桜の少女と女子高生。
何でこんなところにいなければならないのだろう・・・・
桜咲く公園、お祭り騒ぎの馬鹿騒ぎが繰り広げられるブルーシートの隅、
友人に無理矢理連れてこられた私、月崎茉莉亜は一人本を読んでいました。
肝心の友人さえも、ブルーシートの中で他の友人と喋ってったきりです。
私も付いてるって言ったのは誰だよもう・・・
そっと内心友に愚痴を言いながらため息をつくと、ひらひらと淡い桃色の花が一片落ちてきます。
それを優しい目で見つめていると、不意に背後から声がかかりました。
「ねえ、何で君は青空の下、そんなところで本なんか読んでいるんだい?」
振り向いてみると、そこには桜柄の華やかな着物を着た女の子が伺うように立っていました。
歳は10、1歳くらいでしょうか。陶器のようにすべすべしていそうな白い肌、
桜のような頬が抱きしめたくなるほどかわいいのです。
しかし、その目はどこか不思議な光をたたえていて。
なんとなく、神秘的な何かを感じさせるような子です。
「それはもちろん、こんなとこには来たくもないからさ」
そう答えると、とたんにその少女は泣きそうになり
「桜は嫌い?」
と震える声で聞いてくるのです。
大きな目は潤み、顔はすっかり萎れています。
さすがにまずいと思い、慌ててフォローを試みました。
「桜は嫌いじゃないよ、むしろ好きなほう。この雑多な人混みが嫌いなだけ。」
とたんに日が差したような笑顔になり、嬉しそうに透けるように白く細い腕をパタパタと動かします。
「そうなの!?よかった!!」
とはしゃぐ彼女。本当に嬉しそうで、見ているこっちも笑顔になります。
「そうだ、君は本は好きかい?」
唐突だな・・・
「そりゃ、好きじゃなきゃ本なんて読んでないでしょ」
「だよね!そんな君にお願いがあるんだ!」
息せききって言う彼女の鈴の音のような声。しかしその後の言葉に私は驚きを隠せませんでした。
「僕と契約して、本の旅人になってよ!!」
それ・・・なんか某魔法少女アニメの真の黒幕とか呼ばれてるあの人の決めゼリフにそっくりなんですけど!?
驚きながら私が固まっていると、突然彼女はおろおろし始めました。
「あれ?こう言えば話に乗ってくれるってルクスは言ってたのに?」
誰だよ!?ルクス誰だよ!?そんなことこんな可愛い子に教えんなよ・・・。
「いや!?乗らないよ!?というか一部の人は逆に引くからそれ!!」
「そうなのか!あの嘘つき!!まあ、とにかく来ておくれ」
そう言いながら子供とは思えない力で腕を引っ張る彼女。
「いや、ちょっと!!どこへ行くの!?」
さすがに慌てて叫ぶと、彼女は平然とした顔で振り向き、
「え?言ってなかったかい?天ノ国さ!人間は普通は入ることが出来ない、神様の国に連れてってあげるんだから、感謝してほしいよ」
その瞬間、私の視界は白に塗りつぶされ、気づいたときには
緑と花と光の大地に二人佇んでいました。
そして、私の、
『終わらない物語』
が始まるのです・・・・