46作戦会議Ⅰ
「では作戦を説明します」
アンが老婆の姿から妙齢の女性の姿に変わったからこそ使える作戦の説明をする。決してロリババアを対象とした作戦ではありません。ロリババアじゃないですからね!
この場にいる全員が話を聞く体勢になっているか確認するために一同を見渡す。
アンは若返った姿のままで机に座っています。体が大きくなり服が合っていないため、スカートの裾の中が見えそうなので足は組まないでください。はしたないですよ。
アンの左右に座っている族長と補佐ゴブが真面目な顔つきをしている。自分たちの未来がかかっているので当然でしょう。
私の背後に座るアレンは私の話を聞き洩らさないように真剣な眼差しをしている。そんな姿見てたら、ふざけたくなりますね……あ、睨んできてる。バレたか。
「まずはじめに、前線より手前に城を作ります」
「「城?」」
アンはどうしてそんなものをと言ったニュアンスですが、族長は城がなにか知らない様子です。情報の格差社会。
「野戦ではなく、籠城戦でもする気かの?」
アンが城と聞いて考え付く作戦を上げる。
「いいえ、籠城はしません。空城の計を使います」
「ふむ、説明してみよ」
城は知っていても空城の計までは知りませんか。そういえばこのゲームの城がどんなものか知りませんね。城の形状も合わせて説明した方がいいか。
あと、オークが攻めてくる時期も聞いておかないと築城納期を決められませんね。あまりに短いようならたくさん首を飛ばさなくちゃいけませんね、物理的に。信長さんも吃驚しちゃう。
サクラがいたらツッコんだだろう。
「やめたげてよ!」
「知らない人もいるようなので、城の説明からしますね。
城というのは敵の攻撃を防ぐための建物です。
世界には様々な形の城が存在しますが、今回は単純なものを考えています。
ところで、オークの侵攻時期はわかりますか?
それによって城の形を正式に決めたいと思います」
私の説明と質問を聞き、アンは頷き、族長と補佐ゴブが互いを見る。
「オークの侵攻は1週間前後と予測しとるな。
今の前線は離れた場所から睨みあいを続けておる。
相手にはスーパーオークという奴がおるのじゃが、そやつがまだ後方におることが確認できとる。
そやつが前線に着くのが5日後の予定じゃ。到着後1日2日休憩してから攻めてくると考えておる」
ふむ、アンはオーク領に密偵を送り込んでいるのか思ったよりも情報が多い。私も気をつけておかないと後ろから刺されそうですね。
「わかりました。紙を下さい」
私が紙の催促をすると、補佐ゴブが先ほどの机セットを持って来てくれた。
紙に筆でさらさらり~。ほほいと築城予定図を描いていく。
「出来ました」
みんなが予定図を見るために机の周りを囲む。
「説明していきますね。
今回作る城は、複数の建物を城壁で囲んだものです。
まず、中央に広場を作ります。これは大勢が飲み食いするための場所です。
そして、広場を囲むように建物を作りますが、これは5棟ほどでいいです。材料は木材を使い、燃えやすくするのがポイントです。
5棟の概要は、武器庫、食糧庫、調理用の建物、上級兵舎、傷病兵舎を考えています。
次にこれらを囲む城壁です。石を積んで作ります。力づくで崩れず、燃えにくいことがポイントです。
高さはオーク5人分ほど。簡単に乗り越えられては意味がありませんから。
城壁には門を2か所作ります。作る場所は現地を見てみないと決められません。
概要は以上です。何か質問はありますか?」
説明が長くなったので、間に質疑応答タイムを入れてみる。質問があっても5分で打ち切る予定。
族長と補佐ゴブは話についてこれていない様子。
アンはっと……目を輝かせている。この陰謀好きめ。そういうの、嫌いじゃないですよ。
「質問したいことはあるが、話を全部聞けばわかるじゃろ? はよう続きを話せ」
アンが続きを催促してきた。質疑応答タイムは最後にした方がいいですか。失敗失敗。
