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第二十五話 王太子妃


 教皇のクーデターは一日で終了し、ザナーガン国王が業者を素早く手配したおかげで街の修繕は順調に進んでいる。


「建物の全壊は覚悟したが、被害が少なくて何よりだ」

 国王ザナーガンはホっと一息ついた。


 ここは例のお茶会である。

 バフェグとエルメラ、王妃と国王の四人だけなのでいつもよりもリラックスをしている。


「そういえばバフェグよ。 例の火竜はどうしている?」


「ああ、あの子なら黒狼の近くに鳥籠を作ってそこで仲良く暮らしていますよ。ガルドフリムという名前をリディアン様からつけてもらっています」


「ふむ良い名前だが、どうせまたエレオノーラ嬢が改名するだろうなあ。にしても教皇派が一掃されて肩の荷が下りたが、一難去ってまた一難か……」

 国王の顔が暗いのには理由がある。


 教皇のクーデターの事後処理は大掛かりだった。

 ザナーガンとリディアンは王宮の膿をこの機に一掃したのである。


 ここまではザナーガンも予定通りなので特に問題はなかった。


 きれいさっぱり掃除が終わったリディアンはザナーガンや居並ぶ臣下の前でこういったのである。


「さて、はびこるゴミを始末したことだし、そろそろエレオノーラと本当の家族になりたいんだよね。学園の卒業まで待とうと思ったけど王妃教育やらなんやらでめったに会えないし、それなら結婚して王太子宮に住んでもらえればいいなって思ったんだ。どうかな?」

 疑問形であるがこれはもはや命令に近いことを臣下は知っている。逆らえば火竜に消し炭にされるか黒狼のエサとなるか……どちらにしても明日はないだろう。


 もはやリディアンは重臣たち以外にも『麗しい王太子』ではなく『恐怖の大王』であった。それゆえ、婚約者であるエレオノーラは『生贄にされる哀れな美女』扱いである。


 バゼスティルマ公爵家には必然的に同情が集まり、王都の人間は「暴君のリディアン様をなだめるために、エレオノーラ様は泣く泣く嫁ぐそうだ」だの、「エレオノーラ様を一方的に見初めたリディアン様が無理やり婚約者にした」だの、噂は尾ひれどころか背びれや胸びれもつけて流れていった。


最終的には「リディアンは封印された魔王である。予言者の言葉通り、100年の眠りから覚めて復活したのだ!」という話になった。



 愛しのリディアンとの結婚を目前に浮かれているエレオノーラは知る由もなく、金にあかせて商人を屋敷に呼んでショッピングを楽しんでいた。

 無駄な浪費を繰り返す彼女をだれも止めない。

「お可哀そうなエレオノーラ嬢……」

「恐ろしさを買い物することで紛らわせているんですわ」

 と勘違いする人間が続出したからである。



 エレオノーラは「オーッホホホ!未来の王妃に口出しなんてお父様でもさせませんわ!」と呑気にバカ高い宝石やドレスをしこたま買い込んだ。

 

 一方、商人がエレオノーラを見る目は同情に溢れている。

「心細さと恐怖を押し殺し、わざと明るく振る舞ってらっしゃるとはなんとおいたわしい……」

 と涙ぐむものまでいる。


 エレオノーラは「なぜわたくし、憐れまれているの? 今、わたくし幸せの絶頂ですわよ?」と混乱してしまった。

 商人が帰った後も、エレオノーラは「なぜ平民ごときに同情されなければいけないの? 公爵令嬢にして未来の王妃であるわたくしが祝福されることはあれど憐れみを受けるいわれはないわ」とグチグチ不満をあらわにした。


