苦学生の俺が金に目が眩んでグレー寄りの真っ黒の民間警備会社でアルバイトを始めたら、護衛対象の普通じゃない女の子達に囲まれるなんて聞いてない!
俺と千登世がそう言う関係になってから、早一週間が経ったある日。
事あるごとに揶揄ってくる一姫さんに辟易としながら、これまでのように千登世の家で千果の相手をしたり、千登世の話相手になったりと平凡な日常が戻ってきていた。
今も珍しく休みが取れた棗さんと千果がきゃいきゃいとポリキュア談義で盛り上がっているのを優しい表情で見ている千登世はなんだか雰囲気が丸くなったと思う。
俺はそんなことを思いながら、千登世の食事会の件までバタバタとしていたから、久々に訪れた平穏な日々にこんな日が続けばいいのになぁとコーヒーをくちにしていると棗さんが少し離れた俺の方に向かって声を掛けてくる。
「郁真さん、私お邪魔じゃないですか?」
「棗がお邪魔なんて私が郁真に言わせるわけがないでしょう?」
「……そういう事です」
「ならいいんですけど……」
食事会の次の日ぐらいか、千登世から聞いたのか長文のお祝いのメッセージを送ってきた棗さんは俺と千登世の邪魔をしているんじゃないかと、少し心配しているようだ。
まぁ、千登世が言うように俺が棗さんのことを邪魔と言うわけもないんだが、千登世の方が立場は上なのでそもそも俺に拒否権は無い。
「なっちゃん聞いてよ~、ちとねえ隙あらば郁真といちゃいちゃしてんの、隠れてちゅーとかしてるんだよ~?しかも、毎回ちとねえから!」
「ええっ、そうなの?結構千登世って男らしいんだ……」
「千~果~?」
千果の暴露に棗さんは顔を赤らめ、千登世は楽しそうに逃げ回る千果を怖い顔で追いかけまわす。
バタバタと逃げ回る千果を見ながら俺は笑いながら千果を追いかける千登世の手助けをするために輪に入った。
◇
「いや、なんで私当て馬みたいになってんの!?」
そんなことが有ってだな……と伊万里の仕事に顔を出した俺は昨日の出来事を伊万里に話すと。伊万里は心外だと言いたげに声を荒げる。
礼儀というか、告白してもらった身である以上、俺と千登世の関係を隠すのは失礼だと思ったからだ。
正直に食事会の時の出来事から、説明している時からして、少しずつ機嫌が悪くなったりしょんぼりしたりと百面相をしていた伊万里は今も納得がいっていないような表情を作っている。
「まぁ、今はって逃げられた時点でそこまで期待はできないかなぁ~。って思ってましたけどぉ」
「う……それは、すまん」
「謝られたら、余計惨めなんですけど」
キッと睨みつけてくる伊万里に俺は何も言えなくなる。
「まぁいいや、いや、良くは無いんだけどね?」
「どっちだよ」
「こればっかりはタイミングだしね、しょうがないかなって。今は先輩は鷺森を選んだって事だし」
「今はとか不安になるようなこと言うなよ……」
「え~でも、先輩が鷺森と仲悪くなる可能性もあるわけじゃん?」
伊万里の言葉を聞いて、今一度考えてみる。
いや、あそこまで覚悟決まった千登世が俺を逃がすとは思えない。
「多分無いんじゃないかなぁ」
「うざ、のろけですか先輩」
「いや違うって」
「まあ、恋人が二年以内に別れる確率七割って言いますし、今は鷺森に上げますよ。先輩も二年間楽しんでくださいね」
にやにやと不穏な事をいう伊万里に怖い事を言うな!と言ってやりたい。
仮に別れたとしたら、別れる理由によるにせよ少なくとも俺の命は無いに違いない。
「だって、先輩今はって言ってくれましたもんね?いつかは私の物になってくれるってことでしょ?」
俺の言った「今は」の揚げ足を取る伊万里はそのまま続ける。
「狙った獲物は逃がさないですよ、先輩っ」
「……精々、頑張って逃げるとするか」
「先輩、そういうのは思ってても言っちゃだめですよ」
もうっと言って笑う伊万里に謝りながら、俺はどうして普通じゃない女の子達に囲まれているのだろう、きっと鬼頭さんに言われるまま護衛なんて仕事を始めたせいに違いない。とため息をついてしまった。
苦学生の俺が金に目が眩んでグレー寄りの真っ黒の民間警備会社でアルバイトを始めたら、護衛対象の普通じゃない女の子達に囲まれるなんて聞いてない!―了―
ここまで読んでいただき有難うございました。途中途中、私が失踪したりで読んで頂いていた皆さんには「あ、こいつエタったな」と思わせたりとご迷惑をお掛けしました。
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