞ。」
「うん。ざんねんだけど。」
ナナコが泣きそうになってる。
やっぱ、無理やりにでも、連れてきたら良かったかな。
…いや、リゼには、リゼのやるべき事が。
俺は、リゼの憧れのお兄さんでもあるのだから、俺のワガママで、リゼを連れてくるわけにはいかないよね。
「料理。上手くなるよ!」
「うん。ナナコもがんばる。」
笑顔を見せてくれる。
二人だけど、楽しい旅にはなりそうだ。
とか、思ってたんだけどね。
「結界を作ると、込めた魔力以下の生き物は、入ってこれなくなるんだ。」
ナナコに、結界の作り方を教える。
トマール村にある、俺に家の結界は、悪意のあるモノが入れない結界で、少し複雑。
今回のは、野宿のための簡易結界。
夜ぐっすり休むためのものだよね。
とはいえ、この辺はまだ俺の活動範囲なので、魔物も間引いてるし、危ないことはないだろう。
「ナナコ。やってみるか?」
何事も経験だよ。
「うん。やってみたい。」
実際、ナナコの魔力以上の存在は、この辺じゃあ俺とリゼくらいかな。
ナナコが、結界を作動させる。
「上手にできたな。ほらっ」
ちょうど結界の外から、虫が入ってこれないので、指差して見せてやり、頭をナデナデ。
「うん。」
ナナコの満足そうな笑顔。
そっか、このコは、なにかできたときに笑顔になるのだな。
俺は、単純にナナコの笑顔が見たいから、ナナコに色んな事を教えていこう。
決意を新たにした。
お弁当も食べて、お腹も満足。ナナコもおねむな感じだ。ナナコを寝かしつけようとしたときだった。
「ナナコ。わかるか?」
物凄い魔力が近づいてくる。
「うん。わかる。」
魔力感知得意じゃない俺たちでも、分かる強大な魔力。
ナナコが、緊張なのか固くなっているわかる。
でも、悪意は感じない。
「大丈夫だ。」
ナナコの頭に手をおく。
「うん。パパにけっかい、してもらったらよかった?」
「いや、そういう問題じゃないな。これは、俺でも無理だよ。」
その強大な魔力は、いともアッサリとナナコの結界をくぐり抜けてきた。
ライトの魔法で周囲は明るい。すぐに誰が入ってきたか解った。
「おぉ、なんと可愛い結界だと思ったら、可愛い娘がおるの!」
現れたのは、二つの角のある女性の魔族。
桃色の少し癖のある髪の毛。
人で言うと十才くらいの姿形のかわいらしい感じ。
でも、特に、残念なのは…。
「エイト。久しぶりじゃな。…相変わらず失礼なこと考えておるじゃろ?」
お、胸元に目がいっているのがバレたか。
「いやいや、久しぶり。アリス。」
目の前に現れたのは、ロリBB……。
じゃなくて、魔王アリス。こう見えても、年齢はけっこういっているらしいけど。
年はヒミツなんだって。
「おぉ、そっちの可愛い娘は?エイトも遂にそんな趣味に…。」
「いやいや、リチャードじゃあるまいし、娘だよ。娘のナナコ。」
「あの、ななこです。こんばんは。」
「こんばんは。アリスのおねえちゃんだよ!」
ん、口調がおかしい?おねえちゃん?
「アリスは、おねえちゃんかどうかは知らんが、俺の仲間だ。大丈夫だよ!」
「うん。アリスおねえちゃん。やさしいかんじする。」
「おねえちゃん呼び。良いなぁ。可愛い妹ができたようじゃ。」
うん。大きさは確かに姉妹くらいの感じだけど…。
「あとな、リッ君の名誉のために言っておくとだな、アイツはロリコンではないぞ」
「いや、でも、アリスとって」
非常に残念な胸元を見る。ナナコと同じだな。
「だからぁ、彼奴は、儂が好きなのであってだなぁ。」
聖騎士リチャードと魔道士アリスは、恋人同士だった。お互いの思いは、国王と魔王となった今でも変わらない。
聖女ミュールともはや何でも無い俺とは大違いだな。うらやましい限りである。
あ、でも、そのおかげで、可愛い婚約者ができたんだし。まぁ、それはそれで、良かった。
リゼもこの魔王と違ってちゃんとあるしね。
ちなみに聖女ミュールのは凄かったんだが、それはまた別の話…。
不定期更新ですが、続けますので、楽しんで頂けるとうれしいな。
ブクマ、評価よろしくお願いします。




