表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
38/53

38首村Ⅰ・洗礼

 オオグロ村を出て数十分、遠くに首村が見えてきた。

 道中で何度かモンスターと遭遇した。毛が青味がかった青犬(あおいぬ)(ひたい)(つの)が特徴の角兎(つのうさぎ)

 どちらもあまり強くなかったので、私が敵を状態異常にして、アレンが(とど)めを刺して倒した。即席パーティとはいえ満足のいく連携が取れた。

「おめぇの武器は訳わかんねぇな」

 戦闘が終わるたびにアレンが疲れた雰囲気でしたが、特に問題ないでしょう。



 そして首村に到着。

 さすが族長の住む村。オオグロ村と違って入口もしっかりしている。

 村の周囲を私ぐらいの高さの木柵で囲い、アレンの話では北と南に門があるそうだ。つまり私の目の前にあるのが北門ということですね。オオグロ村から南下して来て南門に着いたりしたら、どこでワープしたんだって話です。北辰衆も吃驚。

 村の門は日中は開けられていて、陽が完全に沈むと閉められるそうだ。夕方にオオグロ村を出発したため閉門ギリギリの時間になってしまい、少しだけ申し訳なく思わないでもない。


 門の前には兵士らしきゴブリンが2人立っている。

 アレンが門番に近づき、懐から紙を1枚取り出す。

「オオグロ村のアレンだ。この通り村長から許可は貰ってるだ。通してくんろ」

 門番の1人がアレンから紙を受け取って確認する。もう1人はこちらを興味深そうに見てくる。待っている間暇なので私も兵士を観察する。……この人はどうして顔を赤らめているんでしょうか。

「よし、通ってええど」

 門番がアレンに紙を返し、左右に避けてくれる。

 ふと疑問に思ったことをアレンに聞いてみる。

「すんなり通してもらえるもんなんですね。てっきり賄賂(わいろ)を渡さないと通れないかと思いましたよ」

 門番の2人が驚いた表情になる。

「おめぇな、何をバカなこと言ってんだ。門番の方々がそんなことする訳ねぇべ」

 アレンが呆れた表情になる。

 でも、2人の門番の目が泳いでいますよ。アレンは気づいていないようですが、あれは絶対図星を指された表情ですって。まぁ、そっとしておいてあげましょう。世の中には知らない方がいいこともあります。

「そうですか。ここの門番の人たちは偉いですね!」

 感心した表情で言っておく。

「んだ。人間の国じゃあ門番が賄賂を要求すんのか?」

 アレンが尋ね返してくる。会話のラリーるーれろー。

「国によりますね。腐敗した国であれば賄賂が当たり前、それ以外ではありませんよ。むしろ賄賂を要求した人物が罰される国の方が多いんじゃないでしょうか」

「そりゃそうだろうな」

 門番たちも「うんうん」と頷いている。さっきの表情を見た後では台無しですよ。

「とりあえず入るべ」

「ええ」

 私とアレンは門を抜けて村に入る。



◆◆◆◆◆



 首村の建物はオオグロ村と違い、どれも大きな建物で10軒ほど建っている。

 ゴブリン領全部の村から集まった人たちで構成されているので、小さいな家は必要とせず、大きな建物で集団生活しているのだろう。

「族長の家は村の中央にあんだ」

 アレンはそう言って歩き出したので、私も後ろをついて行く。

 やっぱり族長の家も村の中心部なのですか。偉い人は中央に集まりたがりますね。その方が都合がいいのでしょうね。

 村の中にはゴブリンがところどころいる。もうすぐ夜になるので仕事が終わって休んでいる人たちでしょうか。人間が珍しいのかチラチラとこちらを見てくる。視線が鬱陶(うっとう)しいので、アレンがいなければ暴れていましたね。


「あれが族長の家だ」

 アレンが指さした建物を見ると、周りの建物よりも少し小ぢんまりとしているけれど、柱などに施された細工が他の建物よりも立派に見える。

 アレンと一緒に建物に近づくと、

「よぉ、アレンじゃねぇが」

 誰かに声をかけられた。

 振り向くとゴブリンが3人立っていた。

「こんなとこで何してんだ?」

 真ん中の偉そうなゴブリンが話す。他の2人は立ち位置が少し下がっているので子分だろうか。

「よぉカンベ、久し振りだな」

 アレンが相手に挨拶を返す。

(カンベ……カンベ……神戸(かんべ)……神戸(こうべ)!? アレンとコービー? 二大巨頭勢ぞろいじゃないですか!?)

