プロローグ & 0 Once upon a time...
プロローグ
昔々、ある村に美しい青髪の魔女がいました。彼女は――え、長いって?
まったく、しかたないなぁ……。
じゃあ、前置きは飛ばすよ。メインになるのは、その子どもたちだからね。
ん? 大丈夫なのかって? うん、平気平気、問題ないよ。
記録の整理は得意なのさ。
さて、ではじっくりとその話をしよう。哀しき人々のお話だ――。
*
とある王国、そこには二人の王子と一人の姫がいた。
三人とも、整った王の顔立ちをキッチリと受け継いでいる。
第一王子・ヘルハルトは容姿端麗、頭脳明晰とまさに理想的な王子だ。ふんわりとした金色の髪と緑色の瞳は、彼の高貴さと紳士らしさを漂わせていた。
三子目の姫・レイラも美しい金髪と翠瞳を持ち、上品で優しい印象を与えている。
そして、第二王子のフレディは最も目立つ存在であった。だが、理由はいい意味ではない。兄妹とは違う母親、生まれ育ち、髪の色……それらは、人々から蔑まれた。
「呪われた魔女の青髪」
「卑しい魔女の子」
その言葉の数々は、一つ一つ丁寧に、残酷に、彼の胸に刺さって傷つけていった。
――ああ、つらい。なにもかも。癒やされる憩いの時間さえ、僕には与えられないのか。
やがて彼は王宮から姿を消した。しかし、王国の日常は変わらず過ぎていく。
それから一週間が経つと、ある噂が町に流れ始めた。
「北の山に漆黒の城ができたらしいぞ」
「あれは呪われた城だ」
「そんなのありえない」
「城の主は、両目の色が違うんだって」
「左目は真っ赤な悪魔の目だと」
噂は様々な捉え方をされた。ある者は恐れ、ある者は興味を示さず、ある者は好奇心に駆られた。
あの事件が起こるまでは……。