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モンテレイアの街にて  作者: 雅夢
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歴史 王国と帝国

少し遅れましたが第二話です。


歴史 王国と帝国


 ここでいきなりですが少し歴史の勉強をしましょう。

 大丈夫です、おそらくここは試験には出ませんから。


 帝歴1621年の時点で、私たちが暮らすアルカス地方で最も長い伝統を誇るのがアルカディス王国で、建国以来四百年の歴史を持っています。

 歴史は良いけど、何故最初に敵国の王国から?と疑問に思われる方が居るかも知れませんが、残念ながら帝国の歴史を語る上では王国の歴史を知ることが必須となっているのです。


 何しろ帝国が建国される百年前には現在の帝国領も王国の一部だったのですから。


 現在から遡ること約千年前(帝歴608年)、アルカス地方で覇を唱えていた巨大な帝国が滅亡しました、名前はアルカディス帝国、現在は私たちのアルカディス帝国と区別する為に現帝国建国以降は古代アルカディス帝国と呼称されている大帝国です。

 この大帝国の成立はそこから遡ること約六百年、現在使われている帝歴は古代アルカディス帝国建国を以って元年としていますから、成り立ちは六百八年前ということになります。

 アルカディス帝国滅亡後のアルカス地方には統一国家は生まれず群雄割拠の時代が続きました。

 この戦乱の時代に終止符を打ったのがアルカディス王国の開祖である、ハインツ・メルダート・アルカス、世に言われるハインツ大王でした。

 彼は古代アルカディス帝国に範をとり、強力な魔法士軍団を作り上げて周辺国を従わせて十年余りでアルカス地方を平定、統一して弱小だったローレン・アルカス王国を一大王国にまで育て上げた傑物でした。

帝歴1218年、アルカス地方統一の仕上げとして、ハインツ・メルダートはアルカス王国の名をアルカディス王国と改め自ら初代王ハインツ・メルダート・アルカディスとしました。


 その後三百年余りは、多少の波風や周辺国とのいざこざは有ったものの概ね太平の時代が続きいたといわれています。

 しかし、今から百年前の帝歴1541年王位継承絡む内戦の勃発により時代は大きく動くこととなりました。

 事の発端は帝歴の1538年に時の国王フランツ・カイレン三世が後継者を決めないまま急死したことに有りました、カイレン三世には後継者と成るべき男児が居ないことから貴族会議(門閥貴族により後継者選出会議)による後継者の選出は紛糾、最終的には前王の甥にあたるアナトリス・メルダートが次期王に選出されました。

 しかしながら、選出に時間を要し紛糾した事もあって国内でのしこりや蟠りは大きく国内外の有力勢力の対立が解消できないまま新王アナトリスは即位する事となりました。


 こうした王国内の対立と不協和音の発生は、周辺国による王国の内政に干渉する機会を与える結果となりました。

 この為、以後王国内では外部勢力の後押しを得た地方勢力の反乱が相次いだのです。

 こうした相次ぐ内戦の勃発は王国と王室の権威を失墜させ疲弊させて行きました。

 そして帝歴1541年3月、その時を待っていたように勃発したのが北方公爵の異名を持つバルド公爵ローレン・アクサムの反乱でした。

 彼は次期王を選出する中で、現王のアナトリス・メルダートに次ぐ候補者であったが選に漏れ、王位に就けなかったことを不服としての挙兵であったと言われています。

 当初、このバルド公の反乱も短期で鎮圧されると見られていましたが、彼の元へ主に北部に領地を持つ貴族が参陣したことで形勢が逆転、一時は国土の三分の二がバルド公支配下になるなど内乱は内戦へと姿を変えて行きました・・・。


 ここで、公爵とは言え地方勢力が何故王国軍に拮抗或いは凌駕する戦力を持つに至ったか考えてみましょう。

 公爵軍の主力は貴族とその配下の領民軍でした、そしてその貴族は例外なく強力な攻撃力を持つ魔法士でした。

 これは王国の建国以来の伝統とも言える制度で、その原型は古代アルカディス帝国に見ることが出来ます。

 前述に有る様に古代アルカディス帝国は主力の重装歩兵に加えて長距離攻撃力を持つ魔法士集団と機動力に富む騎兵を効果的に戦場に投入して勝利を重ね版図を拡大してゆきました。

 ローレン・アルカス王国もまたこの方法で諸部族の集まりに過ぎなかったアルカス人の部族を統合しアルカディス王国を建国したのです。

 こうして王国の建国に大きく貢献した魔法士はその希少さと貴重さゆえに貴族として遇され王国の支配階層へ成ったのですが、問題はその力の継承でした。

 魔法士の希少性は数の少なさとその能力が継承され難い点に有りました。

 それ故に国の支配階層となった貴族である魔法士たちは互いにその家系同士での婚姻を重ねて力の維持を図りましたが、それでも次第にその力は弱まり建国から二百年程経た、帝歴の1417年の時点でその衰退が顕著となり国力維持に支障を来す結果となったのです。

 王国はそれまでの膨張主義の代償として、周辺各国との領地・領土の所有と帰属を巡る紛争を各地に抱えており戦力の衰退は王国の存亡と直結する問題だったのです。

 歴史書を紐解くと、同様の問題は古代アルカディス帝国においても起こっており、最終的にはこれが帝国滅亡の要因の一つと成っていたとされています。

 そこで王国は、魔法士の人材を広く一般国民、つまり平民に求めることとしたのです。

帝歴1421年、王国で魔法士を管理していた軍務省は魔法士への門戸を一般王国民へも開く布告を発布しました。

 

