勇者エイトって言わせないよ!
対貴族のボンボン編 後半です。
「モルドさん。伯爵って偉いの?」
ふぅふぅ。とりあえず怒りを収めよう。怒りに任せて人を傷つけてはダメ。モルドさんにも迷惑がかかる。
「え、偉いかって?そりゃ、私のような準男爵よりは…」
そうなんだ。じゃあ、ヤッちゃうの不味い?でも、俺にも、リチャードがくれた爵位ってのがある。
なんか、王様と同格って言ってたかな。
「じゃあさ、公爵だか大公爵ってのは?」
「いや、公爵様は、貴族の最上位で、伯爵様とはは比べられないよ…」
じゃあ、きまりだな。向こうが爵位を振り回してきてるんだから。
エイト・フォン・リュオール。
俺の名前。らしい。大公爵様らしいです。
「あのさ、伯爵、伯爵ってうるさいけど。俺、大公爵らしいんだわ。いいの?」
「貴様のような、薄汚いヤツが、貴族なわけないだろが。私を侮辱するのか!」
あー。着替えてくるんだった?いや、そんな問題じゃ無いし、そんなケバい服を着る趣味は無い。
大公爵って言っても、効いてないし爵位を出すなんて、らしくなかったな。
「まぁ、何でもいいや。リゼは今、先生になるか俺のお嫁さんになるかで迷ってんだよ!」
ん、間違えた?いや、違うな。俺がちゃんとさっき気付いた気持ちを言うのが先か…。
「っん…。」
りぜが、赤くなって俯いている。
あ、いや、そうじゃなくて…。いや、まぁ、そうなんだけど。
「オホン。まぁそういうわけだから。お引き取り願おう。伯爵さんには後で言っておくから…。」
戦争終了のパーティーは、伯爵以上の貴族は参加したって言ってたし、知ってるよね。
「何を言っているんだお前は。侮辱罪で処刑にしてやる」
侮辱罪ってなんだよ。そんな罪はとっくに廃止されただろ!
どう言ったら分かってもらえるだろうか。
ま、リゼの角とナナコの悪口言った時点で、コイツは有罪だ。侮辱罪復活だ。ただじゃおかんぞ…。
「なんか、パパのこと、わるくいってるきがする」
ナナコが珍しく怒っている。
俺のために怒ってくれているのか、いや、俺がわるく言われているのはその通りなんだが。
「ナナコ。落ち着いてね。多分、ナナコが本気出したらあのおっちゃん死んじゃうし」
殺しちゃダメだよ。小さな声で言ったつもりだけど。
「おっちゃん?私はリーゼロッテと同い年だ。それに騎士学校を優秀な成績で卒業したのだ。お前らごときに負けるはずがぁ!」
とはいえ、どうにか穏便に、でも、少し痛い目にあって帰って貰わないと…。
許すつもりはないしね。
考えていると
馬が走ってくる音がした。
「どう、どう、」
滅茶苦茶、急いできたみたいだな!
あれ、見たことあるおっさん。
「エイトどの。お久しぶりにございます。」
あ、ランツ伯爵。見たことあるオジさんだった。戦争終了時のパーティーで会って、それから、ここに住む時に挨拶したんだったな。この地域の大領主だってことで。
あれかな、息子が、オイタしそうだから自ら、飛んできたんだな。
「父上。この平民が私を侮辱するのです。」
俺を指さして言う。あなたの父上、俺のことエイトって言ってたよね。
「黙れ。勇者様にむかって口の利き方を…」
呆然とする。貴族の青年。
「?えっ…。おま、いや、貴方が【勇者え…。」
その先を言わせるわけにはいかない!
「黙れ!」
「いっちゃダメ」
俺と可愛いナナコの声が被る。
シグルド?君だっけ。思いっきりぶんなぐって、お空の彼方まで飛ばしました。
ナナコも地味にシグルド?君を蹴っていた。スネの一番痛いところピンポイントで。
さすが、俺を殺しに来た娘や。
いや、流石は、俺のむすめだよ。
でもあんま、人に暴力振るっちゃダメって教えないとな。
「「あっ!」」
また、俺とナナコの声が被る。
親子は似てくるって言うし、同時に手を出してしまった。
でも、伯爵殿に謝らないとイカンよね。
「あの、ランツ伯爵。なんと言って良いか…。騎士学校で優秀だってきいたから多分死んでないと…。思うんですが。」
ナナコと顔を見合わせる。
「「ごめんなさい!」」
お、息の合った謝罪。
「…いや。謝るのは、私の方なのだろう。そうだな?」
伯爵さんは、馬車の御者に聞く。
「はい。おっしゃるとおりです」
「くっ、間に合わなかったか、いや、間に合ったのか?…すまんが、あんな男でも我が息子だ。飛んでいった方向へ行き、助けてやってほしい」
「…。畏まりました」
御者さん、すげぇ、イヤな顔したよね。身内にもやっぱ嫌われてたの?
「ランツさん。あんなのはもう止めようって、リチャードが言ってたよ」
国王はもの凄い抵抗に遭いながらも、貴族制度の見直しを進めている。
「私は理解しています。それが存外、私どもにとっても良いことだとも。」
貴族にとっても、煩わしい付き合いや慣例が無くなり、領地の経営に集中できる。
貴族だからできないことだってある。
国王はその領主制度ですら改革しようとしているみたいだが、それは、まだまだ難しいだろう。
「謝罪は良いからさ。リチャードのこと支持してやってね」
この西方の辺境の広大な土地を従えるランツ伯爵が味方になることは、リチャードにとってもプラスだろう。
「畏まりました。では、シグルドのことは許して頂けるので?」
「うん。あとの処分は任せるよ。一発殴ったらスッキリしたし。」
「すっきりー」
その後、俺の可愛い娘を紹介したり、旅の途中には寄ってご馳走してくれることを約束したり。
……。
気がつくと心ここにあらずな女の子が一人。
俺のお嫁さんとかいった件な。なんとかしないと。
でも、イヤじゃなかったら嬉しいな。
後は、どうやって口説くかですね。
私には、難しかったです。
恋愛パートは、次で終わる予定ですが、また魅力的な女性が登場したとき、どうなることやら。
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