女の子の身だしなみって
事情を説明して、リゼのお古がないか聞いたら何故か怒られた。
「もう、エイトさんったら。こんなボロボロの服着せて、髪もといてあげないとボサボサだし、せっかくナナコちゃん、かわいくて、きれいな髪しているのに!」
黒い髪は、以前は少し気味悪がられたりしたそうだが、今はそんなこと思う人は少ない。主に俺のおかげだよ!
リゼは十代半ばで、燃えるような赤い髪を後ろで束ねてる。そんなオシャレって訳じゃないけど、元が良いのか、美人さんに成長している。
初めて会ったときは、今のナナコよりちょっと大きいくらいだったかな。
あの時は、モルドさんたち魔族と人族の混血の人達が難民になって戦火から逃れるあてのない旅をしていたんだよな。その中で、一人みんなを元気づけようと頑張っている女の子がいたんだ。
それがリゼだった。赤い髪が特徴的で、とても可愛かったな。魔族の血は四分の一になってるから、魔族特有の角はほとんど見えなくなってて、小指の先くらいのコブが頭に二つあるくらい。癖っ毛の赤髪に隠れて全然目立たない。
リゼが、みんなを頑張って元気にしていることを、誉めて頭を撫でてあげると喜んでた。角にさわるとくすぐったい感じらしいけど、それはモルドさんの娘の証。リゼは角の事、誇りに思ってたな。
3年前、王都の学校へ進学して、優秀だったので宮廷魔道士への就職口もあったらしいけど、最近になって村に戻ってきた。村長の業務を手伝っている。
「親思いの良いコだな。」
って、リゼが村に帰ってきた時に、モルドさんに言ったら、
「エイトさん。本気で言ってる?リゼが戻ったのは、俺のためじゃないよ!」
って、否定された。
「でも、村長の仕事、手伝ってくれているんだろ?」
「うー。まぁ、それはそうなんだが…。そういうことじゃなくてだな。」
「ん???」
その時は、それで会話が終わったのだが…。
リゼは、3年前、ただの元気な女の子だったのに、今はよく見ると、うん、でるとこでてきて…。
ふっ。なかなか良いモノを持っているようだな。
うん。美人さんだし、モテてただろうな。
「エイトさん…。どこみてんのよ…。」
あ、ジロジロ見てるのバレちゃったよ。
「いや、リゼも大きくなったなって。」
ん、リゼが赤くなってる?胸の部分を隠すようにして。
「もう、バカっ!」
あ、いや、大きくなったなって、全体的にって意味で…。
「とにかく、ナナコちゃんを家にいれるから。良いよね」
「あぁ。」
ナナコが不安そうにこっちを見る。
「大丈夫だ。リゼは、俺が最も信頼する人の一人だからな。」
ちょっと大袈裟だけどね。
「しんらい…。うん。わかった」
「じゃあ、ナナコちゃん。こっちおいで」
まぁ、ここからは、女の子の世界なのだろう。
「よし、じゃあ、子ども用の家具もいるだろ!」
モルドさんがありがたい提案してきた。
ナナコに魔法を教えたら、呪いをとく旅には出るが、それまで何日かかるか分からない。日用品は揃えておきたい。
「そういえば、黒い男の行方って。」
聞くタイミングが解らなかったけど、ナナコもいないし今聞いておこう。
「東に向かったらしいけど…。」
「東…。魔族領?」
この村周辺を境に、東に魔族領、西が人間の国。
「だけど、北方の訛りがあったって。」
「北…。イリアス聖国か?」
人類史上主義教団。やはりそこか。
多分、ナナコはイリアス聖国のどこかの教会で育てられていたと思う。教会併設の孤児院兼、幼児訓練施設か。ろくでもないな…。
「そうだな、聞いた特徴合わせると多分、黒い男はイリアス教徒で間違いない。」
「東へ向かったってのは?」
「行き先を誤魔化すためだと思うよ。」
そっか、黒い男は逃げるけど、イリアス教団は逃げない。とりあえずのゴールも決まったな。
うまく呪いを解ければ良いのだけど。
ナナコの魔法訓練
王都へ訪問
そしてイリアス聖国か。
…この行程だと、昔の仲間の中で、魔王アリスにだけ会えないか……。
俺のかわいい娘を紹介したかったんだが、まあ、仕方ないでしょう。
俺のかわいい娘…。ふへへっ。
ゴンっ!
頭に衝撃が……。
俺は、勇者だし、なんか来るのわかってるけど、リゼの怒りを感じた。これ、避けたらあかんヤツだと……。
「い、いってててっ!」
予想以上に痛かった。
「エイトさんなら、避けると思った…。なんで避けないのよ!」
殴った本人の言葉じゃないよね。
「いやっ、だって、リゼさんが怒っていらっしゃるから?」
「なんで敬語なのよ!」
「だから、リゼさんが怒ってる……。」
「アンタねぇー。」
「アンタ…。」
そう呼ばれたのハジメテ…。
「もう、エイトさんなんてアンタよ。それで十分よ。」
で、リゼさんの怒りとは?
「ナナコちゃんの服がボロボロなのも、髪がボサボサなのも仕方ないと思ってたけど、下着くらい履かせなさいよ!この変態!」
へっ、下着?パンツ履いてなかったの?
しばらくの間、リゼのお説教を正座して聞くはめになった。
俺より10才も若くてキレイな女の子に、アンタ馬鹿じゃないの、とか、この変態!とか罵られている。
………。ん、悪くないかも。ちょっと嬉しい?
今の魔族領は、魔王アリスに、歴戦のおじさん魔族達が従っている。アリスに怒鳴られて、扱き下ろされて、こき使われてるおじさん魔族達を気の毒に思っていたのだが……。
そっか、そういうことか。あの方々にも、これが報酬だったと……。
「もう、馬鹿っ。ちゃんとしなさいよね。」
「はいっ」
ほら、なんか、体の奥の方が…。
ゾクゾクするというか…。
これは、なんとも言えないけど、喜びの感情だろう!?
目覚めたエイトをしばきたい人も、リゼにしばかれたい人も、ブックマークや評価してもらえると、いいことあるかも。
少なくとも、私は喜びます!
よろしくお願いします。




