宇宙的なほらあれだ 六
大きな頭とそこから伸びる八つの龍体。
似たような生物に十三は見覚えがあった。
「九頭ドラゴン?それってクルールーと一緒?!」
しかしこの巨大幼女はあのタコが同族には見えない。
『ん?お主やはり妾以外の九頭ドラゴンに会ったことがあるのかや!?』
十三の呟きに巨大幼女が耳聡く反応する。
「ええ、でも貴女と違って頭だけのタコのような姿でしたので違う種族かも知れません」
感覚が麻痺してきたのかそれとも慣れなのか、十三は落ち着いて巨大幼女と会話出来るようになっていた。「少なくともすぐに命に危険があるわけではないだろう」という判断もあった。
『頭だけじゃと?』
「ええ、タコのような顔をした大きな頭と八つの龍体でした」
『我ら九頭ドラゴンの幼体はそのような姿をしておるのじゃ』
「そういや、幼体時にノレイエに漂着したとか言う話だったな」
巨大幼女の説明に十三はクルールーの記憶を思い出した。
(ってか、この巨大幼女さまは幼体じゃねぇのかよ!?)
命が惜しいので口にはしないが、心の中ではツッコミを忘れない。
『漂着とな?』
「彼は深海に棲んでいたらしいのですが、まだ幼体の時期に海上に浮上して見たら波に流されノレイエという島に漂着したのです」
『たしかに如何に大海の覇者である九頭ドラゴンであっても幼体では海流に抗うことは難しいであろう。であるから通常幼体は深海から出ぬものを…』
「好奇心旺盛だったんですよ」
『そういう問題かの?』
巨大幼女さまが首を傾げる。
『で、その島に行けばその九頭ドラゴンがいるのかや?』
「いないです」
『なんじゃと!?いないとはどういうことだ?』
「異世界に行きました」
『異世界じゃと?!』
巨大幼女は混乱している。
気づけば辺りは夜の帳に包まれていた。
満天の星と月が暗い海を照らしている。そのわずかな明かりの下、巨大な幼女に摘まれて宙に浮いている現状は恐怖でしかないはずなのに、正気が麻痺した十三は他人事のようにその景色を観察していた。
「ええとですね…」
正気が麻痺し、しばらく会話を重ねたことで十三は「この幼女かわいい。少しルックスが人間離れしているけど、異世界ならこういう異種族アイドルも良いかも」などと考えるようになっていたので、丁寧に彼女の疑問に答えてあげる。
だが、この巨体で歌ったり踊ったりしたらそれは天変地異である。やはり十三は正気を失って判断力が低下していたのであろう。
何はともあれ、十三は巨大幼女に自分とクルールーの異世界転生について説明した。巨大幼女は興味深そうにその話を聞き、時折『ふむふむ』『なんと!?』などと相槌を打っていたのだが、やがて『そのノレイエとやらに案内するのじゃ!』と言いノレイエ島へ向かい始めた。
海から首から上だけを出した状態で泳ぐ巨大幼女。とはいえ手足を使って泳いでいるのではなく、首から生えた八つの龍体が海に広がりブレスを吐くことで推進力を得ているようだ。だから依然十三はぷにぷにした指に摘まれたままである。
『なんと!?日本にはそのような物もあるのかや?!』
九龍玄女と名乗った巨大幼女さまは日本に興味があるようで、ノレイエへ向かって泳ぎながら月が太陽になるまでずっと十三に質問を繰り返していた。




