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52前線基地Ⅳ部隊分け

 ゴブリンたちを集めて訓示を行った結果、ハルミ将軍の大合唱を浴びることになった。私はギレン兄さんと違うので、演説が好きってわけじゃないんですけどね!


 ゴブリンたちが落ち着いてきた頃合いを見計らい、次の指示を出す。

「これより私と主だった者で作戦会議を行います」

 主だった者はタケシと部隊長5人の計6人。副官2人とおまけは数に入れる必要がない。勝手についてくるだろう。

「私の直属部隊と部隊長以外は解散して(やす)……英気を養うように。以上」

「「「ハッ!」」」

 集まったゴブリンたちは解散し、どこかに去る者もいれば残って他の者と話す者たちとバラバラだ。

 休めって言いそうになったけど、私が休めないのに雑兵が休むとか許せない。せめて英気を養ってもらおう。

 残した者たちにも指示を出す。

「タケシと部隊長たちは中についてきなさい。直属部隊の残りは外で待機、司令部の警備に就きなさい」

「「「ハッ!」」」

 これで一気に人数が減りましたね。話がしやすくなります。

「では行きますよ」

 私はテントの中に入る。後ろを確認しなくても勝手についてくるだろう。もう何も怖くない、独りきりじゃないもの。今日は体が軽い。大量の薬草が無くなったもの。

 実はアイテムストレージの詰め込み過ぎで、最近動きが重たかったんですよね。決して体が重かった訳ではない。だから、さきほどの決闘では森の死闘よりも身軽に動けました。薬もお酒も何事も適量が肝心ですね。



 テントの入ると机を迂回して奥に行く。ついてくるのは副官の2人だけ。あとは机の向こう側に待機。全員が奥に来たら邪魔ですもの。おまけはテントの端で待機。なにか指示を出すまで空気でいなさい。

 私は部隊長たちを一瞥してから説明を始める。会議といったな、あれは嘘だ。役に立たない者と話し合っても時間の無駄。上意下達(じょういかたつ)、ここは一方通行だ。

「説明を始める前に、先ほど伝えていない話が1つあります。タケシ」

「ハッ!」

「貴方を直属部隊の隊長に任命します。励みなさい」

「ハハッ!」

 さらに部隊長たちを順番に見やる。

「これで貴方たちは同僚です。困ったときには相談しあい、困ったものがいたら手を貸しなさい。

 ただし、それは決して馴れあえという意味ではありません。誰よりも強く、誰よりも活躍し、誰よりも出世することを目指しなさい。

 同僚は仲間であり敵。切磋琢磨しあい、全員を高めていきなさい。

 わかりましたか?」

「「「ハッ!」」」

 私の訓示を聞き、皆の目に闘志が芽生える。よしよし、このまま将の器を育てましょう。



「はーい、みんなちゅうもーく」

 私は紙を取り出して皆に見えるように机の上に置く。

「副官ペン」

 副官にペンを催促すると、アレンが鉛筆を、フランが筆とインク壺を2人同時に差しだしてくれる。迷うことなく鉛筆を取ると、フランが残念そうな表情をする。ごめんて、わざわざインクつけるの面倒くさいんですよ。

