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19森の美少女・前編

 初の、ハルミやサクラとは違う視点から見た物語です。

 ハルミの関係者以外から見たハルミが、どのように見えるのかを表現できていればいいなと思います。

 俺の名前はジークロット。ジークフリートとランスロットの名前を参考にしてつけたんだ。かっこいいだろ?

 元の名前はダサいので捨てた。聞かないでくれ。10数年間名前でいじられるやつの気持ちがわかるか? つまり、そういうことだ。

 俺は17歳。男子校に通う高校2年生だ。中2ではない。

 男子校ではみなが女子に()えている。なにせ見渡す限り男ばかり。数少ない女性は年配の女性教師とおばあちゃん教師(せんせい)だけ。保健教諭も男……夢も希望もなくて泣けてきた。


 とにかく! 俺たちは女性との出会いを欲しているのだ。

 そして俺は地獄からおさらばするために、ネットゲームに出会いを求めることにした。街に出ても女性に話しかける技術がないからだ。断じて勇気がないわけではない。

 考えてみてほしい、普段会話しているのが自分の母親だけ。見知らぬ女性に話しかけるような若い人向けの共通の話題がないのだ。もうこうなったら先に共通の話題を作るしかない。そう、ゲームだ。お互い同じゲームをしていれば確実にそのゲームの話題ができる。俺って天才か。


 そういう訳で、俺はこの『神の記憶(ゴズメモ)』を始めた。

 このゲームに決めた理由? ネット記事を見ていた時にこのゲームについて書かれた記事と運命的出会いをして、女性のプレイヤーが多いと知ったからだ。

 安直すぎるって? だって何から手を出していいかわかんないんだもん。仕方ないじゃん。



 そしてキャラクター作成。

 設定できる項目がなかなか多くて手間取ったが、なかなかかっこいいキャラが完成した。自信作だ。

 よし冒険を始めよう。



 長かった。オープニング長かった。

 でも、予想以上のグラフィックの良さに感動した。このゲームは期待できそうだ。


 チュートリアルを進めるために教会を出て村長の家に向かう。

 なになに……教会に行って薬をもらって来い? さっきの神父、先に渡しといてくれよ。

 教会に戻り次は森へ行けと言われる。

 森へは村の東にある入口を出るようだ。早速行ってみよう。



 チュートリアルが終わった。

 割と長かった。一度に詰め込まれても全部覚えれた気がしない。後は慣れと直感でプレイするしかないだろう。


 チュートリアル中に職業選択があった。

 俺は迷わず剣士を選ぶ。もちろん理由はかっこいいからだ。

 女の子の前に立って守りながら、剣を振り回して敵を倒す。いずれ魔王も倒してみせる。

 男が魔法使いやレンジャーなんてダサすぎる。男は黙って剣一本で勝負だ。



◆◆◆◆◆



 よし、いよいよ冒険の始まりだ。

 訓練所でいくつかのクエストを受領して森に向かう。

 森に入ると、入ってすぐのフィールドに一人の少女がいた。

 少女は俺には気づかず、いくつかの草むらを回って何かを探している。

 困っている人を見かけたら手伝うのが人として当然の行動だ。相手が女性ならなおのこと。

 いっちょ声をかけてみますか。そしてこの出会いからいずれは深い仲になれれば、うへへ。



「あ、あの……、こんなところでどうしたんでちゅか?」

 噛んじゃった。恥ずかしい。やり直したい。


 少女は作業をやめて俺の方を見てくる。おっ、すごくかわいい。

 身長は俺より30cmほど低くてとても小柄だ。ぱっと見た感じでは俺と同じ人間のようだが、並んだ状態を見たら巨人族と小人族に見えてもおかしくないだろう。

 黒髪は前髪をおかっぱにして、後ろ髪は一つに(くく)り腰までの長さがある。

 優しげな眼差し、引き結ばれた柔らかそうな唇、指でなぞりたくなる丸みを帯びた顔の輪郭。

 胸は……子供だから仕方ない。将来に期待しよう。おっと、なんだか痛い視線が。

 服装はローブを(まと)い革靴を()いている。武器は持っていないが見た感じ魔法職だろう。

 どこをとっても美少女。ザ・美少女。これはお近づきになりたい。

 俺の学校で不定期に開催される「街角美人コンテスト」でも、間違いなくトップ3に入るレベルだ。

 ちなみに俺の一番の推しは駅前の本屋で働いている大学生ぐらいのお姉さんだ。美人でスタイルが良く、優しくて親切な働きもの。完璧な女性だ。


 は? 目の前の少女の中身がおっさんからもしれないだろって? いいんだよ。それは知り合ってから判断することだ。

 このゲームにはルックスのランダム作成があり、アンケートの結果でキャラの見た目が作られるそうだ。本人と同じような回答をしていくと、本人似のキャラが作成されるらしい。それで、自分と同じ見た目のキャラを作って遊ぶ女性が増えているそうだ。ネット記事に書いてあった。

 だからこの子もリアルですごい美少女かもしれない、うん、きっとそうだ。この機会を(のが)すわけにはいかない。



 少女が上目遣いに俺を見てくる。かわいい。

「薬草を探しているのですが、なかなか見つからないのです」

 え? 薬草? 簡単に見つからない?

