Episode 幕明 『レコレクション』
RECOLLECTION
老人は言った。
『ルカ、おまえの名前はルカだよ。怖がらなくていい。大丈夫、ひとりじゃない。おまえはきっと宝を得られる。どうか、人間と寄り添って、見守ってくれないかい?』
彼はしわの彫られた大きな手で、僕の頭を撫でた。
これは、彼と初めて会った夜にかけられた台詞だ。彼は僕に、名前と生きる意味をくれた。僕はきっと、その老人のことを好いていた。
銀髪の青年は言った。
『君はもう心配ない。だって、俺は君を知っているから。何があっても、きっと俺は君を見守るよ。ね、ルカ』
辺りが真っ白に光り輝く中で、彼は言った。
胸に響いて、痛くなる。大切な人の、大切なことば――。
老人は問うた。
『誰かのために、自分を犠牲にできるかい?』
銀髪の青年は答えた。
『それが誰かによるかなぁ』
『さすが、カロルだね。では、正直に話そう。ルカのことだよ。その本を見てほしい』
『……っ! これは』
『昔、話したことを憶えているね? 光の魔術師のことだ。それで、おまえの答えはどうだい?』
『迷うことはないよ。これは他でもない俺の役割だ。俺はルカに未来と希望と、少しでも過去をあげたい』
これは……僕の記憶? いや、ちがう。カロルの思い出だ。僕がたぐり寄せた、彼の記憶……。
そういえば、さっきのお話で僕は自分のことを「カロル」と呼ばせていた? と、いうことは……。彼への感謝か、それとも謝罪か。あるいは単なる憧れかもしれない――うーん、思い出せない。
けど、どんなに時が過ぎても、思うことはきっと同じなんだろうね。
さて、ここでお別れだ。僕はまた新しい記憶を探しに行くからね。
一つの物語が終わりを告げるとき、新たな物語が始まる。
いつの日か、またお目にかかれますように……キミは僕のことを憶えていてくれるかな?




