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家光に明かす

やはり忍びが絡んでいる、しかもかなり強敵の。

理由はまだ分からない。

ハクジも霧雨を助けて以来、姿を(くら)ましたままだった。

孝子についていた女中は十中八九、忍びの者。

彼女もまた姿を消したままだ。


「菖蒲、この件は家光様に言うべきだよな?」

「そうね、内部から固めて侵入を防ぐ必要があると思う」


それに、孝子は子を産めない体ではなかったのだ。

幼き頃から女の機能を眠らされていただけ。

その事を一刻も早く菖蒲は家光に伝えたかった。


「孝子様の薬の件も先に家光様に言うべきよね?孝子様はまだ知らないのだけど」

「そうだな、俺達の主は家光様だ。先ずは家光様だろう」


このままでは敵を討つどころか、家光と孝子すら護り切れない。

二人は柳生に至急の文を飛ばした。


翌日、柳生は江戸城に上がってきた。


「なんだ柳生だけでなく、霧雨と菖蒲までも。いい話ではないな」

「殿、人払いを」


柳生がそう申し出ると、家光は右手を上げ家臣たちを下げた。

全員が下がったのを確認すると家光が姿勢を崩す。


「近う寄れ」


三人は家光の目前まで移動した。

ここまで殿の近くに寄れるものはそうそういない。


「して、何事じゃ」


柳生は静かに低い声で話始めた。

万が一、外に漏れてはならないからだ。


「先ず、この場内に霧雨と菖蒲以外の忍びが潜んでいる可能性があります。殿の周りではなく、孝子様の」

「なんだと!」

「そちらの話は菖蒲から」


柳生は菖蒲に目で合図をする。


「殿、孝子様の側近で鷹司家から一緒に上がった女中を覚えていらっしゃいますか?」

「ああ、幼いころより知っておる」

「その方が忍びでこざいました。そして、最近になって姿をくらませております」

「!?」


家光は驚きすぎて言葉にならないようだ。

菖蒲は話を続ける。


「その女中が毎日淹れる薬湯がございまして、それがなんと」

「・・・」

「子を産めなくする薬だったのてす」

「な!!」


家光は肘置きから体を起こし、両目を剥いている。


「ご安心ください。その薬は今は飲んておりません。幼き頃より飲んでおりますので効果が薄れるのにどれ程の時間を要するかは分かりませんが、孝子様の体は本来何の問題も無かったのでございます」


そして、柳生が補足するようにこう言う。


「孝子様はまだこの事実を存じ上げませぬ。お心の負担が大きいと予想されますので、殿の判断に従いたく」


三人は深々と頭を下げた。


「・・・」


暫く、家光は言葉を発しなかった。

家光自身もこの事を理解し、どう動くかを纏めるのに相当の時間を必要としているからだろう。

三人は黙って、ひたすらに待った。


「今夜、孝子の部屋に参ろう」


そう確かに言った。


「余が直々に孝子に話す故、手はずを頼む」

「はっ!承知いたしました」

「して、忍びの真の目的はなんだ」

「未だ掴めておりませぬが、早急にご報告申し上げるようにいたしまするっ」

「分かった。下がれ」


三人は静かに下がった。

今夜、家光が孝子の部屋に行き自ら話すと言う。


「菖蒲頼んだぞ」

「はい」

「霧雨はわしと来い」

「分かった」


三人はそれぞれの成すべき仕事へと散った。

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