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04産声を上げろ

 20年3月31日改訂

「昨日のお猿探偵はすごかったですね。

 まさか動物園の猿山に逃げ込んだ犯人猿を一発で見つけ出すなんて予想外です。

 いえ、私も顔のしわの本数の違いで4頭までは絞り込めたのですよ。まさか耳にある黒子(ほくろ)の位置で見分けることが出来たなんて慧眼(けいがん)です」


 今日のサクラとの話題はもちろん昨夜のドラマ談義です。女子高生には必須能力。私はお猿探偵の感想を熱弁します。

 ほら、サクラも私を尊敬の目で……いや、これは呆れた表情ですね。おかしい、そんなはずない。


「お猿の顔なんて知らないよ! しわの数なんて人間でも分からないよ!」

 おやおやサクラもまだまだですね、今度お猿さんの顔の違いについて伝授しなくてはいけません。

「いらんわ! それよりもどうしてゲームしてくれないの!?」

 おっと、それは言いがかりです。

「失礼な、ちゃんとアカウントは作成しました」

 サクラに嫌われたくないので、きちんと約束は守りますよ。ただ、時間が足りなかっただけです。ひとまずちゃんとプレイした(てい)で進めましょう。


「“は”って、アカウントしか作ってないってことでしょ!」

 おやおやサクラは賢いですね。賢い子は好きですよ。サクラは賢くなくても大好きですけど。

「騙されないよ。ちゃんとゲームもしてくれないと怒るよ」

 んん、ぷんぷん怒るサクラもかわいいです。

 ですが本当に私の責任ではないのですよ。責任があるとしたらゲームの運営会社でしょう。なにせキャラクター作成が複雑すぎるのです。慎重派の私がキャラ作成を終える為には1週間あっても足りないかもしれない。

 そうです、ここはサクラに相談してみましょう。


「サクラ、キャラクターのルックス作成で悩んでいるんだけど、サクラはどうやって決めたの?」

「キャラのルックス? うぅんそうだね……」

 サクラは目線を上にして熟考モードに入る。

「わたしのキャラはランダム作成で作ったよ」

「ランダム作成ですか……そんな項目ありました?」

 私の返事を聞き、サクラは「あー」と苦笑いする。

「ルックスのエディット(作成)画面の一番下の方に項目があったはずだから、じっくり上から見ていくハルミはまだ見つけてなかったかもね」

 なるほど、サクラは慧眼ですね。完全に盲点でした。さすがサクラ、私のことをわかってるぅ。



 さてさていいことを聞きました。これでキャラクター作成という呪縛から解放されます。

「では、今度確認してみますね」

 そう今度です。今日とは言いません。

「うん、ゲームのスタート地点で待ってるね」

 サクラは嬉しそうに言う。今日とは言ってないのに今日と勘違いしていそうです。ちゃんと伝えておく必要がありますね。

「残念ながら今日はできないの。潤と遊ぶ先約があるからごめんね」

 肩透(かたす)かしを食らったサクラですが、さすがに文句を言わない。

「むぅ、潤くんなら仕方ない。でも明日、明日はちゃんとやってよ!」

「ええ、約束です」

 

 ちなみに、潤とは弟の名前です。サクラとの交流は大事ですが、弟との交流も疎かにはできません。

 潤とサクラも仲良しで、昔からよく遊んでくれています。サクラは3人の兄がいますが弟妹がいないので、潤のことを本当の弟のように可愛がってくれる。

 そうだ、将来サクラが潤と結婚すればサクラは私の妹に……。

 おっとそんなことを考えてはいけませんね。サクラは私の親友なのですから。……今はまだ、ね。



◆◆◆◆◆



 やってきました約束の日。

 サクラとゲームをするという約束を守らなくてはいけません。

 制限時間が決まっているので急ぐ必要があります。

 さすがにサクラも私の楽しみを邪魔することはしない。今日はスペシャルドラマ「犬のお巡りさん殺人事件~困ってしまって1,2,3~」があるのです。タイトルを聞いただけで胸が躍り出しそうです。……踊るほどの胸が無いって言った奴は出てきなさい。


 そういえば、昨夜は弟の潤と落下パズルゲームをしました。

 9連鎖を組み立てる度に大事な部分におじゃまが降ってくるので一度も勝てませんでした……。姉より優れた弟なんてぇ!

