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出発。


準備ができた。


若くて、可愛くて、しっかりものの婚約者もできた。


…近い将来、遂に俺も結婚するらしい。


ナナコの荷物は、着替えが多目。

浄化魔法でキレイにするから、俺の着替えは、一組のみで大丈夫。俺の荷物の半分はナナコの物。


半分は水筒とか、食べ物とか、テントか…。

水は、基本魔法で出すし、食料も現地調達が基本だが、非常時というものもある。


ストレージとか、空間魔法、ってのがあれば良いのだけど。

天才魔法使いの俺の奥さんになる予定の人に開発してもらおうかな。


「準備は?大丈夫?」

その天才魔法使いのリゼが心配そうな顔で俺達を見る。


「あぁ。」

「うん。だいじょうぶ。」

リゼが、ナナコを抱き締める。


「いつでも、帰ってきて良いんだからね。」

「はい。」


二人の頬には、涙が…。


「あ、これ。」

ナナコがリゼに何か渡す。

一つは手鏡。

「女の子なんだから、身だしなみちゃんとね!」

「うん。」

もう一つは、町で買ったお揃いのネックレス。

元々は装飾なんてなかったのに、それには大きめの魔石が付いていた。


ナナコが付けているネックレスを外して、魔石のついたネックレスに付け替える。

「ナナコちゃん。コレ、交換しよう。この石は、ナナコちゃんを守ってくれるから。」

「なんで?」

「ナナコちゃんが帰ってきたら、また交換しようね。それまで、それを私だと思って大切にしてね」

「うん。じゃあ、それは、ななこだと、おもってくれる?」

「うん。当たり前じゃない。私たちは…。」


「「いつも、いっしょ」」


なんかの約束なのか、指切りしている。涙はもう要らないよね。


「エイトさん、ちょっと。」

リゼに呼ばれた。

「何?」

「あの、魔石なんだけど。身代わりの付与がついているから」

「え?高かったんじゃ」

付与付きの魔石。そんなの家が建つぞ。

「うん。シグルド君が迷惑をかけたって、ランツ伯爵様が魔石をくれて、あと付与術士の先生が学校を見に来ていて、お願いして付与してもらった。私が先生やるなら、タダで良いってアピスト先生が言ってくれて。それに必要だと思ったから。」


やっぱりリゼ。君を婚約者にして良かったよ。愛してるよ!

と言いたいけど、照れるな。


「ありがとう。助かる。」

「うん。あの呪い…。あれだけじゃない気がするから…。」

「そうだな。俺もそう思うんだ。だから先に聖女に見せようと…」

あ、聖女の話は…。リゼとはあまりしない方が良いかもしれん。

なんとなくだけどね。


でも、ま、別れ際に娘の話題だけなんて、もう既に夫婦のようで…。


「無事かえったらさ、約束が有効だったら、ちゃんと結婚式挙げような!」

リゼが、涙を見せながらも笑顔になる。


「うん。楽しみにしてる。」

チュッと、ほっぺにキスしてくれた。


俺たちには、うん、そうだな、これで良い。


村のみんなも見送ってくれた。

ナナコ、君はね。みんなの笑顔も作ってたんだよ。



王都までは、歩いて2週間くらいかな。

500kmくらいだと思う。


途中、寄り道もするから、もう少しかかるかもしれない。


二人で並んで歩いていく。急げば、すぐに着くかもしれないけど、ゆっくりいこうと思う。


急がば回れ。とも言うし。

イリアス教団は逃げない。イリアス聖国で引き籠もっているはず。


それなら、対峙する前に、ナナコを少しでも成長させておいた方が良い気がしたんだ。


手を繋いで歩きながら、

「お花、綺麗だね」

とか、夜野宿しながら

「ほしー。きれい」

とか。


二人で連携して、魔物やっつけて、夕食を確保したり…。


楽しい旅をしたいと思う。

多分、それがナナコに一番必要なものだと思うから。



一章が完了です。

ここまで読んでくださりありがとうございました。


2章目に続きます。よろしくです。


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