第六話 守矢神社
妖怪の山にある神社、守矢神社は外の世界では信仰を集めることが出来ず、その状況を打破するため湖と神社ごと幻想郷にやってきた神社である。神社の神が山と湖の神のため人間が入れない妖怪の山に移ることになったのが大誤算だったようで、その後は博麗神社の営業を停止させようとしたり、将来のエネルギー問題の解決と称して地底の地獄鴉に神霊八咫鴉の力を渡すなどという活動をして、人間に自分たちの力を知ってもらい信仰を集めようとしている。そんな守矢神社の巫女兼現人神の東風谷 早苗は突如現れた船に興奮を隠せなかった。
「うわあ、これ空母ですよね。何で空母が幻想郷に?それも私たちの神社に?もしかしたらこれをうまく使って信仰を集めなさいという天の助け?戦艦の大和の方がもっと良かったけどやっぱりあれは忘れられていないからかな?どう思います?神奈子様、諏訪子様。」彼女は神社の二柱の神に声をかける。
「まあこれの技術を河童に売ったら高値で売れるだろうし、架空索道の動力や設置に協力してくれるかもしれない。維持については微妙だけど。」
「そういう意味では天の助けかもしれないけど、あいつらが買うのはどうせ、レーダーとか内燃機関とかだろうし、そうなるとだいぶ残るよ、神奈子。前のダムのことで分かったけど、あいつら協調性がないから残りの解体を頼んでも途中でけんかしたり、もしくは解体で出た装甲とかで何か作るよ、絶対。」背の高い方の神が八坂 神奈子 背の低い方の神が洩矢 諏訪子、彼女たちはかつて侵略者と被侵略者という関係だったが、勝者である神奈子が諏訪子の持っていた信仰を奪うことが出来なかったという経緯などがあり、現在同じ神社に住んでいる。
「ええっ!お二人ともこれを売るつもりなんですか?そんなもったいない。これを飾って参拝客を増やしましょうよ。絶対河童とか天狗がたくさん来ますよ。」
「そうかもしれないけど限度って言うものがあるからねえ。神社が完全に日陰になってるし、今は立っているけど何かのはずみで倒れてくるかもしれない。そうなったら神社の修理しないといけないけど、重すぎて動かせず、修理のとき邪魔になるからね。」
「それに最初のうちはたくさん来るかもしれないけど飽きたら元に戻るよ。そうなる前に売っちゃおうよ。もしかしたら見物する振りして中身を盗んでいるなんてことになったら最悪だし。」
「……そうならないって言えないのが悲しいですけど、やっぱり妖怪ですものね。興味がある部分を嬉々として解体して持って行き、興味がある部分が無くなったらそのまま放置する姿がはっきりと目に浮かびます。見張るにしても限度がありますし、やっぱり売るしかないのかあ、もったいないなあ。」
そのとき風が吹き「うわっここにもあるじゃないですか。それも同じような大きさの船が。」さきほど天狗の里を出てきた射命丸 文が来た。
「おや、山の侵入者を追い返すはずの天狗じゃないか。ここに何しに来たんだい?」
「人間とかなら見逃さないのに、こんな大きなものを見逃すとは、いったいどういう目をしているのよ。」
「あやや、これは手厳しいですね。でもそんな事言って抗議しても架空索道でしたっけ?それの建設は無理だと思いますよ。不利益が利益を上回っていますし。博麗神社とかに分社を置いているんだからそれで満足してくださいよ。まあそれはともかく、ここにもあったんですね、謎の船。私たちのところにもあるんですよ、巨大な船が。早苗さん、見に来ませんか?」
「うーん、そっちにもあるんですか。まあ、こっちのと違う艦種だったらほかの天狗も取材しに来そうですね。分かりました。行きましょう。」
「ああそうそう、私たちのところの船はどんなに攻撃しても傷ひとつ付かないんですよ。ここの船はどうですか?」
「そんな馬鹿な、スペルカード 神祭「エクスパンデット・オンバシラ」 ……本当だ傷どころかペンキすらはがれていない。遊びのときより威力を大分上げて撃ったのに。」
「厄介だね。変なものが憑いていないといいけど。まあこっちでも調べておくから早苗、天狗のところの船の情報、頼んだよ。」
「はい!お任せ下さい。」