 この王国の政策は二つの結果を齎しました。

 一つは、幅広い魔法士の発掘と戦力化に成功し、王国軍の魔法戦力の拡充が可能となった事です、これには副次的代償として平民が貴族中心の社会で一定の力を獲得する事を意味していました。

 もう一つはそれまで魔法士として国を支えてきた貴族の反感を買う結果と成ったことでした。

 平民の魔法習得と魔法士としての戦力化、その結果として社会で増す平民階層の存在感と発言力、これはこれまで国を護ってきたとの自負を持っていた彼ら貴族にとって存在意義の抹消を意味する一大事であり王国による裏切り行為にほかなりませんでした。

 これは建国以来三〇〇年の歴史の中で、貴族の中で特権や領地と領民は貴族自身の所有物であるという認識が広まり、同時に貴族としての義務がそれらを正当化する為に建前に成り下がった結果と言うことも出来るでしょう。

 こうした前提の事情から貴族の過半がバルド公側につく結果と成り、王国内で魔法士同士の戦闘が繰り広げられることとなったのです。

 当初、この戦闘は魔法の使用に慣れ経験が継承されていた貴族側に有利でした、同時に王国側も平民が必要以上の力を持つことを恐れていたこともあって平民出身の魔法士を大量に戦場に投入する事に躊躇していた事実も内戦序盤に公爵軍の勢力拡大に貢献する結果と成ったのです。

 しかし、戦闘が長引き魔法士の損耗が激しくなると王国側と違い補充の難しい公爵軍側は魔法士戦力を次第に消耗する結果と成り、そこへ能力は平凡でも数の多い平民魔法士が集団で投入されると戦況は次第に王国側優位へと変わりその公爵側版図も時間の経過とともに内戦勃発時の位置まで後退して行きました。

 しかしながら、魔法士である貴族の過半が公爵に付いたとは言え戦力の差は大きく、内乱が内戦まで規模が拡大し泥沼化したのは何故でしょうか?


 ここで考慮に入れるべき要素がもう一つ存在するこのとに気が付くべきです。


 気が付くべき要素、それは周辺諸国です。


 彼らはアルカディス王国が建国、版図を広げる過程で自国領を削り取られた経験を持ちその奪還、さらにそれ以上を狙っていました。

 特に王国の北に位置するバリストア王国と東に位置するカルナック自由都市協商連合(協商連)は有形無形の援助を公爵軍へ行って内戦に干渉しています。

 こうした中、戦局に大きく影響したのが、帝歴1542年に協商連を構成する交易都市の一つで交わされた王国と帝国の間の交戦協約でした。

 協約締結の舞台となった都市の名を取って、ガーネ協約と呼ばれるその協約において王国が切り札として開発、実戦配備を開始していた戦略級魔法の使用が制限(実質上の禁止)され、結果的に戦略級魔法に偏重していた王国軍と通常魔法戦力が充実していた帝国の戦力は拮抗し結果的に内戦が長期化することとなったのです。

『使用すれば都市一つ位は瞬時に消滅させてみせる!』と、王国の魔法開発局が豪語するその大威力の特一類魔法の使用に関しては周辺国のみならず王国内にも懸念の声が有り、更に帝国も後を追うように同クラスの魔法の実戦配備が時間の問題という段階にまで来ていたことが明らかになり、同クラスの魔法の打ち合いは最終的に単純な王国と帝国の枠を超え世界に破滅を齎す懸念もあったのです。

 これに加えて周辺諸国は大規模魔法の使用に制限を加えることで、内戦の長期化を図り王国と帝国双方の共倒れを狙ったと言われています。

 しかしながら、そうした周辺諸国の企みは今から5年前の帝歴1562年、バリストア王国の首都バリストが一夜にして消滅したことにより潰える事と成ります。

 干渉強硬派の旗手であるバリストア王国は、複数の隕石の落下により王宮を含めた王都の大半が壊滅した為に、バリストア王国は国家としての機能を停止し機能不全に至ったことで干渉強硬派足並みが乱れる事と成り、以後、王国と帝国の内戦は小康状態となっていたのです。

 このバリストを消滅させて隕石に関しては、当時飛来していた彗星の一部が落下した結果とされていますが、噂によれば度重なる内戦への干渉に対する報復とし、また見せしめとして王国が戦略級魔法を使った結果と言われています。

 確かに近年のバリストア側の干渉と言うか梃入れは露骨で、私たちが使う魔装銃のアーケリスや一般銃兵が使うゲベールの供与など物資の支援から義勇軍の派兵まで行われていました。

 もしバリストを消し飛ばしたのが戦略級魔法であるとしたら、彼らバリストア王とその周辺はガーネ協約を良く読んでいなかったのかも知れません、何故なら協約において制限された戦略級魔法の使用対象は内戦相手に対してのみであり周辺諸国はその対象ではなかったからです。




第二話をお届けします、実は第二話を書いていたら話が膨らんで6000文字オーバーになってしまったので二話にに分けてお届けすることにしました。

今回は主人公は出てきませんが、ナレーションが主人公だと思って読んでください。

おそらく帝国や王国の歴史教科書などに書いてある内容だと思います。

眠くなるかもしれませんね。


いつものことですが誤字脱字、辻褄が合っていないところや表現がおかしいところが有りましたら感想へ書き込みください。

もちろん感想や意見もお待ちしています。

次回の第3話は金曜日を予定しています。

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