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プロローグ2

研究員の女の名前は、ミミ・サザーランドらしい。

さっきのローレルの妹と言うことだと理解。


 僕のように作業中に覚醒するというのは意外だったらしい。脳波でも見てりゃわかるだろという話だが、自我があるかないかまでは分からないらしい。ミミは興奮した様子で話す。因みに…この感じはEだ。何がとは言わない。


 何でも聞いていいと言ったので、遠慮なく聞く。


「この目的は?」


「禁忌となっている死者の脳を再活性化し、義体に取り込ませる。その実験。うまく行った。ただ応用があまり効かないから彼方だけでしょう。被験者も。これ以上予算も降りないだろうし。全身の反応も良好。感覚機も正常に動作してる。よかった。マジで。」


「何で俺なんだ?」


「法。500年前から脳の再活性化は禁じられてる。」


「それを…それより前の脳を使えばいいと。」


「そう。あんたはサザーランド大学に残っていた。いい状態だったしな。そこに自我がしまわれてるとは思ってなかったから、活性させても木偶の坊みたいな様子だと思ってたけど。よく喋るし状況の読み込みも早いし。そうだな…あんた、私たちに対して敵意は抱いているけど、一過性のもの。そうだろ?」


 確かに当たっている。この状況は間違いなく異常だが心も体も適応している。それ故腕もまともに動かせる。疲れもない。

「俺は何でそこに冷凍パックされてたんだ?」


そう聞くと、ミミは驚いたようだった。


「知らん。お前が分からないならこっちもわからん。」


「は?」


「名前は?」


「蒼だ。」


「ソウ…と。ニホンゴで青か。青に頭を塗ってやろうか?」


「いいっす。遠慮しときます。」

クソダサい。人型のドラちゃんやんそれ。


 ミミはこちらをじっと見ている。座った状態のこの体と目線が合うから、身長は多分めっちゃちっちゃい。140程度しかない。


「そうか…これは…。」


 何やらパネルに向かって話だし、数分間が経った。


 手の平を動かして見る。

 元の手ではあり得ない角度まで曲がる。しかも手首は360°回った。指も微妙な角度を保つことはできる。反射速度も早い。これはすごい。


「フン。まあいいか。サザーランド大学の最新技術を使ったからな。凄いだろ。」


 ミミはドヤ顔をしているが残念ながら威厳はない。


「きみは言うほど過去にとらわれていないようだ。それならば、これからの話をしよう。これをやるから、着ろ。」


 ミミが僕にそこらへんに放ってあった軍服っぽいマントを手渡す。部屋の外へ出る。立ち上がり、足を動かして見る。足の感覚もしっかりしている。流石に足首は回らないが、シンプルな構造の割には早く走れそうだ。スプリングが入ってるからか常にトランポリンの上にいる様だった。


「我がサザーランド家はこの共和国の軍事を握る一族だ。当主のローラン爺は共和国軍統合部部長かつ共和国軍陸軍将軍だ。要は軍部のトップだ。国民協議会に議席も持つ。」


「この共和国は何処のあたりにあるんだ?」

「旧国名で言うアフガニスタンとパキスタン、それにタジキスタン、トルクメニスタン辺りだ。」


「まあ良くもこんな辺鄙な土地に」


「見ろ。」


 廊下に現れた大きな窓の外側には大都市が広がっていた。よく東京は一部分が都市で、あとはだんだんと建物が低くなってゆくと言われるが。東京の比ではない。都市が地平線まで続いている。小型のオスプレイのようなヘリがたくさん飛んでいる。地上も車で溢れている。

ヘリをよくみるとコクピットがない。

「あれはドローンか?」

「そうだ。中には貨物か客を載せている。事故が多発しているのはまあ問題だが…ひたすらに早いからな。輸送効率と…墜落率を加味してもあれが一番らしい。全くドローン管理局がテーセウス家の下になってからロクなことがない…。」


ミミがタバコを取り出し、ライターで火を起こす。


「私のアンティークだ。この建物はサザーランド家の物で、様々な施設を含んでいる。居住区画、研究所、各種運動場、学校、商業施設、それに軍の駐屯地まである。さっき研究室を荒らしに来たあのゴリラはそこに勤務している。それはさておき、大変な発展ぶりだろう。」

「ああ。意味がわからない。2000年代の紛争地帯とは思えない。」


記録によるとサザーランド・クライネルが2280年、この地に大軍勢を率い、この地を平定した。写真からみるにはアメリカ軍だろう。ストライカー装甲機動車とかっこいい戦車が並んでいる。非常に絵になっている。かっこええ。兵士もヘッドマウントディスプレイを付けている。かっこいい。小銃もプルパッブだ。何この未来兵士感。ただこれが過去というのが驚きだ。


「平定」とは、要は虐殺だった。一方的な蹂躙。幾たびもの交戦の後、広大な土地を手に入れた。この地のイスラム教徒は十分の一以下まで減ったらしい。そんなことが平気で言えるところからみると、過去の事と彼らは割り切っているらしい。


「日本は?」


「滅亡した。2079年の第一次核戦争では東京以外の都市が消えた。その後は分からない。今は何もかが支配しているらしいが…汚染地帯だ。誰も入ろうとしない。軍部も何十年か前に兵を派遣したが、東京で通信が、生体反応が途切れた。」


頭が真っ白になった。

ここが700年後と聞いてからある程度覚悟はしていたが。


「ふむ。そうだな。核戦争の情報は中々分からないのが事実だ。世界中に繋がった情報の糸が一気に解けたのだからな。」


「マジか…。」

帰還しようなどと考えていた自分がアホらしく感じた。


「諦めるな。先は長い…?」

ミミがタバコを落としかかとで消す。


 向かい側から来る男の様子がおかしい。服装はサラリーマン風だが、完全に上の空だ。ただその目は時折こちらを凝視しては下を向いたり、上を向いたりしている。


 ミミがポケットから銃を取り出す。廊下を警備していた軍人も異常を察知し小銃を向けた。


「動くな。」

兵士が動き続ける男の頭にレッドドットを当てる。そしてマイクから増援を要請した。

ミミが小声で僕に伝える。

「お前の体は頑丈だ。あの男が自爆しそうになったら私の前に出ろ。」

理不尽やんけ。


男の動きが不意に止まる。ゆっくり首が回る。

兵士は何発か銃弾を頭に打ち込んだ。が跳ね返り、そこらじゅうに飛ぶ。そして


頭が爆発した。


ガラスが割れ、兵士の体に穴が空く。僕は前に出てミミを守る。金属の破片はマントを穴だらけにしたが、殆ど無傷だ。血だらけの兵士の軍服が変形し、そこを覆う。


 兵士が 吹き飛ばされた体を立ち上げ、小銃を再度向ける。すると煙の中から何かが飛来し、兵士の首を切り裂いた。


 そう、爆発したのは首だけだった。


 体の部分が人型となり、拳銃を握っている。

歪な形をした機械がこちらに飛びかかってくる。

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