第二話 外の世界の船
「まあそうするしかないわね。じゃあ準備するからあんた達はここで待ってなさい。」
「え?何の準備ですか?」
「やっぱり悪戯だったらあんた達を退治しないといけないし、本物だったら本物でいろいろとしなければならないし。……逃げたら分かってるわね。」
「「「……はい。」」」
霊夢は部屋に戻ると早速結界や弾幕用の札、そして普段は倉庫に仕舞っている陰陽玉を用意する。
「じゃあ行くわよ。ついてきなさい。」
「「「はーい。」」」
大きいことは分かっていたが霊夢はこれほど巨大な人工物を見たことがなかった。鉄の壁は上に行くほどこちら側に向けて反り返っており、さらにその上には簪のような物をつけた建物がのっていた。
「ちゃんと実体もあるし、それにしても大きいわねえ、上にのってる建物より高い建物って幻想郷にはないんじゃない?」
「私たちが今住んでいる木ともいい勝負ですよ。」
「これってどうするんですか?」
「外の世界に戻すとしてもこんな大きな物を戻したことはないし、やっぱりある程度解体しないとだめかしらね。」
「そもそもこれっていったい何なのでしょう?家にしては下の壁みたいなのが邪魔ですし。」
「うーん、誰に聞けばいいかしらねえ、外の世界から来た早苗か、外の世界の本をたくさん持っている小鈴ちゃんか、霖之助さんはまずここまで来てくれないでしょうしね。あっそうだ。紫に聞けばいいんだ。」
「紫さん…ああ、あの人ですか。」
「知ってるの?」
「引越し前に少し…」
「紫なら教えてくれるでしょうし、いざとなれば手伝わせればいいしね。じゃあ早速「今結界を緩めるのはやめて頂戴。」…うわっ!」霊夢が驚くのも無理はない。誰だって突然後ろから肩をつかまれて驚かないことはないだろう。霊夢が振り返るとそこには中華風の派手な服を着た少女がいた。彼女の名は八雲紫。
妖怪の賢者とも呼ばれる幻想郷でも特に古い妖怪だ。彼女は境界を操る能力を持ちこの幻想郷を作ったとも言える。幻想郷を維持するには彼女の力が絶対必要なのだ。
「珍しいじゃない、あんたがこの方法で呼ぶ前から来るなんて、ところでこれは何?」
「外の世界の船よ。これは戦艦と言う戦争に使う船ね。」
「へえ、外の世界ではこんな船で戦うんだ。ところで何で結界を緩めたらだめなの?」
「今調査中だからよ。霊夢気づかない?この船について。」
「うーんさっきから何かいやな予感はしているんだけどね。やっぱりこの船かなあ。」
「霊夢は結界が不安定だったり、外の世界にも属している場所では外の世界のものが良く見つかるのは知ってるわよね?」
「知ってるわよ。そういうってことは何?結界が安定しているところでも外の世界のものが出現してるってこと?」
「ええそうよ。これと同じ様に戦争のための船があっちこっちに出現しているのよ。さすがにこんな大きなものが入ってくるんだったらあまり安定していないところに出てくるはずなんだけど幻想郷のほとんどの勢力の近くにまるで図ったように現れてねえ。しかも結界みたいなものでも張ってあるのか傷ひとつつけられないのよ。」
「もしかして紫はこの船たちが意思を持っている何かで自分たちで結界を突破したって考えているわけ?」
「そうよ。だから結界を調べているの。入ってきた穴を見つけ出すためにね。そうでなければ他の船はともかくこの船、戦艦「大和」が入ってくるはずがないからね。」
「そんなに有名なの?この船。」
「外の世界で最も有名な戦艦よ。世界最大の戦艦ということもあるし、沈んだときの状況が悲劇的なことがあって、ある程度以上の年齢の人間は大体知っているわ。」