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03キャラクター作成で1日は終わる

 20年3月31日改訂

「どうしてゲームしてくれないの!?」

 翌日、待ち合わせ場所に来たサクラが挨拶もせずに言う。

 サクラは時間にルーズなので待ち合わせ場所にはいつも私が先に着いている。

 私は10分前には目的地に着いていないと落ち着かない性格なのだ。いつ何が起こるかわからないから5分前行動なんてぬるま湯すぎる。

 そんなことよりもサクラにはちゃんと言っておかないと。


「おはようサクラ、きちんと挨拶しなさいと何度言えばわかるのかしら」

 サクラがギクリと固まる。挨拶は1日の始まりと長年サクラの体に教え込んでいます。挨拶はとても重要な儀式ですからね。

「お、おはようハルミ、今日もいい天気だね」

 うん、今日は曇りだけど、晴れが良かったり雨が良かったりは人それぞれだから、曇りがいい天気でもいいでしょう。ちなみに私はぽかぽか陽気の日が好きです。春生まれだからでしょうか。


「それでハルミ、どうして一緒にゲームしてくれないの?」

 やはり誤魔化されなかったか。まぁ、こんなことで誤魔化されるような子じゃないことは知っています。ただ挨拶を大事にしたかっただけですとも。

 返答せずにいると、サクラが「なんでなんで」と鬱陶(うっとう)しくなってくる。子供か! ……15歳だからまだまだ子供でしたね。

 とりあえず今言わなくてはいけないことは、

「サクラ、そろそろ学校に行きますよ」

 私に言われて立ち止まったままだったことに気づき、サクラが私の手をとって走り出す。

「ほらハルミ、急がないと遅刻しちゃうよ」

 原因はサクラだけどね。

 時間的にはまだまだ余裕ですが、油断するとすぐに電車が遅れたり止まったりするので気をつけないといけない。



◆◆◆◆◆



 案の定電車が止まりました。今日は信号トラブルらしい。ちくせう。

 まだだ、まだ始業まで1時間ある! 余裕をもって動くって素晴らしい。

 電車は動いてないじゃんって? うるさいわい!


 動かない電車の中でできることなんて限られる。

 電車内を見渡してみると、スマホをいじる人や本などを読む人、目を閉じて何を考えているかわからない人……あ、寝てますね。そして知人と会話している人、私たちも最後の部類。大声さえ出さなければ問題ありません。急に叫びだすわけでもないですし、電車の中で愛は叫ばない。


 もちろん話題はゲームの話。サクラがしつこく(から)んでくる。

 サクラはとてもいい子です。困った人がいたら助けたい、人が嫌がることはしたくないしさせたくない。ただ、私にだけはとことん甘えてくる。可愛(かわい)いでしょ。

 それにしても、

「しよ」、「やだ」

「しよ」、「ムリ」

 のラリーもそろそろ終わりにした方がいいでしょう。サクラが音を上げて()ねてしまいそうです。サクラの拗ね顔もハムスターみたいで可愛いんですけどね。

「ねぇしようよー、ねぇってばー」

 サクラが私の肩を掴んで体ごと揺すってくる。電車が止まっているとはいえ、立ってる時に揺らさないで欲しい。止まってる電車の中で暴れると電車が揺れちゃうでしょ。周りの人に迷惑をかけますよ。

 そろそろサクラに譲ってあげますか。


「仕方ないわね。今日時間があればやってみる」

 私は押しに負けて「やれやれ」といった態度を押し隠さない。はっきりとアピールします。

「しよう、って、ば……」

 サクラは私の譲歩にすぐ反応できなかったが、理解するととびきりの笑顔になり、

「ハルミ大好き!」

 抱きついてきた。

 うむ、可愛いやつめ。ただ、少しは周囲の目を気にしようか、ちょっと恥ずかしいよ。

 それにほら、ちょうど電車も動き出したからちゃんと立って。抱き合ってると危ないでしょ。


 その後、学校で別れるまでサクラはご機嫌さんだった。



◆◆◆◆◆



 夜、一日の用事を全て終えた後、自由を満喫(まんきつ)できる時間。

 だが、今日は自由を阻害される。ゲームを一緒にしたいというサクラのおねだりを叶えなくてはならないからだ。


 ゲームを始める前にスマホのアラームをセットする。

 20時から連続ドラマ『お猿探偵シリーズ 湯けむり温泉殺人事件パート3』がはじまるので、タイムオーバーは許されない。

 先週の放送では、お猿探偵が犯人の猿を追い込んだのに、崖を駆け降りて逃げられて終わったので、続きがすごく気になっている。もう犯人わかってるじゃんとかツッコんではいけない。