 気分が晴れないエレオノーラは庭園を見渡せるテラスにお茶セットを持ってこさせ、高級茶葉を自棄飲みしていた。


 そんなエレオノーラに声をかけたのは父のバゼスティルマ公爵、エゼンガルドである。


「無理をするなエレオノーラ。私たちの前では泣いてもいいんだぞ」


「そうよ。エレオノーラ。王命ゆえに逆らえないけれど、もしものときは亡命しましょう。あなたのためなら身分くらい捨ててもいいわ」

 母のアルティナは涙を流して娘を抱きしめた。

 娘を案じて食事ものどを通らずにいる彼女はすっかりやせ細り、頬はこけていた。


 エゼンガルドはストレスからさらに拒食が進んでいた。ずいぶんとやつれて実年齢よりも10歳は老けて見える。


 娘を守れず、日に日に弱っていく妻を見ているしかできないふがいない男だと自分を責め続けているのだ。


 しかしエレオノーラは健康そのものである。

「お父様、お母様。おっしゃる意味がよくわかりませんわ」

 エレオノーラがとまどいながら言うと、両親はワっと泣き出した。


 ますますわけがわからないエレオノーラはきょろきょろと周りを見渡して訳を知って良そうな人間を探す。

 だがメイドたちはサっと目をそらした。ちなみにリューナは「旅行に行ってきます!」と出かけている。

 エレオノーラに近しい彼女たちは実情をよく知っているが、下手に口を出して巻き込まれでもしたら困ると見ざる聞かざる言わざるに徹している。


 公爵夫妻の嗚咽だけが響くテラスでエレオノーラは焦りまくっていた。


 そんなことがあった数日後、えらくご機嫌な父と母がエレオノーラの部屋に訪ねてきた。

「もう大丈夫だ。エレオノーラ」


「そうなのよ。エレオノーラ。なんとお前の義理の妹が身代わりにリディアン様へ嫁いでくれるそうよ」


 青天の霹靂である。


 義理の弟はいても異母妹は初耳である。

 というより身代わりとは何だろうか。


「待ってお父様、お母様。一体どういうことですの? 義理の妹って?」


「ああそうか。お前は知らなかったな。お前の義弟デスティの生家にはお前と同じ年頃の娘がいてね。なんと彼女はお前の身の上をいたく心配し、身代わりとしてリディアン殿下に嫁ぐと言ってくれたんだ。たいそうな美女らしいからリディアン殿下も納得して下さるだろう。良かったなあエレオノーラ」

 久しぶりに笑顔を見せる両親だが、エレオノーラの表情は真っ青である。


「な、なぜそんなことを引き受けてしまわれたんですの!! わたくしはリディアン様を心からお慕いしていますのよ!! だいたい、わたくしがお父様におねだりいたしましたでしょう? リディアン様の婚約者にしてくれなきゃ屋敷に火をつけるとおどしましたし」


「そ、そうだったか?」

 エゼンガルドは首をひねる。

 

「お父様。リディアン様にお会いしたいから城に連れて行けとだだをこねたこともお忘れ? 聞いてくれなきゃメイドに鞭うつとも言いましたわ」

 我ながら惚れ惚れするくらいの悪役令嬢っぷりである。つい最近は聖母だの女神だのと呼ばれて自信喪失しかけていたが、エレオノーラはしっかり悪役令嬢なのだ。


 フフンと誇らしげにエレオノーラが言うと、エゼンガルドは眉尻を下げ、困ったように顰める。

「す、すまんが覚えていない。なにしろリディアン殿下はお前と婚約できなければ火竜を召喚して国を焦土化するとおっしゃったのでな。あれは今思い出しても恐ろしい」


 ぶるると生まれたての小鹿のように体を震わせるエゼンガルドを妻のアルティナが心配そうに背中をさする。麗しき夫婦愛である。社交界でもおしどり夫婦として有名なのだが、それはこの際どうでもいい。


