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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

夢物語

精霊の契約

作者: 木下 碧

最初ら辺はメルヘンにしてみました。

 皆さん、こんにちは。


 私『叶夢とあ』と申します。仕事は夢の案内人です。





 最近一気に気温が下がり寒い日々が続きますが、今日はそんな寒い日にあった物語を紹介します。


 これは何百年も生きている精霊と一人の少年の冬の物語です。



 


 それでは『精霊の契約』お楽しみください。





____________________





 一人の少年が雪の中を歩いていました。


 少年は雪の上を歩くのが好きでした。

 あの白くふんわりと積もった、雪の上に自分の足跡を付けてまわる快感がなんともいえないのです。


 サクサク、サクサク


 少年は楽しくなって、ニコニコと笑いながら駆け出しました。






 どれくらい走ったでしょうか?


 ふと前を見ると突然目の前に小さな竜巻のような物が起き、そこから小さな少女が現れました。





 少年はその姿を見て胸の何かが動きました。

 顔が自然と熱くなり、心臓がドクドクと脈打ちます。





 少女は白い雪のような純白の髪に、少年より一回り小さく華奢な体つきでした。大きく開かれた目は淡い青色で、髪と同じ白い睫毛に縁取られています。



 少女は少年に首を傾げながら尋ねました。


 「あなたは・・・何処からきたの?」


 少年は顔を赤くしながら答えました。


 「え、えっとずっと向こうから来たんだ!」


 少年はそう言いながら、後ろを指差しました。


 


 少女はそれを聞くと、笑いながら少年に近づきました。


 「ふ~ん・・・そうなんだ。まぁどうでもいいや」

 「へ?」

 「それより・・・」


 少女は足元にある雪をすくって言いました。


 「一緒に遊ばない?」

 「・・・うん!」







 それから二人は自分達の家族や身の回りのことを教えあいました。



 そして少年は、少女は冬の精霊であること。見た目は幼いけど実は300年以上生きていること。人間以外にも色々な姿になれることなどを知りました。



 しかし少年は精霊の正体を知った後も、胸の鼓動が収まらず、ずっと一緒に遊び続けました。

 その為か、精霊は冬が終わると毎年どこかへ消えてしまいましたが、必ず冬になると少年の元へ戻ってくるのでした。











 二人が知り合って何度目かの冬がきました。


 精霊は少年との待ち合わせの場所に来ていましたが、少年がなかなかきません。


 精霊はため息を着くと、膝を払って立ち上がりました。


 「暇だから遊んでおこっと」


 精霊がクルリと一回転すると突風がおこり、精霊はあっという間に狐の姿に変わりました。


 その毛並みは人間の姿のときと同じ白色で、光を受けてキラキラと輝いています。



 そこへ猟師が通りかかりました。


 ―立派な狐じゃないか


 猟師は狐を仕留めようと精霊に向かって銃を構えました。


 しかし精霊は銃で撃たれても死なないので、銃を向けられても猟師をじっと見据えて動きませんでした。




 ですが少年は知りませんでした。


 精霊は銃で撃たれた位では死なないということを。




  精霊は突如後ろから誰かに突き飛ばされました。


 「危ない!」

 「・・・え?」


 その瞬間銃声が鳴り響きました。

 

 嫌な予感がして、精霊が後ろを振り返るとそこには血を流した少年が倒れていたのです。


 「う、嘘・・・」


 精霊は慌てて元の姿に戻り、少年に駆け寄りました。


 血を止めようと傷口を手で塞いで見ましたが、血は止まることなく降り積もった雪の上に深紅の染みを作っていきます。


 「なんで?銃なんて当たっても私は死なないのに!」


 精霊が必死になって少年の頬を摩っていると、少年の目が薄く開かれました。


 「よ、よかった・・・・無事だったんだね・・・ゴボッ」

 「それ血・・・・駄目!喋らないで!!」


 少年の唇はみるみるカサカサになり、喋るたびに咳がもれ吐血しています。


 ―どうして?どうしてこんなことになったの!?


 精霊は酷く混乱し、もう何がなんだか分からなくなりました。


 そんな精霊に少年は微かに笑いかけます。


 「そんな顔しないで」


 少年は精霊の頬をなでいいました。


 「じゃあね・・・・今までありがとう、バイバイ」

 「駄目!いや、いやぁぁぁぁああああ!!!」


 少年の体温は徐々に下がっていき、やがて雪のように冷たくなりました。


 精霊の瞳から多くの涙が零れ、雪の上に落ちます。





 



 精霊はゆっくりと後ろを振り向きました。


 猟師は驚きのあまりただ呆然と立ちすくんでいます。


 「お前のせいで!お前のせいでぇぇぇえええ!!!!」


 精霊が涙の落ちた部分に手を翳すと、突如そこの雪が解け始め水へと変わっていきます。


 さらに精霊が猟師の方を指差すと、水は渦を巻きながら猟師の方へと襲い掛かっていきました。


 「う、うわぁぁああ!!助けてくれぇぇええええ!!!」


 願いも空しく、水は容赦なく猟師の体を包み込み、猟師はそのまま溺死してしまいました。






 「ハァハァハァ・・・」


 精霊は息を切らしながら、猟師の方を見ていました。





 

 しかしこの時、精霊は気付いていなかったのです。


 たった今自分は絶対にしてはいけない禁忌を犯したということに。





 

 精霊がその場に座り込むと天から一人の天使が降りてきました。


 その手には天使には不釣合いな大きな剣が握られています。



 天使は精霊の前に降り立つと、おごそかに言いました。


 「あなたは今、精霊の契約を犯しました。」

 「どういう・・・・こと・・・ですか・・・?」

 「『忘れた』とは言わせませんよ。精霊は力を持つ代わりに、他の生き物を殺してはいけないという事を。」




 精霊はやっと思い出し、天使に向かって必死にいいました。


 「違うんです。あれはあいつが・・・」

 「黙りなさい」


 



 しかし天使は冷め切った声でこういいました。


 「契約を犯した罪により、あなたを今から処刑します。」


 天使は剣を頭上に掲げ、そのまま力いっぱい振り下ろしました。


 

 ザシュッ!!


 

 肉が切断される音が響き、精霊の体は塵となって風に飛ばされていきました。




 天使は一息つくと天に昇っていき、その場所には少年の死体と赤く染まった雪だけが残されていました。




 _________________________



 皆さんどうでしたか?


 


 ときに憎しみとは、災いとなって自らの身に降りかかってきます。


 

 どうか皆様も負の感情に飲み込まれるよう。



 それではまた次の夢でお会いしましょう。



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― 新着の感想 ―
[一言]  遅れました。お疲れ様ですゞ  木下様の素晴らしい点は、感情の描写ですね。企画の詩もそうですが、表現がお上手だと感じました。 「あれはあいつが」という咄嗟の言い訳が、リアリティを感じさ…
2013/12/25 21:02 退会済み
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