 おっと、ドラマの考察を始めると時間がなくなってしまう。早速アカウントの作成から始めなければ。

 まずは名前と生年月日、性別を入力。そして住所と電話番号はスルー、メールアドレスは変更しやすいアドレスを入力っと。

 全部の項目に入力しろって? 嫌ですよ、必須項目以外は登録したくありません。どこで情報流出するかわからないのに、必要のない情報を出す必要はありません。用心するに越したことはない。

 名前と生年月日も誤魔化しようはあるけれど、これらの流出は諦めている。どこからでも流失しますからね。どうして進研ゼミから名指しで勧誘が届くのか不思議ですよね。



 続いてキャラクター作成。名前は『ハルミ』でいいでしょう。サクラと遊ぶ為なんだからこれ以外に名前の候補はない。ハルミ=実春わたしってわかる人もゲーム内にはいないでしょう。

 続いて性別は『女性』っと。わざわざ性別を変えてプレイする必要もない。ゲーム内でキャラ立てするのも面倒です。異性のフリして遊ぶのもロールプレイングの一種ですが、私は興味がないです。

 

 そして、このゲームで重要な選択になりそうな種族選択。

 これが難しい。種族毎に初期能力や成長値が違うようだ。


 『人間』は能力や特性が平均的。

 『エルフ』と『ハーフエルフ』は打たれ弱くて魔法が強い。

 反対に『ドワーフ』は打たれ強くて魔法に弱い。

 『小人族』は素早くて器用。

 『獣人』はケモ耳が特徴。なお獣人と一括(ひとくく)りにされていても、多種多様のケモ耳が存在するみたい。

 『魔族』と『神族』はよくわからない。色々と高性能みたいだけど、そもそも種族と言える存在なのか?

 『竜人』は初期値が高いけど成長値が残念といった感じ。


 うーん悩ましい。これといった種族に思い入れもないし、正直どれでもいいんですよね。サクラの種族を聞いておくんだった。もう人間でいいか。

 世界観的に普通の人間は希少価値のある存在かもしれない。強化人間が横行する世界で普通の人間は人気ないでしょう。みんな強さに憧れるよね。うるあぁぁぁ、俺は人間にするぞ、上々(じょうじょう)

 残るはルックス、つまりキャラクターの容姿の作成だ。初対面の印象は見た目が9割とも言われるし、見た目は大事だ。どれどれうむむ。


 細かい、細かすぎる。

 頭からつま先まで各部を設定できるのはわかる。

 髪型の選択肢が豊富なのも魅力的だ。

 だがなぜ頭部のハゲ方まで十種類近くもあるの? M字ハゲ、U字ハゲ、バーコードハゲ、エトセトラ……ハゲてる人をリスペクトしてるの? まぁ人間だれしも毎日たくさんの毛が抜けるので仕方ないですが、レパートリーが多すぎるような……。

 とりあえず私はその選択肢を除外する! まだそのジャンルを受け入れられる域には達していない。



 うぅん、上から一つ一つ全部の選択肢を見ていたら、どれだけ時間があっても足りない。それに……。

 

 ワンワン、ワンワン……にゃーん、にゃんにゃん……


 アラームが鳴りだした。ゲーム終了のお時間です、当店延長は承りません。

 アラームがおかしい? かわいいからいいんだよ。止めずにいたら徐々に凶暴な動物の鳴き声になるので、早く止めないと大音量になります。数分後には虎が鳴き出して近所迷惑に……いや、すぐに止めるので心配ありませんけど。


 パソコンの電源を落としてっと。

「今日はいっぱいゲームをしたので少し疲れましたね」

 肩をぐるりと回して(ほぐ)す。


「いや、キャラクターすら完成してないよね!」

 どこからかサクラのツッコミが聞こえそうです。


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