「へー、そうなんだ。よかったら手伝おうか?」

 お近づきのチャンス。

「本当ですか!? やった、うれしいです」

 少女が胸の前で両手を組んで喜ぶ。かわいすぎんだろ。

「俺はジークロットっていうんだ。君は?」

 すかさず自己紹介。キャラの図上に名前が出ているが気にしない。

「私ですか? 私はハルミと申します」

 おぉう、お嬢様言葉。これは期待が高まる。


「よかったらパーティを組まないか?」

 パーティを組んだことはないが、訓練所で説明を受けた。

「パーティですか?」

 ハルミが若干躊躇(ためら)う。強引過ぎたか。

「別に無理にとは言わないよ。パーティを組んだ方が楽かなって思ってさ、はは」

 それを聞いてハルミはホッと息を吐く。

「そうですか? それならソロ同士でお願いします。

 パーティを組むと1パーティで1回ずつしか1つの草むらの採集ができないので、効率が悪いんです。

 最悪、村と森の往復を何十往復もすることになります。

 この森の草むらは一度採集した後に、もう一度森に入りなおしたらアイテムが復活するので親切なんですよ」


 よかった。嫌われたわけではないようだ。

 ……しかし、なんだか不穏な言葉が。

「村と森を何十往復って、どれだけの数が必要なの?」

「100個です」

 ……は?

「今、何個って?」

「100個です」

 オーケー、聞き間違いではなかったようだ。

「けっこう必要なんだね?」

「えぇ、ちょっと病気の人のために必要でして」

 ほう、なんて優しい子なんだ。

「わかった、一緒に探すよ。まかせておいて!」

「わっ、ありがとうございます」



◆◆◆◆◆



 5分後。

 俺はハルミと一緒に草むらのアイテムを採集し、森の中で整備された道を一回(ひとまわ)りして出会った場所に戻ってきた。

 途中2度ほど狼と遭遇して、(おび)えるハルミを背後に(かば)いながら勇敢に戦った。好感度がうなぎ登りだろう。



「結構採れたね。いくつぐらいになった?」

 俺はハルミに薬草の数を確認する。

「2つです」

「2つぅ?」

 驚きだ、意味が分からない。

「俺、全部で15個みつけたよ!」

 俺の個数を聞いてハルミが目を輝かせる。

「す、すごいです!」

 ふふん、高評価を貰えたようだ。

「じゃあ、あと10周回ったら100個達成ですね!」

 え、そうかな?

「1回で15個みつかったんだから、あと7回ぐらいで揃うんじゃない?」

 ハルミは首を左右に振る。

「毎周同じ数が見つかるとは限りませんし、計画は余裕を持って見積もった方がいいんです」

 ずっと薬草を集めていたらしいハルミが言うならそうなのだろう。

「じゃあ、次いこっか?」

「はい!」

 ハルミは元気に返事をして俺についてきた。俺、頼れる男みたい。


 この時の俺は気づいていなかった。一周で集める数にハルミが採集した数を足していないことを……。



 1時間後。

 途中で目標の数に達成したが、採集の効率があがったことと薬草を見つける喜び、ハルミの尊敬のまなざしにつられてテンションが上がり、その後も作業を続けた。

 結果、300個近い薬草の草束(?)をハルミにプレゼントすることができた。

 プレゼントを貰った時のハルミの笑顔は一生忘れないだろう。まじでかわいかった。



 別れ際にフレンド申請を申し込んでみた。

 フレンドになればいつでも連絡が取れて、簡単に再会することができる。

 だが、

「今はまだ考えられません。親友のサクラにも簡単に知らない人をフレンド登録しちゃいけないって言われているんです」

 と断られた。まぁ、仕方ないだろう。

「私はまだ数日の間ここで薬草採集を続けていますので、またお会いした時はお願いします」

 ハルミはそう言うと頬を染めて、森の中へ走り去っていった。


 ……やったー! これは来た! 来たでー。わが世の春が来たー!

 再開の約束ともとれる返事。頬を染めていたのは恥ずかしかったからだろう。これは交際の成功を期待してしまう。

 それに親友のサクラちゃんも女の子なのだろう。ハルミともっと親しくなり、フレンドになった後のことを想像すると胸が熱くなる。これが恋なのか。

「しゃー!」

 うれしくなってガッツポーズしてしまう。



 俺は森に背を向けて村に向かう。

 一度ログアウトして休憩しよう。さすがに1時間も同じ作業を続けていたから疲れが溜まっている。

 一日はまだまだ長い。


 後編につづく。

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