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42薬草納品

「あいわかった。では、集めた薬草に対する報酬を与えよう」

 私がクエストの達成手続きのために訪れたことを聞き、アンが報酬の支払いを言い渡す。


「口約束を信じる者がいるとでも」

 既にゴブリン族から不義理を行われているので、わたし信用出来ませんアピール。

「かっかっか、お主の言う通りじゃの。誰か紙と筆を持て」

 紙と筆っていつの時代ですか。

 補佐ゴブが慌てて族長の家に入り、紙と筆とインク壺を乗せた机を持って帰ってきた。こいつ、出来るぞ!

 アンは筆を手に取り、インクを付けて紙に書き付ける。

「これでよいかの?」

 アンが書き上げた紙を手渡してきたので内容を確認する。


『クエスト依頼書 

 依頼人 アンリミット・フォン・ネーデルラント

 依頼内容 薬草採集

 依頼報酬 納品された薬草5枚につきSPを1与える

 受託者 ―(未記入)』


 あながち間違いではないですが、もうひとこえ付け足して欲しいですね。

「1つ追加してもらっていいですか?」

「うん? なんじゃ?」

 アンが不備があったかと尋ねてくる。

「依頼報酬に、上限なしって加えておいてください。受注時にアレンに確認して許可をいただいています」

 アンがアレンを見ると、アレンが頷いて肯定する。

「よかろう、追記しよう」

 アンが私から紙を受け取り、さらりと書いて戻してくる。

「……いいでしょう、問題ありません」

「ではこれで発注するぞ」

 アンが再度紙を受け取りなおして何かを唱えると、私の画面にクエスト受注完了が表示された。


 心も体も重かった旅に終りが見えてきた。……体重じゃないよ!?



◆◆◆◆◆



「では薬草を納品しますね。……どこに出せばいいですか?」

 アンに薬草を出す場所を確認する。出す場所に注意しないと大変なことになりますからね。

「その者に渡せばよいじゃろ」

 アンが適当にゴブリンを指名する。最近流行りの適当。

 指名されたゴブリンは「おれん?」と自分を指差している。

「いいですが、その人がどうなっても知りませんよ?」

 私は指名ゴブリンを見ながらアンに確認する。

「うん? なにを心配しておるのじゃ?」

 アンが不思議そうに首を傾げる。

「あー……」

 アレンが言いにくそうにしながら前に出てくる。周囲を見渡しながら机を一度見たが、諦めたように地面を指差す。

「そこらへんの地面に出せばいいんじゃねぇが」

「ふむ、わかりました」

 アイテムストレージを開いて、アイテム選択、ドラッグしてアレンの指差したあたりに決定っと。


 ドスン!


 薬草を取り出したら大きな音が周囲に響いた。高さを指定し忘れちゃったね。てへぺろ♪

 突然広場の中心に薬草の山が出現して、私とアレン以外の人たちが唖然と口を開いている。

「「「「なな、なんじゃこりゃあああああ」」」」

 一同騒然。一名天然。

「誰か殉職したんですか?」

 海パン刑事(デカ)ですかね。

「おめぇの薬草を持たされた奴は殉職しただろうな」

 私の独り言を聞き拾ったアレンが教えてくれる。

「なるほど、アレンは一人の命を救ったのですね」

 アレンがなんとも言えない表情をする。違いました?



「それで、クエストの結果はどうなんですか?」

 私は驚いたまま動かないアンに確認する。

 アンは慌てて言い募る。

「ばっ、こんな量の報酬を支払えるかい! 薬草100枚でSP1じゃ!」

 ふぅん、そんなこと言っちゃうんだー。族長と変わりませんね。

 私はジト目でアンを見つめ、視線で抗議する。

「うっ、そんな目で見ても負からんぞ!」

 ほほう、さっきと言っていることが違いますよ。現物を見てから態度を変えるのは商売人のすることじゃないですね。……商売人も現物を見てから決めますね。どこの先物取引ですか。フランスのチーズ? 銀行に担保っちゃう。

 どちらにしろ、契約違反は許しませんよ。


「はぁ……」

 私はため息をひとつ吐く。

「やっぱりクソババアはクソババアですね。そこで転がっている族長と変わりませんよ。

 一度交わしたクエストを反故(ほご)にしようとする、神様をも恐れぬ行為が本当にできると言えるなんて信じられませんね」

「うっ」

 アンが痛いところを突かれて口ごもる。

 周りのゴブリンたちもなんとも言えない顔で視線を彷徨(さまよ)わせる。

「おれん、転がってないよな?」

 族長が1人でアホなことを言っている。


「はぁ、やはり遠路はるばる来ても無駄足でしたね。

 人がどれだけの労力と時間を費やして集めたかも知らないで報酬内容を値切ろうとするんですから。

 これはもうあれですね。交渉決裂ですね。

 だって、クエストを正式に発行した後に難癖つけて報酬の割引を押し付けてくるんですもの、そんな相手を信用できるわけないですよね、な・い・で・す・よ・ねぇぇぇ?

 ゴブリン族の、いえ、アンリミット・フォン・ネーデルラントの信用が地に落ちたんじゃないですかぁ。

 ……そうだ! ゴブリン族と戦争しているんですから、オーク族にも薬草の需要があるでしょう。

 薬草全部オーク族に渡しましょうか。

 そうだ、それがいいですね」


 私は両掌を軽く合わせて、いい案が浮かんだぞっと表現する。


「「「「待てぇい!」」」」

 ゴブリンたちが慌てて必死の表情で止めに入る。

「待てって言われてもねぇ、長旅で休憩する間も惜しんでこの村まで来て、

 会った族長に約束を反故にされ、後から出てきたババアにも反故にされ、

 だいぶん待ったと思うんですけど結局これですよ?

 もう待つ必要も、薬草を渡す必要もないですよね?

 だって不義理を解消するって言って、更なる不義理、

 もはやゴブリン族とそこのババアの信用は地に落ちるどころかこの世に存在しないんじゃないですか?

 ねぇ、違います?」

「「「「ううっ」」」」

 ゴブリン汗汗、私ノリノリ。


「わ、わかった。儂が悪かった。報酬内容は最初の通りで頼む。な、それで問題ないじゃろ?」

 ニヤリ。

 アンが慌てて交渉を進めようとする。もしも決裂すれば、私はオークの元に行って大量の薬草を納品すると言うのだから、どうあっても決裂するわけにはいかないだろう。

 今まで散々人をバカにした態度を取っていたんですから、今度は自分で味わってみましょうね? 慣れるとおいしいですよぉ。


「いいえ、問題です」

「なんじゃと!?」

 私が否定するとは予想もしていなかったのか、アンが大きな声を上げて驚く。

「なぜならばその報酬はクエスト達成に対する正当な報酬ではありませんか。

 貴方たちに働かれた不義理に対する慰謝料を要求します」

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