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石油王ユダ氏の異世界漂流。  作者: ググりながら書いてます。
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或るドルヲタの死

石油王になりたい!


 そう思ったことはないだろうか?

 今、深夜の国道の山道で軽自動車を走らせている油田十三(ゆだじゅうぞう)もご多分に漏れずに日々そう思っている青年だ。


(あー、俺が石油王ならなぁ。なつみちゃんを選抜一位に出来るのになぁ)


 十三はアイドルヲタクである。

 彼が応援しているアイドルグループは毎年六月になるとCD付き握手券の売り上げによってランキングが決められる。つまり、ファンが握手券を買えば買うほど、金を使えば使うほど、ランクング上位に入ることが出来るのだ。


(一位様には大陸の資産家が付いてるって噂だしなぁ)


 今年一位に返り咲いた娘には大陸のお金持ちのファンがいて、毎年この時期になると握手券を大量購入するという噂だった。


(それでなくても石油王並みの資金があれば、握手会や劇場公演、コンサートやその他イベントにいくらでも気軽に遠征出来るんだけどなぁ。あー、石油王になりたい)


 現状は高速料金をケチって国道で帰宅している最中である。


 すでに六月始めのランクングイベントも終わり、梅雨に入った六月下旬。

 十三は久しぶりに当選した劇場公演を観たあと自宅を目指していた。二十時半過ぎに終演してそれから四時間、ひたすら軽自動車を運転しているのだが、帰路はまだ半ばである。長距離トラック以外走るクルマもない山道を眠気を噛み締めながら運転する。


 山間の小さな町を抜け、徐々に民家も疎らになってゆく。町外れのガソリンスタンドを通り過ぎたらしばらくは人里離れた峠越えだ。


「雨が強くなって来たな」


 そう呟きワイパーを「強」にし、カーステレオの音量を上げる。その操作のため、ほんの一瞬、ほんの一瞬だけ正面から目を逸らした。


「なっ!?」


 再び正面に目を向けるとヘッドライトの光に照らされた道路の真ん中に人が立っていた。

「なんで人が!?」とも「どこから来た!?」とも疑問に思う前にとっさにブレーキを踏み込み、「インド人を右」ではなくハンドルを左に切っていた。


 雨で濡れた路面。

 急ブレーキ。

 急ハンドル。


 結果、スリップ。

 そして、スピン。

 さらにコースアウト。


 制御不能になった十三の軽自動車は閉店後のガソリンスタンドへと突っ込んで行く。

 申し訳程度に引かれたスタンド前のロープを引きちぎり、スピンしながらガソリンスタンド内に突入した軽自動車は、回転の勢いそのままに車体右側面‐運転席のドアから給油機と激突する。


 もちろん運転手たる十三も無事ではなく激しく体を打ち付けられた。

 視界の隅に何やら困ったような顔をした少年の姿を映しながら「生まれ変わったら石油王になりたい」と思いつつ十三は気を失った。

  

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