 リディアンの過激すぎる発言でエレオノーラの悪役令嬢っぷりは両親の記憶からすっかり消え去られていた事実に肩を落とした。


 意気消沈するエレオノーラに、両親は顔を見合わせて、

「ごめんなさいね。でもあなたがそんなにリディアン殿下との婚姻を楽しみにしているなんて信じられなくて……」

「でもまあ、お前が幸せならよかったよ。親戚筋の令嬢には断りの連絡をしておくから」


 両親はエレオノーラに言葉をかけて元気づけようとしたが、傷ついたエレオノーラが復活するのはまだまだ先だった。



 ところ変わってデスティの生家であるバーブフェルデン伯爵家。

 エゼンガルドからお断りの連絡が届き、伯爵夫人のダルアーネと令嬢ベルティアーナはヒステリーを起こしていた。


「なんですって? ベルティアーナがリディアン様の婚約者になれないですって?」


「ンマアアア!! ひどいわひどいわ!! 絶対にデスティがわたくしの邪魔をしたのよっ!!」


 けたたましいベルティアーナの絶叫にガラス食器が振動でガチャガチャと鳴る。


「可哀そうなベルティアーナっ! こんなにも美しいお前は田舎でうずもれるより王都で王太子妃になるのがふさわしいのにっ!! あ、もちろんアタクシも田舎は似合わないけれど!!」


「お母さまああああ!!!」


 ベルティアーナとダルアーネは抱き合っておいおい泣いた。


 彼女らに『エレオノーラの身代わりになる』なんて殊勝な心掛けは皆無である。

 リディアンの悪評も政敵の仕業だろうと考えて本気にしていない。


「どうせデスティの仕業よ。あの子が王都にいること自体許せないのに!!」


「そうだわお母さま。デスティを返せと公爵家に行ってみたらどうかしら。あの子だけいい思いをするのは癪に障るし。あの子がいなくなったら障害もなくなるわ」


「そうね!! さすが私の娘!!」

 色々破綻した理論の元、怒り狂った彼女らはこともあろうに上京した。デスティの父レガリオはしっかり反論したし必死に止めたが、気弱な彼はけちょんけちょんに罵倒され、心を病んでベッドの中である。



 自分が正義だと信じて疑わないベルティアーナとダルアーネは公爵家に怒鳴り込み(使用人たちもさすがにデスティの親族をつまみ出せなかった)、品の良い応接間で下劣な要求を繰り返した。


「リディアン様の婚約者はベルティアーナがふさわしいのよ!! 政敵の罠に嵌まって泣いてばかりのエレオノーラ嬢は相応しくないわ!!」

 理論としては間違っちゃいないが。噂がまったくの嘘なので使用人たちは白けた顔である。


 使用人たちはめんどうなことが起こりそうなのでエレオノーラに会わす気はなく、視察中のデスティが帰ってくるのを辛抱強く待った。


 そこにやってきたのが、リディアンである。玄関ホールで顔なじみのメイド頭に会釈をした。

「エレオノーラにプレゼントを持ってきたんだ。入らせてもらうね」


「まあ、殿下。お嬢様もさぞお喜びでしょう」


「リディアン様!!」

 二人の会話を耳ざとく聞きつけたベルティアーナは応接間から飛び出してきた。


「誰?」

 きょとんとするリディアンにメイド頭は額に手を当てる。


「あなたの婚約者ベルティアーナですわ!!」

 堂々とベルティアーナは言い切った。

 彼女の顔は自信に満ち溢れ、世界が自分の中心と信じて疑わないその姿勢はエレオノーラに引けを取らない。


「なんの冗談?」

 リディアンはメイド頭に尋ねる。

 これが有象無象なら瞬殺待ったなしだが、場所柄的にリディアンは無茶ができない。

 愛するエレオノーラの生家であるバゼスティルマはリディアンにとって慈しむべき存在だ。よって、リディアンは公爵夫妻どころか下っ端の下っ端……例えば庭師見習いの少年でさえ尊重する。


「わたくしもさっぱり……。当家の後継、デスティ様の縁者の方ですが、話が通じないのでデスティ様がお戻りになられるのを待っている次第です」


「そうなんだあ。大変だねえ」

 リディアンはベルティアーナをちらりと見て憐憫の眼差しをメイド頭に送る。

 エレオノーラに義弟がいることはリディアンも知っているが、留学や政務に忙しくて会ったことがないのである。ここで待っていれば義弟に会えるかもしれないとリディアンは少し興奮した。

