表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
48/53

48 2人の強化

 アンたちとの作戦会議が終わり、私とアレンは前線に向かうために族長の家を後にした。

「ひとまず教会に行きましょう」

 前線に向かうとは言ったが、すぐにとは言っていません。ビシッ、騙されたな!

 いやぁ、教会に行ってリスポーン地点の更新をしておかないと、下手したらオオグロ村から走ってくることになるじゃないですか。そんなことになったら面倒くさいので嫌ですよ。

 教会の場所はアンから聞いたので問題ない。問題はこれからのことだ。



「本当によかったんが?」

 今まで黙っていたアレンが突然口を開いた。

「ええ、悪くはないです」

「そうが」

 私とアレンは何かを言わなくても通じ合う仲になっています。予想外です。どうせなら猫耳幼女と仲良くなりたい。

 アレンが聞きたかったのは本当にオークとの戦争に参加してよかったのか。昨夜アレンから頼んできたのに今さらですよね。


「ところでアレン副官」

「ん? なんだ? てか、その呼び方はなんだかむず(がゆ)いな」

 私がアレンを副官と呼ぶと、体が痒そうにモゾモゾする。サクラなら可愛い仕草なんだけどな。

「慣れなさい」

「んだ」

 これから前線に行き、他のゴブリンたちの指揮を取ってもらうので、呼ばれ方ぐらい早く慣れてくださいよね。

「あと、これを使ってください」

 私はアレンの現在の装備品よりもランクが高いものをストレージから出し、全てアレンに手渡す。

「これは……」

 アレンは渡された品々を見て驚く。

「副官にはその立場に相応しい服装というものがあるのですよ。今の格好では他のゴブリンたちにバカにされます。これで身なりを整えなさい」

 装備をグレードアップしてアレンを強化する。簡単に死なれたり怪我されると困りますからね。

「ん、そういうもんが? でも、おめぇに貰う訳にはいかねぇ」

 アレンは律儀ですからねぇ、女性からのプレゼントは何も言わずにありがたく受け取るものですよ。たとえ詳細不明の髪の毛を巻いた藁人形であっても喜びなさい。


「気にしないでください、未来への投資です」

「投資?」

 アレンが不思議そうに首を傾げる。

「クエストの報酬を忘れたのですか?」

 私はアレンにウインクを送る。ハートオンウェーブ、カマンベール。

「ああ、薬草の。あれはうまくいったな」

 違います。

「ちゃうちゃう、それちゃう。今度の報酬ですよ」

「……ああ、望むもんをってやつが」

 それです。

「そうです、その報酬に比べればこんなの安いものですよ」

 アレンは考え込むように黙り込み、

「わかっだ、ありがたく頂戴すんべ」

 最初から黙ってそうしろよ、とは言わない。


「では着替えてきてください」

 話しているうちに教会に着きました。

「んだ、ちょっと待っててくんろ」

 言って、アレンが教会の裏手に回る。

「教会の中を覗いてますねー」

 アレンの背中に声をかけると、手を上げて答えてくれた。この、背中で語る感じがいいですよね。

「さて、お宅拝見」

 私は教会のドアに手をかけて開ける。御開帳~。



 教会の中に入ると、中に誰もいませんよ?

 教会は木材で建てられていますが、オオグロ村の教会と同じ様子で、あまり広くない部屋に祭壇が1つ置かれているだけです。偶像崇拝はゴブリン族に根付いていないようですね。ちなみに私はサクラ実物主義です。今度1分の1フィギュアでも作ろうかな。


 さぁ、誰もいない場所で、人に見られてはいけないことをしましょう。

 1人鬼ごっこ? 1人かくれんぼ? いいえ、SP極み振りタイムです。これぞ極みの仕事。

 持っているSPをLUC()に全振りする瞬間は、なんとも言えない快楽の瞬間です。運のない私の運がステータスという目に見える数字で確実に上がるんですよ。開運グッズとは大違いです。

