石油王アップグレード 五
二体のクラーゲンにそう問われて十三は改めてよく考えてみる。
(えっと、九龍玄女さまに飲み込まれて、でも日本には戻れないからまた吐き出されて…あれ?もしかして)
『ヘイ!ブラザー、気付いたようだな』
『ああ、その通りだブラザー』
二体のクラーゲンがしたり顔で話しかける。
「俺はまた転生したのか?九龍玄女さまに飲まれて一回死んで再生したのか?」
『厳密にはちょっと違うが』
『概ねその通りだな』
厳密には十三は死んでいない。
魔法が存在するこの世界でも地球と同じように死んだ人間が生き返ることはない。死体が起き上がることはあるが、それはもうただのアンデットモンスターだ。また魂だけがアンデッドモンスターとして彷徨うこともある。つまり体だけ魂だけという形ならば死後も存在するモノあるが、しかしそれは生前とは別物のアンデッドモンスターに成り果てたという意味だ。
どんな魔法を使っても、死んだ後体から抜けた魂を再び入れ込み生き返らせることは出来ないのだ。
だから十三も彼がナガイキと名付けたクラーゲンも厳密には死んでいない。
通常なら死ぬところだったが、魂が体から抜けるまでの間に再生されたのだ。あの界間超トンネルという異世界の狭間に居たからこそ出来た作業だ。もちろんその作業を行ったのは九龍玄女であるが。
『その再生の際に九龍玄女さまがこの地に遺していく力やナガイキの魂やブラザーの魂、それらは一旦渾然と混じり合ったのだ』
『九龍玄女さまはその混じり合った魂や力を再びブラザーの体やナガイキの体に戻した』
『たださっきも言ったようにナガイキの体は真っ二つになっていたんで俺たち二体に分離したってわけだ』
クラーゲンたちがそう説明する。
『これで解っただろ?』
『俺たちはまさにブラザーの兄弟なのさ』
確かにある意味九龍玄女という母から産まれた兄弟と言えるかも知れない。
「俺はいつの間にかクラゲ人間になってたのか?」
『いや、それはない』
『ナガイキの体は俺たちの体を作る分しかなかったし』
『ナガイキの魂の量もブラザーほどなかったからな』
『どっちかって言うとブラザーの要素が俺たちに色濃く反映している』
『ああ、おかげで俺たちはただのクラーゲンよりも一段進化した個性的なクラーゲンになったぞ』
『だいたいブラザー』
『『普通のクラーゲンがこんなに喋ると思ったか?』』
ドヤ顔で尋ねる二体にちょっとイラッとする十三であったが、なんのことはない。この人格は十三の影響だったのだ。
『さて、俺たちのことを解ってもらったところで』
『ブラザーにはまずやってもらうことがある』
『『それは命名だ!』』
「ネーミング?!」
『そうだ。俺たちの名前を付けるんだ』
『どっちが羽でどっちが飛だ?』
「それだと俺は妖怪手長耳長になるだろ!」
『ブラザー、十円玉持ってるか?』
「人のツッコミ、スルーかよ!十円ぐらいクルマん中にでもこのスタンドにでもあるだろ」
『じゃあ十円の誓いも出来るな』
「だから俺は妖怪手長耳長じゃねぇって!でも名前ないと不便は不便だしな。一応考えるか」
そして即決。