 


「ちょっと!! メイド風情がわたくしをバカにしていいの思っているの?! わたくしは伯爵家の娘よっ!! 絶対に許さないから!! 食事抜き……いえ鞭打ちにしてやるわっ!!」

 真っ赤な唇から恐ろしい言葉が飛び出すが、メイド頭は苦笑する。

 バゼスティルマ公爵家の上級使用人となるとそれ相応の身分である。


 リディアンもそれがわかっているので特に口を出さず、可哀そうなものを見る目を向けた。



「リ、リディアン様っ!! バゼスティルマの娘はリディアン様との結婚を恐ろしくて嘆いているという話ではありませんかっ!! わたくしなら政敵の罠にひっかからず、愛するお方を信じ抜きますわっ!!」

 ベルティアーナはリディアンに切々と訴え始めた。

 

 リディアンはやれやれと肩を諫め、ため息を吐いた。

「ここまで話が通じないと怒る気も失せるねえ。たぶんエレオノーラを侮辱しているんだと思うんだけど、真剣に取り合うのも馬鹿らしいというか……。きみ、ずっとこの物体の相手をしていたの? すごいねえ」

 リディアンは応接間で必死にダルアーネを羽交い絞めにしているメイドに称賛を送った。



 リディアンが珍獣の雄たけびを困惑顔で眺めていると玄関があわただしくなった。

 執事とともに入ってきたのはお待ちかねのデスティである。

 艶やかな黒髪、陶器のような白い肌はまるで彫像のように美しい。


「リディアン殿下、お越しでしたか。ご挨拶が遅れて申し訳ありません。デスティと申します」

 胸に手を当てて深く頭を下げるデスティは気品があふれている。次期公爵に足る風格でリディアンは満足そうに笑みを浮かべた。



「はじめましてだね。僕の弟」




「恐れ多いことです」

 デスティは丁寧に返した。


「な……おまえ、デスティなの?!」

「そんな嘘よ!! わたくしよりも仕立てのいい服を着ているなんて!!」

 空気を読まないベルティアーナとダルアーネは目を見開いて甲高い声を上げる。悔しそうに顔をゆがめる彼女らにデスティは『進歩がないなあ』と思うだけで顔色一つ動かさない。



