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47作戦会議Ⅱ

「ネーデルラント様を囮に使う気が!? ふざけんな!」

 オークとの戦争でアンを囮に使うと聞き、族長が怒りだした。

 知ってた。そりゃあ最上位者を最も危険な場所に置くんだから、簡単に納得されたら逆に怖い。


 ダン!

「黙れ」

 アンお得意の台バン、定番芸になってきた。

「しかし!」

 珍しく族長がアンに口答えする。

「黙れと言うておる」

「……ハッ」

 アンの再三の注意でようやく族長が従う。


「悪くない作戦じゃ、その話乗ってやろう」

 アンが私を見て頷く。

「ですが1つだけ問題があります」

「ん? なんじゃ?」

 アンが首を傾げる。

「アンに(えさ)としての価値があるかどうかです」

 アンはそれを聞き、一瞬キョトンとしてから笑いだす。

「あははははは、そこは問題ない、保障してやる」

 それほど価値のある人物ということですかね。くわばらくわばら。

「そうですか。ならばこの流れでいきましょう」

「うむ、よかろう」

 アンの許可が下りたので、これから作戦の準備で忙しくなりますね。



「では、いくつか準備に必要な話をしていきます。

 まず、決戦日の日時を正式に決めていきたいと思います。

 個人的には5日後、(つち)の日の昼過ぎがいいです」


 この世界の1週間は7日。曜日も現実世界とだいたい同じで、月の日や火の日などなんとかの日と呼び方が変わっているだけです。つまり土の日とは土曜日のこと。


「うん? ずいぶん限定的じゃの。なにか用事でもあるのかえ?」

 アンが不思議そうに尋ねてくる。

「ええ、そんなところです」

「ふぅん」

 私が認めると、その用事が気になるのか疑わしい目で見てくる。

「女の子にはいろいろとあるんですよ」

「なるほどな、あい分かった」

 分かってくれましたか。そういえばアンも女の子の時期があったんですよね。

 もちろん私の用事とは学校のことだ。ゲームのために学校を休むなんてありえない。


「では、5日後の陽が沈み始めてから開戦、1時間ほどで潰走ということで」

「よかろう」

 私の提案にアンが頷く。これで日時の件は終了。



「それではいくつか準備をお願いできますか?」

「うん? なんじゃ、言ってみよ」

「はい、まずは工事と建設が得意な人たちを集めてください」

「よかろう、城を作るためには必要じゃろう。人選はそうじゃな……」

 アンが族長に目線を送る。

「土木工事にはトウドウ村の者がええかと。あいつらは石の家に住んでるんで、石材を扱うんに慣れとります。補助として各村の力自慢を集めればええでしょう。

 建設に関しては各村から得意な物を集めればええでしょ。簡単な建物でええならそれほど苦労せん」

 族長がそれぞれの作業に必要な人材を上げていく。さすが長だけあって一族のことには詳しいですね。

「ということじゃ、人材のことは任せておけ」

 アンが人材確保を請け負ってくれた。次にいきましょう。


「次に、建物が完成したら物資の搬入を進めてください。

 そして、決戦日前日から料理と酒の準備を進めるために、戦いに参加しない女衆を集めてください」

 ゴブリンよりも大きいオークを満足させるためには大量の料理と酒が必要だろう。準備は早い目に始める必要がある。

「それも任せるがよい。お主には戦場で戦ってもらわねばならんからな。裏方仕事はできるだけこちらで受け持とう」

 わーい、裏方仕事から解放されるぅ。一番しんどいところを楽できるのはいいですね。でも、心配なので時々作業を監督する必要がありますね。いろいろと説明していない罠も追加しないといけませんし。


「あと、この村に教会はあります?」

「教会か? もちろんあるぞ」

 アンが不思議そうに首を傾げる。

「後で教会の場所を教えてください。私、教会じゃないと休めない呪いを受けているんです」

 もちろん嘘です。

 アンが疑わしげな眼で見てくる。

「よくわからんが……まぁ、よかろう。特に問題もないしな」

 よし、これでリスポーン地点の更新が出来る。


「最後に、準備期間中に私が見当たらないことがあっても気にしないでください」

「なんじゃと!?」

 アンの目に怒気が含まれている。やだこわーい。

「敵前逃亡したりはしませんよ。こちらにも準備が必要なんです。燃やすものを用意したり、燃えやすいものを用意したり、燃やす芋を用意したり」

 私の説明を聞いてアンが呆れた表情になる。

「なるほどの……それらの品はこちらでも出来る限り用意しておこう。

 ……当日は盛大に祭りを行わねばならぬしな」

「ええ、焼き肉パーティです」

「くくっ」

「うふふ」

「「あーはっはっはー」」

 部屋の中に私とアンの笑い声が響き渡る。

「「「……」」」

 男たちはどん引きしていた。



「そうだ、私が指揮官だって証明できるものってありますか? 前線に行って、お前なんて知らんと逆らわれたら面倒くさいです」

「ふむ、それもそうじゃの」

 アンはそう言いながら、胸元から首飾りを取り出す。胸元からって私への当てつけですかね?

「これを持って行け」

「ありがたく」

 アンから首飾りを受け取る。首飾りには緑色の宝石が埋め込まれていて、宝石の中に記号か文字が見える。

「これ、呪われていたりはしませんよね?」

 心配なので聞いておく。言うことを聞かないと首が締まったりする首飾りなら即刻返品だ。

「大丈夫じゃ、安心せい。私の物だと分かる記号入りなだけで、他の効果はあまり無いものじゃ」

 なるほど、身分証明以外ではゴミですか。まぁ、それでもいいですけどね、呪いの品より。

「分かりました、信用しましょう」

 私はアンから受け取った首飾りを首に装備する。うん、若干のパラメータ上昇。


「では、私は前線に向かいます」

「うむ、よろしく頼む」

「よろしく頼まれました」

 私とアンは見つめ合い、ニヤリと笑い合う。

 退室するために私が立ちあがり狼の皮を回収していると、アレンがドアを開けて待機する。これぞ副官の(かがみ)

「待てぇい」

 族長が急に引きとめられた。

「なんですか?」

「おんれも当日は行くかんな! 忘れんなよ!」

 族長は自分も戦いたいようだ。でも、気持ちだけ有り余ってる奴はいらないんだよなぁ、しかも族長だしなぁ。

「……参加を許可できるのは追撃部隊の一員としてですよ?」

 それを聞き、族長は二つ返事で受ける。

「問題ない、任せておけ」

 族長ならもっと違う仕事で活躍してほしいですが、人には向き不向きがあるから仕方ないですね。

「それではいってきます」

「ああ、いくのじゃ」

 アンたちに見送られて部屋を出る。アレンが黙って後ろをついてくる。

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