第零話 ???
その場所は幻想郷にふさわしくない奇妙な部屋だった。なぜならその部屋は床や壁、天井が鉄で出来ており、さらに多数の機械が設置されているからだ。その部屋にいくつかの人影があった。
「さて我々の計画の第一段階は完了した。これより第二段階の最終確認をする。」そのうちの一人が幻想郷の精密な地図を出して、机の上で広げ、指差しながら確認を始める。
「里を襲撃、制圧し、ここを制圧すれば人間の避難場所は永遠亭のみになる。けが人が出ればなおさらだ。次に山については、この三箇所を制圧すれば山で妖怪の集まる拠点が無くなる。反攻までの時間が余計にかかるだろう。地底は二箇所。最後に幻想郷の最重要地点である博麗神社だ。これが最後の変更の機会だ。何か意見のある人はいないか?」誰も意見を言わない。
「では次に例の魔術についてだ。発動はできたが数日間様子を見ておこう。この計画が成功すれば我々は必要な力を手に入れることができる。お互い成功を祈ろう。では第二段階まで待機。」その言葉と同時に人影は二つを残して全て消えた。
「我々は第二段階でも待機か。分かってはいるがあまりよい気分ではないな。」
「あなたは待機中にも重要な仕事がありますが、私には無いから余計そうです。それよりそちらは大丈夫ですか?好奇心旺盛なやからが多いでしょうに。」
「最初のうちは見に来ていたがすぐに興味をなくしたようだ。まあぼろぼろにカモフラージュしているからな。」
「それにしても気分のいいものではありませんね。こんなに平和な場所を乱すのは。」
「その平和もかりそめのものだ。人間には妖怪という敵があり、またその妖怪もいくつかの拮抗した勢力に分かれているからそう見えるだけだ。ちょっとしたことで簡単に乱れる。それに外の世界で幻想になったものが集まる場所といえば聞こえがいいが、そういうものの大半は文明や技術の発展に伴って不必要になったものだ。神もその中にあるのはさすがにどうかと思うが。」
「まあ、そうですね。」
「気持ちは分かるが目的を見失うな。今、日本に再び滅亡の危機が迫っている。前回の危機は、開戦や敗戦後のアメリカの支援、朝鮮戦争で回避できたが、今度はそういったものがないからな。それにここの住人は自分たちは自立していると勘違いしているようだが、ここの必要物資、特に食料のほとんどが外の世界、特に日本頼りだ。日本が貧しくなればここも貧しくなる。そうなれば紅霧異変や春雪異変のような第一次産業に深刻な影響を与える異変が起こればすぐにここも滅ぶ。」
「そうですね。案外この作戦は彼らの目を覚まさせ一層の団結と発展の手助けになるかもしれませんな。黒船のように。さてと次に会うのは第二段階ですね。ではまた。」
その声を最後にすべての人影が消える。