「ねえ、コレは君の血縁らしいんだけど本当? 僕には信じられないんだよねえ」

 リディアンはキーキーと喚く二人と凛とした姿のデスティを見比べて言った。


「ご明察通り血のつながりはありません。詳しいことを申せば、母の義妹とその娘です。義妹とはいえ、義祖母の連れ子でしたので母にも私にも血縁関係はありませんね」

 ハアとデスティはため息を吐く。


 リディアンは楽しそうに喉で笑うとデスティの頭をぽんぴんと軽く叩いた。

「なるほどねえ。若い身空でずいぶん苦労しているじゃないか。でも経験は後々の糧になるから悪いことばかりじゃないよ」

 珍しくリディアンが人を慰めるセリフを吐いた。バフェグが聞いていたなら天変地異でも起こるのかと慌てたことだろう。

 気まぐれでも体調が悪いわけでもなく、リディアンはすっかりこの有為の義弟を気に入ってしまったのである。


「うんうん。いい目をしているねえ。ぜひ公式でないときは僕のことは兄と呼んでくれ。君は僕の可愛い弟になるのだから」


「光栄です。兄上」

 デスティは小さく笑みを浮かべる。少し顔を赤らめる彼の表情は少年らしい姿でメイド頭は驚きすぎて顎が外れた。

 リディアンはデスティの反応を見て満足げに笑う。

「それじゃあね。僕はエレオノーラの部屋に行くとするよ」と言い残し、大階段を上がっていった。



「ま、待って!! わたくしがリディアン殿下の婚約者になるのよ!!」

 ベルティアーナが叫び、

「リディアン様っ!! ベルティアーナをぜひお傍に置いて下さいませっ!! そしてわたくしを王太后にっ!!」

 ダルアーネが本音(そもそも王太后になれるわけないのだが)を駄々漏らして叫んだ。


 だが、リディアンが振り向くことはなく、エレオノーラに渡す花束を抱えて二階の奥へと進んでいった。


 姿が見えなくてもビービー二人が喚いている間にデスティは手際よく依頼状と荷馬車の手配をすませた。


「デスティ様。お呼びでしょうか」

 ガタイの良い男が二人奥から姿を現すとデスティの前に跪く。

 彼らはエレオノーラが金にあかせて雇った外国の拳奴である。何かの荒事に使おうと屋敷に住まわせていたのだが、王妃教育や学校の切り盛りで忙しくて彼らは暇を持て余していた。


 そんな二人に手を伸ばしたのがデスティである。

 優秀なデスティに彼らは心酔し、忠実な部下となった。

「この二人をレンディアント修道院へ送れ、デスティの紹介といえば理解してくれるだろう」

 デスティは多額の寄付をしている修道院の名を告げた。


「かしこまりました」

 二人はベルティアーナとダルアーネの襟首をつかみ、のっしのっしと外へ向かった。ベルティアーナたちはもちろん抗議したがデスティが聞く耳を持つはずがなく、優秀な部下たちは厳しくて有名な修道院へと馬車を走らせた。


 一連の騒動を見ていた新米のメイドは困惑した顔でメイド頭に尋ねる。

「あの、お二人が行く修道院はどんなところなんですか?」



「ほほほ。世にも厳格な院長が仕切る場所ですよ。規律を守る人にとってはどうってことない場所ですが、我が儘だったり、非常識な人には院長からの愛の鞭が飛んできます。あのお二方にとっては地獄でしょうねえ」

 メイド頭は上品に笑う。


「これで性根を入れ替えてくれればいいんだけどな」

 デスティは肩をほぐすように回し、ふうと息を吐いた。


「まあ、てっきり厄介払いなのかと思っておりました」

 メイド頭が不思議そうに言うとデスティは苦笑する。


 彼があの二人に冷徹になり切れないのは母のことがあるからである。


「厄介払いももちろんあるさ。だけど、俺があの二人を断罪してエレオノーラ様の評判に傷を付けたくないんだよ。『婚約者の座を奪われそうになったから断罪した』なんて汚名、被って欲しくない」



「あらまあ。てっきりエレオノーラ様に興味がないのかと思っていましたけれど、そうでもないのですね」


「うん……エレオノーラ様のおかげで憧れのあの方が俺の兄になって下さるからね。ずっと実の弟であるヴァルド様に嫉妬していたほどあの方に憧れていたからすごく嬉しい」

 少年らしく微笑むデスティにメイド頭もにっこり笑う。


 なお、リディアンと血を同じくするヴァルド王子は見た目は国王似で険しい顔なのだが、中身はとっても優しくて純粋な子に育っている。


 ただし、見た目と兄が破天荒であるため、まともに扱ってもらえない可哀そうな少年だった。



「ハア……エレオノーラ様の弟に生まれたかったなあ。デスティがうらやましい」

 庭の隅でそう溢す彼は不憫の一言に尽きるが、険しい顔と恵まれた体格のせいで『今夜の剣は血に飢えている……!』という物騒な副音声が付き、周囲は「やはりリディアン様の弟御だ!」と納得するのである。


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― 新着の感想 ―
[一言] 珍獣の遠吠え…!! 流石王様、問答無用。 そしていたんだ弟! 顔が死ぬほど怖いんだろうなぁ可哀想に。
[一言] あれ〜? 主人公不在で解決したぞぉ〜?(笑) ヴァルド君も苦労してるんだねぇ…
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