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13ハルミの野望

 20年4月2日改訂

「ではでは、サクラのSP講座~」

「ぱちぱちぱちー」

 サクラが私の横に立ち、PC画面を指差しながら説明できる体勢をとる。

 近くにいるサクラの匂いを()ごうとしましたが、無臭だ。

 いや、乾燥して鼻が詰まり、鼻が利かなくなってるみたいですね。無念だ。



「ハルミくん、SPと聞いて何を思い浮かべますか?」

 ふむ、SPですか。

「重要人物の護衛にあたる警官さん」

「言うと思ったけど、違います」

 サクラの期待は裏切りません。お蜜柑(みかん)さん食べていいですか。


「ゴズメモ世界でのSPとは……エスピーなのです!」

「……は?」

「いや、本当なの。公式設定でもSP(エスピー)としか呼ばれてなくて、プレイヤーの中の有志が製作者のコメント等から推測した考察でも、スキルポイントかステータスポイント、スペシャルポイントの略語、もしくはそれら全ての意味を込めてSPって呼ばれてる。というのが最新の定説なの」

 ……なるほどわからん。


「つまり、……製作者の優柔不断?」

 サクラは苦笑いで首を(かし)げる。

「わからないけど、そう言われても仕方ないと思う」

 うん、運営者出て来い、ってやつだね。

「ちなみに、ゴズメモの製作陣はほとんど一人の人の名前で、その人も顔だしNG(エヌジー)。ネット記事やコラムでぐらいしか姿を見せない不思議な人なの」

 ふーん。それ、姿を見せてるっていうのかな?


「そんな怪しい人物が作ったゲームをさせてたんですか!?」

「配信元は大手だよ!」

 そうですか、……大手でも零細でも信頼度は個々の努力に()るので、今は棚に上げましょう。後でちゃんと調べなければ。


「とりあえず説明の続きするよ」

 どうぞどうぞ。



「SPがスキルポイントやステータスポイントと呼ばれるのには由来があるんだけど、まずはこのゲームのレベル概念について説明したいと思います」

 ふむふむ。

「このゲームでは、キャラクター自体にレベルはありません。レベルの概念があるのはジョブやスキルだけで、それぞれSPを割り振ることで上がっていき、ステータスがあがったり、スキルの強化、新しいスキルの取得ができます」

 なるほど。


「また、ジョブのレベルが上がると、より上級のジョブに転職できたり、転職後のジョブにスキルを引き継げたりします」

 それで。


「さっきキャラ自体にはレベルの概念がないって説明したでしょ。ならステータスはどう上がるのかというと、基礎ステータスはSPで上げることができます。そのほか、武器やスキル(バフ)等で上がります」

 ばぶー。


「以上を持ちまして、SPはとても重要なのです!」

 その心は?

「SPはクエストなどをクリアーしないと手に入りません! 無駄遣い厳禁です!」

 サクラは無駄遣いしちゃったんですね。

「はじめたばかりの頃にね……。今は振りなおしできるアイテムがあるから、振り間違えても割と修正が()くけどね」

 ご利用は計画的に。



◆◆◆◆◆



「それで、SPは使えばいいんですか? 温存ですか?」

「最初は気にせず使って。キャラを育てないと先に進めないね」

 そうですか。

「この村でスローライフを満喫(まんきつ)するのもいいかもしれませんね」

「先に進もうよ! わたしは田舎暮らしに耐えられないよ!」

 そうですか。釣りをしながら読書とか楽しいですよ。

「それはリアルでやりなさい」

 それもそうですね。

「では、SPをなにに振るか考えますか」

「そうだね」



「普通の人は、最初はスキルレベルを上げて、次にジョブレベルを上げるのが定石(じょうせき)だよ」

 なるほど、人真似は面白くないのでステータスを上げましょう。

「ハルミならそう言うと思ったよ」

 さすがサクラ。結婚しましょう。

「法律で禁止されています」

 残念。認められている国に移住しますか。


「とりあえずメニュー画面開いて、SPを割り振る画面にして」

 はいはいー。

「ステータスについて説明するよ」



「サクラのステータス講座開幕~」

 ゴズメモのステータスは外面(がいめん)系5つ、内面(ないめん)系5つの合計10個あります。

 まず外面に関するもの。

 STRはストレングス、生命力つまりライフ。ライフゲージの総量だよ。最重要ステだね。

 OFFはオフェンスの略で物理攻撃力。

 DEFはディフェンス、物理防御力。

 QUIはクイックネス、速さ。行動スピードだけでなく、命中や回避率等にも影響があるよ。

 VIRはバイタリティ、筋力値とも言われアイテム・ストレージ数や装備可能重量などに影響するよ。


 次に内面に関するもの。

 MAPは地図じゃないよ、マジカル・パワーでマジックゲージの総量だね。

 INTはインテリジェンス、魔法攻撃力。

 MISは精神って感じ、魔法防御力。

 CLEは器用、アイテムやスキルに影響があったりなかったり。

 最後のLUCはラック、運。効果の程は謎に包まれてるよ。



「運んんんんん?」

「うん」

 おいおいおいおい。

「運が上がるんですか? 運が良くなるんですか?」

「う、うん」

 私のハイテンションについてこれず、サクラが若干引いています。


「最高じゃないですかーーー。勝てる、これで勝てる、私、運がよくなる!」

 ついにわが世の春がきました! 今まで運が悪くて散々な目に遭って来ましたが、このキャラ()の運を上げれば、私の運の悪さに左右されず、ゴズメモ(この)世界では運の良い人間になれる!


「でも、運って、上げてもあまり実感のあるものじゃないよ?」

 サクラが水を差します。花に差してあげてください。


「私、これがいい」

 上目づかいでサクラを見ます。

「リアルのハルミの運が良くなるわけじゃないよ?」

「知ってるぅ」

 サクラがため息をつきます。

「……好きにしなさい」

「やったー、サクラ大好きー」

 サクラに抱きつきます。くんかくんかすーはーすーはー。

「ちょっとやめて! そもそもハルミのキャラなんだから、ハルミの好きなように育てればいいんだよ!」

 それもそうですね。とりあえずサクラの臀部の育成を……。

「触ったら絶交」

 おっと読まれたようですね。

 サクラから体を離して、椅子に戻ります。

「では、運を上げます」

 何事もなかったように進める私を、サクラはあきれた目で見る。

「ラック、アップ」

 ぽち。

「……数字があがった以外、なにも起こりませんね」

「ステータスが上がっただけだからね」


 ふむ、まぁいいでしょう。これで私の運は上がった。これから私はこのキャラ()の運を上げまくり、ゴズメモ界の幸運王になる!

 ハルミの野望は、ここから始まった。目指せ天下統一。



 現在のハルミのLUC 1

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