 私は鉛筆を使い、紙にさらさらっと書いていく。

「では説明します。言葉で分からない人は紙を見ながら聞いてくださいねー。

 まず、この基地には150人のゴブリンがいます。

 これを5人ずつで1つの組、()組を作ります。これが最小単位のチームです。

 絶対5人で一緒に戦えるようにしてください。他の者と一緒に戦えない奴は容赦なく首を飛ばします。

 5人での戦い方は後で実際に教えますので、部隊の者に教えられるようにしっかり覚えてください。

 ……ここまでよろしいですか?」

「「「ハッ!」」」


「最小単位の伍組を5つ集めて1つの部隊を作ります。これが貴方たちに率いてもらう部隊です。これを中隊と呼びます。

 中隊の中で伍組同士が協力しあって戦います。連携が重要です。これも後でいくつか運用の仕方を教えます。

 最後に、中隊を5つ集めて大隊とします。これが部隊としては最大単位です。率いるのはフランです。

 ここまでよろしいですか?」

「「「ハッ!」」」

 部隊長たちは揃って返事をしたが、フランだけ手を挙げて発言の許可を求める。

「どうぞ」

「ハッ! おれんが大隊を率いるのはわかりました。しかし、ハルミ将軍が率いるのではないのですか?」

 なかなか鋭いですね。1点あげます。

「良いところに気づきましたね。フラン、貴方の言うとおりこの大隊の指揮官は私です。

 しかし、私は戦場全体の動きを見ながら指示を出し、さらに直属部隊を率いて臨機応変に動きます。

 ですが、大隊の司令部は決まった場所に置いておく必要があります。司令部が動きまわっては他の部隊が混乱するからです。

 そのため、貴方を司令部に置いて、大隊の指揮を執ってもらいます。

 貴方は私が出した大まかな指示に従い、自由に大隊を動かしてその指示を達成させなさい。

 わかりましたか?」

「ハッ! お手間を取らせてすんませんでした」

 私は首を左右に振ってフランの謝罪を否定する。

「わからないことを尋ねるのは悪ではありません。わかっていないのに確認もせず、実戦で間違った動きをすることが悪なのです。

 フラン、よく聞きましたね。上司への質問は勇気がいることです。他の者にはなかなか真似できないことですよ」

「ハッ! ありがとうございます」

 褒めたフランだけでなく、他のゴブリンたちも尊敬の眼差しで見てくる。ただしアレンだけは真顔。私の本性を知っているから。

 フランにはこのまま勘違いさせておきましょう。私が楽したいだけだなんて本音は言えない。



 大まかな説明が終わったので、それぞれの中隊名と中隊長を決めていく。部隊長を中隊長に変えたのは、部隊と中隊が紛らわしくて頭がこんがりそうだったから。路線変更は仕方ない。サクラが去った時点で路線は無茶苦茶だ。

 中隊名は普通に第1中隊、第2中隊と数字を振っていく。動物の名前をつけることも考えたが、覚えるのが大変なので止めた。ああいうのは女子高だから出来ること。ゴブリン高では需要が無い。



「では次に、本作戦の説明をしていきます」

 司令部メンバーにも、アンに説明した作戦を伝える。

 一部ざわついた部分もあったが問題ない。逆らう者は打ち首だ。そろそろ首を斬り過ぎて、鈴の音が聞こえてきそう。



「さぁ、外に出てください。伍組の動きを伝授します」

 ずらずらとみんなでテントを出る。

 外で待機していた直属部隊の24人をそれぞれ5人4組あまり4人に分ける。4人の組にはタケシを入れて5人にする。

 組のメンバーには似た体形の者を集める。1人だけ大きかったりしたら連携を阻害する。邪魔ものは最初から邪魔もの同士で組ませた方が爆発力の高い組ができる。

 幸い、直属部隊は似た体形、似た性格の者が多いので苦労しない。体型だけなら簡単に揃えられるが、性格は難しいのだ。

 性格がバラバラだと組み合わせに悩む。似ていても相性が悪い場合があるし、真逆の性格でも相性が良い場合がある。

 まぁ、前線基地にいるゴブリンはエリートゴブリンの集まりのはずなので、選別の時に性格診断もしていると信じよう。


「フラン、後で大隊全ての伍組と中隊の編成をよろしく」

 フランに嫌そうな顔で見られた。

「貴方が一番この大隊にいる兵士1人1人の情報を知っているのです。貴方にしかできない仕事ですよ。期待しています」

 フランがやる気満々になった。ちょろい。



 直属部隊を5つの組に分け終わったので、実際にどう動けばいいか体に教え込む。私を想定敵として立ち向かわせるのだ。

「いいか、5人は家族だ。1人も失うなよ」

「1人を助けるために他の者が犠牲になろうとするな。1人を見捨てて他を活かせ」

「1人で1人と戦おうとするな。5人で1人と戦え」

「いつも5人で1人の敵と戦えると思うな。4人が集まるまで1人で時間稼ぎする方法を考えろ」

 うん。言ってることがバラバラじゃないかとみんな思っているだろうけれど、どれも大事なことだから仕方ない。

 結局伍組で動いても、誰ひとり私に触ることすらできなかった。相手が強いと意味が無いって実証されたね。相手が強いんだから仕方ないよね。


 私がした役をフランに任せてみた。

「本気でやりなさい。ただし、怪我は軽傷まで。薬草で治らない怪我は許しませんよ」

 結果はフラン惨敗。伍組の連携で簡単に取り押さえられた。やはり伍組は悪くない。強い相手が悪いのだ。


 次に槍を持たせて5人で連携する動きを教える。これは危ないので実習できないのが困りもの。明日からオークにちょっかいかけて、実地で練習させますか。普通のオーク相手なら気合いで負けなければ問題ない。結局戦いは数だよ数。



 中隊長たちに伍組の動きを伝授し終えたので今日は終わり。

 明日にはフランから中隊メンバーを報告するので、今日はみんな休め。明日からは忙しくなるぞ。

 以上、解散。


 中隊長たちは帰っていった。

「じゃフラン、明日の朝までに編成よろしく」

「ハッ!」

 フランが泣いて喜んだ。他のみんながフランを応援する眼で見ている。短時間で結束が強まっていてうれしいですね。


 さ、次の仕事に移りましょう。まずは直属部隊に指示を出す。

「タケシ、先ほどの5組でローテーションを組み、一つの組を司令部の警備に残して後は休み。朝まで5つの時間に分けて順番に交替させなさい」

「ハッ」

 これで直属部隊の排除完了。お荷物は邪魔になるのでいらない。



「アレン副官、行きますよ」

 私はアレンに声をかけて出発を促す。

「どこに?」

 言ってませんでした?

「オークの前線基地です」

「……」

 アレンが呆れた表情で見てくる。

「敵を知り、己を知れば百戦危うからずです」

 私の説明を聞き、アレンは諦めたように頷く。

「了解っす、ハルミ将軍」


 アレンと敵情視察、行ってみよう。

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