第四話 綺麗すぎる船
「ありえないって、でも現にあるぜ。」
「じゃから問題なのじゃ。異変解決はおぬしらに任せるといっても今回はすんなりといくとは思えん。ただ船が現れる異変ではなさそうじゃからな。」
「それじゃどうするんだ?このまま放置か?」
「まあそういうことになるかの。この件はすぐに幻想郷中に広まるじゃろう。天狗どもがこれを見逃すとは思えんしのう。」
「ああ天狗か、彼らはいつも何かないかとそこらじゅうを飛び回っているし、すぐに号外が配られるだろうね、今日はまだ見てないけど。」
「上のほうで写真取ってるんじゃないか。こんなに大きいんだし。そういえば香霖、号外なんて配られたらまた窓破られるんじゃないか?ポスト作ってもすぐ壊されて結局窓から入れられていたし。」
「八雲さんに頼んで防弾ガラスっていうのに変えてもらったよ。もっと丈夫なポストももらったし、おかげで次の新聞大会のための勧誘合戦中でも紙を張ったところから外の風が吹き込むってことはなくなったよ。借金になったけどまあいくつか非売品を預かってもらって、コンピューターとかを集めるだけでいいって言ってくれて助かったよ。だけど油断するとすぐにポストが、場合によっては同じ内容の新聞でうまるけどね。いくら紙の価値が下がったからといってあれは配りすぎだよ。」
「新しい新聞が出来るたびに新規購読者獲得のためのお試し版、過去にどういう記事を書いたかの紹介版、そしてもはやばら撒いているとしか表現できん号外。あれじゃ定期購読してるのと変わりないぜ。いやむしろ定期購読より配られるのが多いかも知れんな。みんなあれをどう処分してるんだ?私は食事作るときの燃料とかに使って、出た灰はそこら辺に捨ててるけど。」
「うちはコンロを使ってるからねえ。里の農家に時々持ち込んで燃やしてもらっているよ。肥料になるんだけど最近栄養過剰気味なのかやたらと成長しているみたいだよ。」
「うちもそんな感じです。阿求は再生紙っていうのを作ろうって考えていましたけど、質のよいものは出来なかったし、そんなことしなくても新しい紙が大量にありますから、うちで印刷している本も再生紙は使われていません。」
「何かが大量にあふれると、それが大事にされなくなるのは外の世界でも幻想郷でも変わらんようじゃな。」
「そういえば阿求はどうしたんだ?一緒に来てないのか?」
「さすがにこの人ごみを掻き分けてまで見ようとは思わなかったようで後ろのほうで待ってますよ。」
そのとき空から何かが落ちてきた。
「うわさをすれば影とやらだな。だけど今回はずいぶんと静かに配るんだな。いつもは大声で宣伝しながら配るんだが。」
「まあ偶にはいいじゃないか。今回は突然落ちてくるってことで驚かす効果を狙っているとかじゃ、……うん?これは里の船のことじゃないぞ。妖怪の山に現れた船のことだ。河童の住処や天狗の里、守矢神社にも現れたらしい。」