表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
石油王ユダ氏の異世界漂流。  作者: ググりながら書いてます。
3/53

ノレイエの守り神 二

 人々からの信心を受けて神となったクルールーだったが、信者がいなくなってしまっては神としての力は徐々に失われていく。そしてやがては消滅してしまう。


 しかしクルールーはそんな未来を是として受け入れなかった。


「信者もなくただ消滅するぐらいなら、いっそ神は辞めた!逆に言えば俺はもう自由だ!そうなればあれを試すしかない!…そう!異世界転生だ!」


 ノレイエに流れ着くこの世の物とは思えない代物。漂着物の神としてそれらを解析して島民に与えてきたクルールーは、異世界が存在するということを理解していた。そしてノレイエはその異世界とのトンネルが形成しやすいということも知っていた。それどころかクルールーの漂着物を解析する能力はそのトンネルを超えて異世界の情報を検索することも出来たのだ。


 入念なリサーチで異世界へ渡った後の準備も万端。何度もシミュレーションしたので残された神力で異世界へと渡ることはほぼ確実に成功するはずだ。

 

 あとは実行あるのみ!


「いよいよ旅立つとなるとこの神殿も名残惜しいな。だが!しかし!俺は新天地を目指す!」


 住み慣れた神殿を見回し感慨に耽るが、すぐに心機一転。転生の儀式を始める。そして、


「ふはっはっはっ、現代日本に俺、爆誕!」


 儀式に成功して思わず高笑いをする。全身に降りかかる雨もいっそ心地よい。

 そんな彼が光に包まれた。


「ん?」


 と、そちらの方に目をやると驚愕の表情を浮かべた青年が舵を大きく切っていた。


(あれは自動車だな。ノレイエにもいくつか漂着してたけど、燃料がなくて動かなかったんだよな)


 ノレイエにいた時と姿が変わっているので、自身が転生に成功したことは確信していたのだが、改めて異世界の物に遭遇するといよいよ異世界転生に成功したと実感する。

 しみじみ実感に耽っているクルールーの前で軽自動車がスピンしながら道路脇へと進み、柱のような物に激突する。


「あれ?」


 さすがにこれは困った事態になったのでないか?とクルールーはその軽自動車に駆け寄った。軽自動車は大破しており、運転手の青年は全身を強く打って気絶している。クルールーの見立てでは内臓も破裂していそうだ。


(これはもう手遅れか)


 冷静に青年の状態を判断しながらクルールーは焦る。


「まずいな。これはどう見ても俺の巻き添えっぽい。助ける義理はないけど、このまま死なれると目覚めが悪いな」


 元々善良な神として信仰されていたのだ。根は優しい。どうしたものかと辺りを見回すとこの世界現代日本にはないはずの神力を感じた。さきほど自身が通った異世界の壁を越えるトンネル、即ち…界間超トンネルがまだ閉じてないようだ。


「よし!こうしよう」


 そう言ってクルールーがその神力を振るうと、そこにあった建物‐ガソリンスタンドが突っ込んできた軽自動車含めて消えた。あとは静かな山道が夜の闇の中に広がっていた。


「これで万事解決」


「証拠隠滅成功」とばかりにクルールーがほくそ笑む。彼は善良な神ではあったが、ちゃらんぽらんな神でもあった。


(これで神力は全て使い果たしてしまったな)


 神の力を完全に失いただの人となった実感を覚える。


(ま、でもこの世界はこれさえあればなんとかなるだろう?)


 そう思いつつポケットの中の預金通帳を取り出して見る。転生に際して事前に準備していたものだ。もちろんハンコもある。


「四十億もあればなんとかささやかな余生をおもしろおかしく送れるかな?」


 そう嘯いて用意した隠れ家へ歩き出す。


「そうだ。せっかく若い体に転生したことだし、学校とやらに行ってみようかな?」


 異界の神クルールーは現代日本での生活を満喫する予定だ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