 だけどLUC()の効果は目で見えないので、どれだけ上げても上がっている効果を実際に見ることはできない。他の人にしたら上げるだけ無駄なステータス。

「もはや、これを愉悦と言わずなんと呼ぶ。……わたし、綺麗?」


 さぁ、いきますよ。

 願いましては、薬草クエストで渡した薬草の枚数が4万枚。

 報酬は薬草5枚につきSP1。

 報酬クリティカルでSP1.5倍。

 合計SP12000なり~。ご破算にはしません。

 あ~、見てるだけでうっとりしちゃう。なにこの数字、貯まんない。使っちゃうから。

LUC()に全振り、シュート!」


 現在のハルミのLUC 15035


 なにこれ、なにこれ、たまんな~い。

 やばいやばいやばいやばい。

「サクラに見せたら殺される」

 サクラにこれを見せたら絶対に怒られますね。

「SPを無駄遣いしたらダメだっていったでしょ!」

 だが、そこに浪漫があるのだから仕方ない。誰にも私は止められない。

「これは6桁が見えてきましたね」

「それは無い」

 あぁ、サクラの声が聞こえる。逢えないせいで幻聴が。早く逢いに行かないと。



 さて、次は装備の変更タイムです。

 教会の中に人がいなかったのは重畳。着替えを覗かれる心配をせずにすむ。

 今までの装備品は村での生活をコンセプトにしたコーディネートだったので、この大陸では力不足でしょう。もっといい装備に更新する必要があります。

 どこから装備品を仕入れたって? やだなー、いろんな人がくれましたよ。落とし穴に落ちた人や、岩に潰された人や、槌に潰された人が。……なんだか罠が多いですね。

 それはさておき、アイテムストレージを物色しましょう。手持ちには物理職装備が多いので、僧侶が装備できる品はあまりないですね。僧侶が1人で迷路に来ることはあまりなかったですから仕方ない。

 実用性は大事ですが、選択肢が少ない中でも見た目を重視したい。このあとサクラに逢いに行くことを考えると、可愛い服装がいいですもん。でもその前に戦闘がありますか……うぅん、どうしよっかなっと。


 そして着替え完了。

 頭部装備は(くく)った髪に(かんざし)を挿しました。赤い花飾りが特徴。

 体装備は白い半袖シャツに紺色の膝丈スカート、それらを全て覆い隠すダボダボのブラウン色のローブを羽織る。ローブは実用性を優先して、戦場での迷彩偽装に期待した色合いです。逆に、ローブの中を可愛くすることで女子力アピール! 今回は羽織るタイプなので前を開ければ中が見えちゃうぞ☆

 脚部装備は実用的な皮靴。おしゃれよりも機能性を重視。特に私の戦闘スタイルだと、激しく素早い動きを阻害されないことが大事。

 左手首にはブレスレット。運が5も上がる素敵アイテム。10個ぐらいつけたいですね。

 あとはアンに貰った首飾り。各ステータスが僅かに上昇。ただし、

「この首飾りを装備した状態の時にだけ使える魔法があるみたいなんですが、マジックポイントが足りないので意味ないですね」

 この魔法が使える時は来るのか……たぶん来ないですね。SPの使い先はLUC()一択。



 今のハルミには全く価値の無いこの魔法。

 だがいずれ、この魔法がハルミを別世界に連れて行くのだった。



◆◆◆◆◆



 用事が終わったので教会を出た。この教会には見るものが何もありませんでしたからね。

 LUC()も上げたし、装備も更新したので安心して前線にいける。

 教会の外では、アレンも着替え終わって待っていた。

 アレンの装備は今まで布製だったので、鉄装備に変えただけで大幅に強化できたでしょう。あまり重くなくて頑丈な軽鎧をチョイスしたので、アレンの戦い方にも合ってるはずです。


「お待たせしましたか?」

「いんや、そうでもねぇ」

 アレンが首を左右に振って否定する。

 言わなくても、見れば私も着替えてきたことがわかるでしょう。女の着替えには時間がかかると知っていて、空気を読んでくれましたかね。化粧もしてくればよかったです、戦場に赴くので血化粧。

「なかなか似合っていますよ、アレン副官」

「おめぇもな、ハルミ隊長」

 私とアレンは真面目な顔で互いを見つめ、

「「がはははは」」

 大笑いしました。

 2人とも隊長や副官という役職が似合いませんね。


「さぁ、行きますか」

「んだ、行くべ」

 私とアレンは並んで歩く。

「ところで、私って前線の場所どころかゴブリン領の地理すら教えられていないって、知ってました?」

「……知ってた」

 あ、知ってたんですね。

「もしかしてアンは気づいていませんかね?」

「もしもなにも気づいてねぇだろぉな」

 アレンの顔を見ると、なんとも言えない表情をしている。

「あんだけ自信満々に作戦を説明してる奴が、地理も知らねぇとは思うまい」

 それもそうですよね。地理を知っていれば地形効果を狙った作戦も考えられましたよ。

「さ、アレン、早速副官の仕事です。前線まで案内してください」

「ん、任せとげ」

 アレンも副官扱いに慣れてきたので、このまま私の代理ができるように育てましょう。


 さあ、いよいよ出立です。ゴブリン族の明日に向かって走りましょう。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