表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
石油王ユダ氏の異世界漂流。  作者: ググりながら書いてます。
2/53

ノレイエの守り神 一

 かつてメイン大陸の遥か南東の洋上にムーランティスという島があった。

 高度な文明を発達させたムーランティス人たちは海洋進出にも精力的で遥か遠くメイン大陸までやって来ていたという。

 そのムーランティス人たちの大陸への進出の橋頭堡であり交易の中継地でもあったのがノレイエという小さな火山島だった。


 クルールーはそのノレイエでムーランティス人たちに崇められた神である。


 元々ノレイエはムーランティス人たちの拠点になる前からある種の特異点であった。

 この島は異様に漂着物が多いのだ。

 それも一体どこから流れて来たのか理解し難い、この世の物とは思えないような代物もよく流れ着く。

 そしてクルールーも漂着物の一つだった。


 深海に棲むと言われる九頭ドラゴン。その幼体がクルールーの前身である。

 通常深海に棲む九頭ドラゴンが洋上に現れることは滅多にない。しかしクルールーは、その旺盛な好奇心である日海面に上がってみたのだ。そして潮に流され戻れなくなった。まだ幼体のクルールーでは海流に逆らえなかったのだ。

 あるいはそれも数多の漂着物を引き寄せるノレイエの力だったのかも知れない。

 いずれにしても、結果クルールーはノレイエに漂着した。


 その頃にはすでにムーランティス人たちがノレイエに到着していた。


 数多の神々を信仰するムーランティス人たちは自分たちで新たに神を作り出すことも出来た。

 モノに信心を捧げ、そのモノを神と祭る。

 元々は自然その他に対する純粋な畏敬の念から生じたものであったが、やがて文明を発達させていく過程の中でその技術は体系化され、当時ムーランティス人たちは自分たちに必要な神を次々に作り出していた。


 そうしたムーランティス人たちであったから当然ノレイエにも守り神を祭る予定であった。さらにはノレイエ特有の謎の漂着物の管理もしてくれる神を欲した。

 島及び近海の航路の守り神。漂着物の神。

 そうした神を作ろうとしていたムーランティス人たちにとって漂着してきた水棲龍種であるクルールーは御神体として最適であった。


 こうして祭られたクルールーは、ノレイエの守り神としてまた漂着物の神として長らくノレイエで信仰されていた。


 だが、それもムーランティスが沈むまでの話だった。

 

 ムーランティス島が何故沈没したのか?

 それはクルールー含めてノレイエの者にはわからなかった。なにぶんノレイエとムーランティスは距離があり過ぎたのだ。ただノレイエの者にわかったことは、このままだと島が立ち行かないということだった。


 ムーランティス人たちの大陸進出の橋頭堡であり、大陸の植民地とムーランティス本島との交易の中継地として機能していたノレイエは島単体では自給自足出来なかった。というより、小さな火山島であるノレイエに農地は皆無だったのだ。

 漂着物の神でもあるクルールーの加護で漂着物を利用する術はあったものの、必要十分な生活物資が島民に行き届くだけの漂着物が定期的にあるはずもなく、残された島民は漂着物頼りにほそぼそと島で暮らすか?大陸へと渡るか?の選択を迫られた。


 そして当然のように、若者たちは大陸へ渡り長い航海に耐えられない老人たちだけが島に残った。


 やがて時は流れ、島に残った老人たちも一人また一人と寿命を迎える。

 気付けば、ノレイエには守り神クルールーしかいなかった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