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死霊の狼、ハクジ殿 登場

霧雨は家光が逃げ出さないよう公務中は後方で目を光らせている。

家光も霧雨が居る限りは逃げようなどとは思っていないし、逃げられない事も分かっている。

だから非番や休憩を狙ってコソコソと城内を隠れまわっているのだ。


「霧雨殿は殿に仕えておられるが、よう忍耐が持ちますな」

「へ?」

「気を緩めればすぐに姿を消すわ、酷い時には我らが寝ている夜分にお忍びで市中で繰り出す始末じゃ。霧雨殿が来られてからは随分と勝手が減ったが、その分霧雨殿に多大な負担が掛かっておるじゃろう?」


霧雨が隠密だと言う事実は他の家臣たちは知らない。


「・・・あ、まあ確かに(あんまり考えた事なかったな)」

「そうであろう、そうであろう。全く殿には困ったもんじゃ、お世継ぎの件もあるし頭が痛い」

「はは、ですね(お世継ぎ問題ねぇ・・・)」


このお世継ぎ問題が家光を追いこんでいる原因の一つだ。

乳母である春日局には頭が上がらないので、あれよあれよと言う間に大奥が整備されてしまった。

毎日、夕刻になると例のヤツが始まる。


ドン、ドン、「上様の、御成りぃぃぃ~」ドドドン

と太鼓付だ。


「気の毒だ・・・」

『将軍なのだから仕方があるまい』

「うおっ、おまえ急に喋るなよ。今は公務中だぞ。それに普通だったら菖蒲のところに居んだろ?なんで今日はこっちに憑いてるんだよ」


突然、口を挟んできたのは幼いころから霧雨に憑いている狼だ。

いちおう、白磁ハクジと言う名がある。


『本来なら菖蒲に憑きたかったのだか何の因果か知らぬが、お前にしか憑く事が出来なかった。はぁ、これが最近では一番の残念な出来事だ』


ハクジは菖蒲を気に入っているようで、俺にしか憑く事ができなくてえらく落ち込んでいる。

知るかっ!とは言え、この狼の死霊が俺たちを助けてくれているのは間違いなかった。

持ち前の霊力か何かは知らないが、幼い頃から危険回避をしてくれたのはこの狼だ、


「で、何かあったのか?」

『うむ、菖蒲が忙しくなるから霧雨も手伝え』

「・・・は?」


どうも大奥ではお世継ぎを孕みたいが為、側室候補争いが起きているらしい。

家光がはっきり側室指名をしないから、正室の孝子様にその務めが課せられようとしている。

指名されなかった者達やそのお家からの心ない嫌がらせが、鷹司家にまたは孝子に行われることが容易に想像される。

当然、菖蒲が阻止すべく諜報だの破壊活動などに出動する事になる。


『そういう事だ』

「いや、俺は殿に・・・」

『殿が動かないからこうなるのだ、霧雨の責任だ』

「いや待て、俺の責任ではないだろ」

『分かった、疲れた菖蒲は俺が癒してやろう。お前は一切干渉するな』

「おいっ!癒すってなんだ!」

・・・・・・。


消えやがった!!なんで死んだ狼に菖蒲が癒されなきゃならないっ!

眼帯を外せば簡単にハクジが何処で何をしているか見えるのに、これを外すと異色の瞳も晒すことになってしまう。


~~~~~~~


「いいか、霧雨、菖蒲。日の下ではこの眼帯を外してはならぬぞ?これが誰かの目についたら、お前たちは大きな闇から消されてしまう。絶対に外すなよ?いいな」


「はいっ!父上っ」


~~~~~~~


よく分からないが、人様に見られたら不味い。

それは本能的にも感じている事だ。


「はぁ、やっかいな運命だ」


はぁ、と思わずため息を漏らせば、同情した目で家臣たちが頷く。


「霧雨殿、息抜きに女子(娼婦)でも呼びますかの?」

「ああ・・・。っ!いや、遠慮する」

「女子(娼婦)の一人や二人、知っても罰は当たりませぬぞ。霧雨殿のような容姿ならば、向こうも喜んで馳せ存じますぞ!勿体ない。・・・もしや霧雨殿はまだ女子おなごを知らぬのか」

「否、(任務の流れでそうなった事はあるぞ・・・任務だが)」


そもそも俺は自分が好いた女にしか欲情しねえよっ!

って、何言っているんだ俺は・・・


「はぁ」


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