宇宙的なほらあれだ 四
「なんだ?!この不気味な歌は!?」
その謎の呪文はドーム級クジラの中のさらに潜水艦の中にいた十三の耳にも聞こえていた。
とても常識では考えられない事態の連続に十三はさっきから驚愕しかしていない。
カタカタ
ふと気づけば十三は震えていた。空耳というにははっきりとし過ぎている謎の呪文を聞いているうちに得も言えぬ恐怖を感じていたのだ。
ドン!
という衝撃のあと、
ギシギシ
軋む音が潜水艦から聞こえてくる。
「一体何が起こっているんだ!?」
激しい揺れと、先程ナガイキに持ち上げられた時のような浮上感を覚える。十三の体感ではドーム級クジラの体高よりも高く浮上している。おそらく先程の衝撃も鑑みるにクジラの体を突き破って浮上したと推測された。
(だが、なぜ!?)
いまだ潜水艦の中の十三には周りの状況が全く掴めなかった。おそらくまだ有効であるだろうビデオカメラが映しだす画は暗く何の情報も齎してくれない。
十三にはわからなかったがこの時起こっていたことは、彼の想像の範疇を遥かに超えていた。
ただでさえ巨大だと思っていたクラゲ。そのクラゲを軽々捕食するドーム級クジラ。
その東京ドームに匹敵するサイズのクジラの下。深き海の底より謎の呪文とともに現れた八体のドラゴンが真下からクジラを食い破ったのだ!
西洋の伝説に登場するトカゲのような姿をしたドラゴンではなく、東洋の伝説に出てくる蛇のような細長いドラゴンだ。
頭のサイズこそは十三の潜水艦並みでドーム級クジラに比べると小さいが、その体が長くクジラを食い破ってなおまだ海に浸かったままであった。おそらく体長はドーム級クジラ以上あると思われた。
そのドラゴンの一体に十三の乗った潜水艦は咥えられていた。
サイズ的にドラゴンの口にちょうど良い。
なお十三はもちろん知らないことだが、別のドラゴンにナガイキも咥えられている。いや、正確には喰われている。
「ナ、ナンダッテー!?」
意を決して潜水艦のハッチを開けて外の様子を見に出てきた十三は思わず叫んだ。
潜水艦の側面にドラゴンの牙が刺さっている。艦橋から下を見ればドラゴンの目が睨んでいる。
『不思議じゃ。我が同族の匂いがするぞ』
先程の謎の呪文のように辺りに声が響く。
耳にも響くが、頭に直接響くような声につられて十三が目を向けると遥か下に海が見える。その海に浮かぶクジラは東京ドームほどの大きさがあったはずなのに今はかなり小さく見える。
そしてそのクジラの下。海の中に幼女の姿があった。
なぜ十三がそれに気付いたのか?
それは十三に見えたから。つまりその幼女はそれだけの巨体の持ち主であったのだ!
クジラの下で仰向けになっていた幼女がゆっくりとその体を起こす。大きな波を立てながら上半身を起こした幼女は姿こそは幼女のようであったが、おそろしく巨大でドーム級クジラも彼女と並べば枕のように見えた。
そして十三は気付いた。
八体のドラゴンに見えたものは全て彼女の一部であったことに。