 私は真顔で1人変なことを考えていた。


「おいおい、おれんはここで何してんだっで聞いてんだ。ここはおめぇのような奴が来るようなとこじゃねぇど」

 コービーいやカンベが横柄な態度で言う。この2人には何か確執があるのだろうか。角質は確実にあるだろう。

「ああ、用事があるから来たに決まってんべ」

 アレンは普段と変わらない様子で返事をする。カンベの一方通行な確執ですか。まさかの片思い。

「んで、どして人間を連れて来だ」

 カンベが私を横目に見て言う。これが恋敵(こいがたき)に対する態度ってやつですかね。私とアレンはそういう関係じゃないので別の相手に向けてください。

「んだ、こいつ関係の用事で来たでな、連れてこん方がおかしいだろ」

 アレン空気読んで。

「がははは、おめぇいつから人間の使いっパシリになってやがんだ。みじめなもんだな。

 それともなんだ? おめぇがどっかから(さら)ってきた奴隷が? そんならおれんもおめぇのことを見直してやるよ。がははははは」

 惜しい! そこは見直してじゃなく、()れ直すですよ!

 左右の子分たちも一緒に「「がはははは」」と笑う。仲がいいですね。


「おい」

 アレンが拳を握り締めて言う。

「おれんのことをバカにすんのはええがな、こいつをバカにすんなら許さねぇど」

 アレン、それを言う相手は彼にですよ! 私に言ったら相手が嫉妬(しっと)の炎に狂っちゃう。

「がはははは、おめぇ人間を(かば)うのが? ゴブリンが人間を庇ってどうすんべ。

 襲うことはあっても庇うなんてありえねぇ。おめぇこそおれんたちをバカにしてんじゃねぇのが?」

 カンベの話を聞き、アレンは首を左右に振る。処置不能といったところですか。

「おめぇ、バカにしてんな!」

 アレンの態度を見てカンベが怒りだす。

「オニール、あの女をやっちまえ」

 カンベが右の子分に指示を出す。

(ハック・ア・シャック!)

 私は狙われていることをわかりながらふざける。今はそういう場面だから!

 指示されたオニールが近づきながら腰にぶら下げた棍棒を手に取り、私に向かって振り下ろす。

 すかさずアレンが前に出て、剣の腹で受け流しながら勢いを止める。

(知ってた)

 私の安全を保障したアレンが動かないわけがない。見知らぬ村で下手(へた)に私が動くより、勝手を知るアレンに任せた方がいい。

「へっ、庇うのが?」

 オニールがアレンに言う。

「客人に襲い掛かるおめぇらの方がどうかしてんど」

 アレンが正論を言い、オニールの腰が引ける。

「ルゥ、奴は手がふさがってる。女がガラ空きだど」

 カンベがもう1人の子分に指示する。

「ルゥ監督ちぃぃぃっす」

 監督には挨拶を欠かすわけにいかない。

「?!」

 突然、今まで一言もしゃべらなかった私に声をかけられ、ルゥは驚いて立ち止まってしまう。


「おめぇら騒がしいぞ、なにしてる!」

 誰かが騒ぎを聞きつけて声をかけてきた。

 声のした方を見ると族長の家の玄関が開いていて、そこにアレンたちより老け顔の大人ゴブリンが1人で立っている。

 大人ゴブリンの声を聞いて、アレンとオニールも武器を納める。

 大人ゴブリンは一同を見渡す。

「カンベとアレンは中に入れ、説明してもらうぞ」

 アレンとカンベはそれを聞いて肩を(すく)める。あら息ぴったりですね。


 大人ゴブリンは背中を見せて家に入り、カンベもそれに続く。子分たちは帰るのか、どこかに歩き去る。

 続けてアレンも家の中に入ろうとするので、私は手を振って見送る。

「……おめぇもくんだぞ」

 アレンが振り向いて言う。

「あらやだ、私はお呼びじゃございませんよ」

 大人ゴブリンの呼び出しに私は含まれていない。喧嘩の事情聴取なんかで時間を無駄にしたくない。

「おめぇ、用事を忘れてないが?」

「もちろん覚えてますよ」

 薬草を納品してSPを受け取る。それ以外は場の流れによってですね。

「んだから、その話も一緒にすっからついて来い」

 仕方ないですね。

 私は肩を竦めたあと、アレンの後ろについて家に入る。



 はじめての町で不良に絡まれる洗礼は終わったので、次は道の曲がり角でパンを(くわ)えた少女と激突ですか。難易度が高いですね。

 ゴブリンの村は道もあまり整備されていませんし、建物の建つ間隔が空いているので道の曲がり角というシチュエーションを作るのが難しい。もっと都会で目指しましょう。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