「城の説明が終わったので、作戦について話していきます。
まず、現在の前線は捨てます」
「「はぁぁぁぁぁ?!」」
「黙れ」
「「ハッ!」」
族長と補佐ゴブが騒ぎだしたけど、即座にアンに注意された。
「話を続けます。
前線を下げるのにも理由があります。
前線を下げるのは相手を油断させるためです。これは後の作戦への布石です。
まず、前線は数日の間に少しずつ人数を減らしていきます。
さらに、毎日敵とぶつかり、わざと負けて引いていきます。
引きすぎてはダメです。あくまで徐々に引いていき、最終的に城へと誘導していきます。
城では会敵の日に備えて築城の準備をします。
築城予定図は先ほどの通りです。指定した建物に武具、食糧等を用意しておいてください。
この時の準備で最も大事なものは、大量の食事と酒、そして油と燃えるものです。
理由はこの後に説明します。
それでは空城の計を説明します。
空城の計とは、城の中を無人にして、門もすべて開け放って逃げる策です。
決戦日、まず、前線の部隊が敵の攻撃に耐えられずに潰走したフリをして逃げます。
この時にわざと城の前を通って逃げます。城に入る余裕もない雰囲気を出すのがポイントです。
城の中には勝利の祝い用に酒と料理を用意しておきます。
あくまで負ける予定はなく、勝つ予定で準備を進めます。
食料と酒は無駄になりますが、将来への投資と考えてください。
あと、アンを上級兵舎に置いておきます。
詳しくは後ほど。
ここで、敵の行動予測をします。
敵は数日間の勝利で気持ちと行動が大胆になっていきます。
さらに、スーパーオークの到着で一気に士気が高まります。
決戦日、ゴブリン軍を潰走させて気分が最高潮になり、思考がイケイケゴーゴー状態です。
敵の城、城を知らなければ大きい町を見つけたと大喜び、町の物を強奪し放題だぞ☆
町の入口は開いている、入り放題だ。
ちょっと賢い人は入るのを躊躇いますが、数の力に負けて入っちゃいます。
中には食事と酒の準備。まるで俺たちの勝利を祝っているみたいじゃないか。
戦争中だ、酒を飲んではダメだよ。
うるせい、敵は弱腰の弱兵だ。そんな奴らにビビる奴は臆病者だ。ほら酒だ、酒を飲め。
おい、こっちには女を見つけたぞ、みんなで可愛がってやろうぜ。
あはは、うふふ、おほほのほ。
話をゴブリン側に戻します。
潰走して敵が城に入った後です。
城の中にいるアンはゴブリンが勝利した祝いの宴に呼ばれたのに、1人置いて逃げられた設定です。
アンは怒り心頭でゴブリンなんてもう知らない。オーク様、私を可愛がってくださいと媚を売ります。
オークたちに酒をいっぱい飲ませて酔わせてください。
そのうち合図があったら逃げていいので、それまでがんばれ。自分で考えて生き延びろ。
次に進めます。
敵が酒で酔い潰れたら、城の門を閉じて中に火を放ち、中にいる敵を燃やしつくします。
ですが、敵にはスーパーオークがいます。下手に暴れられると困りますので、動きを制限します。
人は恐怖を感じた場合、無意識に来た道を戻りたがります。
オークが入るだろう門の周辺の火の手をわざと弱め、門もスーパーオークの力づくで開くようにします。
スーパーオークが門を破り、オーク数人を引き連れ、来た道を逃げます。
そこに、数日前から減らしておいた前線部隊を伏兵として待機させておいて迎撃します。
破られた門には別動隊を動かして再び門を閉じます。中の兵は蒸し鍋の具材です。
門を閉じ終えれば逃げた敵を追い、伏兵と挟撃します。
ここで確実にスーパーオークを仕留め、雑魚兵はわざと逃がします。
逃げた兵には今回のことを広めてもらい、敵を恐怖のどん底に叩き落とします。
説明は以上です。なにか質問はありますか?」
長い説明を終えて一同を見渡してみると、誰も話が出来ないような雰囲気になっている。
アンは考え込み、族長は呆然とし、補佐ゴブは恐怖に震え、アレンは頭の中を整理しているようだ。
うん、これはあれだ。
やりすぎちゃった☆




