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07ハルミ、本領発揮する

 20年4月2日改訂

 サクラに見守られ(見張られ?)てゲーム開始。

 昨夜はチュートリアルを終えずにゲームを終了してしまったので、またオープニングから始まる。

 このオープニング長いから飛ばしたい、と思ったけど、サクラが楽しんで見ているので一緒に見る。


 そして教会のドアを開いて、外に誰もいませんよ?


「まずはどこに行けばいいの?」

 振り返って後ろのサクラに確認する。

 サクラはあきれた表情になりました。

「ちゃんとオープニング見てなかったの? 神父さんがまずは村長さんの家に行きなさいって言ってたでしょ」

 失敬な。ちゃんと見てましたよ、画面に時たま映るサクラの顔を。

 もちろんサクラには言いません。ゲームを見ろと怒られてしまいますからね。


 では早速キャラクターを動かしてみましょう。

 前へー、後ろへー、右、左、くるっとジャンプ。

 一通り指示された動きをして、いざ出陣。


◆◆◆◆◆


「村長の家はどこですか?」

 早速サクラに質問です。探す手間はとことん(はぶ)きましょう。

「村の中心にある一番大きな家だよ」

 ふむ、長たるもの田舎村でも一番立派な家に住んでいますか。いえ、もちろん教会のほうが立派でしたよ。村の中で旅人が泊まれる施設があるのは教会だけのようですからね。宿屋もないってどんだけ田舎なんだ。


 ちなみに村の概要はこんな感じ。

 村の入り口が東にあり、入ってすぐに村で一番大きい建物『訓練所』がある。『一番大きい』と『一番立派』が微妙にニュアンスが違うのがミソ。村の中心に村長の家と複数の民家。西に浜辺があり、その近くに教会。北と南には畑があり、村の周囲は木の柵で魔物や獣の侵入を防いでいる。

 ちょっと村事情が心配になります。経済回ってないんじゃないですか。

 

 そして村長の家。

『よく来たな、旅の者よ。ゆっくりしていってね』

 40歳くらいに見える村長。ノリが軽いな。


「頭に『!』が出てるでしょ。クエストがある印だから押して」

 サクラの誘導に従いぽちっと。

『おお、いいところに来た。ちょっと教会に行って、薬を貰って来てくれんか』

 ふむ、これがクエストですか。


「教会から来たばかりなのにふざけてるんですか」

 ちょっとイラッとしました。

 サクラも「たははー」と仕方なさそうにしています。

「ゲームだからって割り切って」

 そうですか、諦めて進めます。



 再び教会に。

「薬草が欲しいか? ならば森に行くがよい」

 神父さんに話しかけたら、さらに(たらい)回しが待っていました。


「神父さんと村長の頭上に盥を落としていいですか?」

 イライラがつのってきました。

「ハルミ落ち着いてー。薬草なんて森ですぐ見つかるから!」

 サクラが私の肩を掴んで落ち着かせようとします。

 サクラにあたっても仕方ないので、先に進みましょう。



 村の東から森へ、割と近いです。簡単にモンスターが村へ侵入しそうですね。

「森に入ってすぐの場所は、モンスターが出ないようになってるよ」

 そうですか、それは安心ですね。


「ところで薬草はどこですか?」

 森を見渡してみるが、見える範囲に宝箱が置いてあったりしない。

「草むらの光ってる所にアイテムが落ちてることがあるから、いくつか探してみよう」

「わかりました。では行きますね」

「うん」


 サクラの助言に従い、草むらに……なにもありません。

 次の草むらへ……なにもありません。

 次へ……なにもありません。

 次……ありました! 違う、『石』でした。石って投擲(とうてき)かクラフトに使うのでしょうか。


 石を見つけた後、すべての草むらを調べてみましたが、

「ナニモナカッタ」

 おかしい、薬草なんてすぐに見つかるはずじゃなかったんですか。

 サクラも焦っている。

「閉鎖フィールド中は村に戻ったらアイテムやモンスターがリセットされるから、一度村に帰って森に入りなおそう」

 らじゃー、ハルミ帰港します。



 そして再度森に。

「ない、ない、石、ない、石、ない、ない……」

 どういうことでしょうか。薬草なんてここにありませんよ。

「おかしい、こんなはずじゃないのに」

 サクラの動揺が強まってます。

「もう一度、もう一度村に戻りなおそう」

 いいでしょう、わたしはサクラを信じますよ。



 更に森に。

「薬草、ありませんよ?」

 二度あることは三度ある。全然薬草が見つからない。

「まさか、いや……」

「どうしました?」 

 サクラが神妙な顔つきになる。

「ハルミの運のなさが本領発揮してる!?」

 がーん。……サクラ、それは禁句(タブー)ですよ。言ってはいけないことを……。


「サクラ」

「うん?」

 私は振りかえってサクラを見つめると、

 ドスッ!

「うっ」

 サクラのおなかに拳を叩きこみました。

 サクラは不意打ちを食らい、お腹を抱えて座り込む。

「サクラ、人が気にしていることは本当のことでも、口に出さずに心の内に仕舞っておくものですよ」

 サクラから見た私は今、目が笑っていないのにすごくいい笑顔になっていることでしょう。

 サクラも失言に気づき、「ご、ごめん」と謝る。

「ええ、今度から気を付けてくださいね」



 さて、サクラが回復するまで薬草探しを続けますか。



 30分後。

 薬草はまだ見つかりません。何度も村と森を往復して、何十個の石を集めたのでしょう。

 こうなったら最終手段です。

「サクラ、代わって」

「うん」

 選手交代です。



 サクラに代わって一度森に入りなおした結果、すぐに薬草が見つかりました。


「ほらー、簡単に見つかったでしょ!」

 サクラは薬草を見つけて大喜び。

「それは私が悪いということですか? それとも私の運が悪いということですか?」

 私の質問にサクラは目を泳がせます。

 せめて何か言ってくださいよ!

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