 おっと取り乱してしまいました。

 その時にサクラとオンラインゲームをすることになった話をすると、弟もやりたいと食いついてきました。入れ食いです。

 だがしかし、心を鬼にして断固阻止。まだまだ未熟な弟にオンラインの世界は厳しいです。知らないお姉さんに誘われて、どこかに連れ去られてしまいそうですからね。リテラシーを身につけて中学生になってから始めましょう。



 先日途中で止めたためキャラクターの設定を再入力し、完全敗北したルックス作成に到着です。

 サクラの助言に従い画面をスクロールしていき、おっと行き過ぎるところでした。ランダム作成発見です。

 あの後サクラから聞いた話では、ランダム作成で複数のアンケートに答えていく必要があるそうです。その結果で作成されるのですが、自身と同じような内容を選択していくとリアルの自分に似たキャラクターが作成される場合が多いとのこと。コンピュータ技術はそこまで発展したんですね、すごいです。

 漫画キャラの特徴を入力していけばタミねーちゃんが作れそうですね。だだん、だん、だ、だん。


 さぁアンケートに答えていくぞー。

 性別は女……って何度入力させる気ですか!

 身長は……リアルな数字で155~160cmを選択。ちなみに私は155cmです。

 やはり身長の選択肢も細かくて多い。100cm未満から5cm刻みで増えていき、最長が230cm以上ってバスケット選手でもなかなかいませんよ。

 長い髪の毛に憧れる? ……イエス。リアルで髪が長いと洗髪や管理が大変なので、肩までしか伸ばす勇気を持てません。腰まで伸ばしている人に憧れますね。

 体型……普通、普通です! なんてアンケートが紛れているんですか。ぷんぷん



 ようやくアンケートがすべて終わりました……長かった。長すぎです!

 全部で50個以上あったんじゃないですか? 途中から洗脳かと思いましたよ。昔大量のアンケートを書かせる漫画を見た覚えがありますね。宇宙人発見だか超能力発掘の試験かなにかをさせられるやつ。

 はっ、私覚醒しちゃうんじゃ……。



◆◆◆◆◆



 やってきました、ブルプラ世界。

 そろそろ終了の時間が近づいてきましたので、オープニングについてはまた後日。

 ブルプラ世界での第一声、つまりこの世界で生まれたばかりの私の産声。とても重要です。

 おぎゃあおぎゃあでは面白くないし、ここは世界に知らしめるためのセリフでないといけません。

 開始地点に設定された建物のドアを開けて、一歩外に踏み出す。

 さぁ、産声を上げろ!


「サクラ、アイラッビューーー!!!!」


 ……うん、何も反応がありません。そもそも外に誰もいませんでした。

 チャット欄にも私が発したコメントしかない。

 おかしい、サクラはスタート地点で待ってるって言っていたのに。


「サクラおらんうーたん(おらんやん)」

 無情にも私のコメントだけが流れていきます。



……10分後。


 ワンワン、ワンワン……にゃーん、にゃんにゃん……


 アラームが鳴りました。終了のお時間です。

 よし、ドラマを見に行きますよ。

 サクラにはドラマの時間を教え、キャラ作成が間に合わなければ諦めてと伝えているのでいいでしょう。

 そもそもアンケートがあんなに長いって、ちゃんと伝えていなかったサクラが悪いのです。

 

 しかし、ゲームをはじめてから数日経っているはずなのに、一度も冒険していない気がするのは気のせいでしょうか。

 謎と夜は深まるばかりです。

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