2
「ギルファー様!」
側近の騎士が勢いよく執務室のドアを開け入ってくる
「なんだ…」
少し殺気のこもった声で言うと騎士が怯む
「…駄目ですよ…陛下…執務がめんどくさいからって騎士に当たっては」
いろいろな書類が山積みになってる机の隣に控えている幼なじみの宰相ライガ・キュリファ。
今や大陸で一番の力を持つといわれる我が帝国。小さいころからすさまじく魔力が強く暴走を何度もしてきた俺は周りの人間から怖がられていた。しかし、ライガだけは、怖がらずずっと一緒に遊んでくれた親友だ。この帝国を治めていけるのはこいつや、今ついてきてくれている部下達のおかげだと思っている。
「…で、なんだ」
不機嫌さを隠さず入ってきた騎士に言葉をかける。
「はっはい。ラギューラ王国から舞踏会の詳細が…」
「…舞踏会?…陛下…そのような話聞いていなのですが…」
顔は笑顔なのだが目が笑っていない…そんな怒らなくても
…いつになってもこいつにはかなわない
「…悪かった…言おうと思っていたとこだ」
「そうですか。…で?どうしたのですか?舞踏会など…嫌いなのではではなかったのでしたっけ」
「…少々興味深いことを聞いてな」
俺は舞踏会が苦手である。女達がすり寄ってきて媚を売る。それをやられたり見ていると鳥肌が立つ。
『獅子王』表面上だけの俺を見る女たち。そんな女たちばかり相手にするのは疲れるのだ。
「…?興味深いこと?」
ライガが首を捻りながら聞いてくる
「ああ。こないだ城下に下りた時にな」
「…!?…殿下…また城下に下りたのですか?」
あっ。キレた…完璧に目が笑っていない。
「…それは悪かった…まあ聞け」
「…もう!あなたって人は……で?なんですか興味深い事って」
溜息をつきながら顔をこちらに向ける
「ああ。ラギューラから商人が貿易に来ていたのだが、王国には『銀月の姫君』と呼ばれる姫がいるらしい」
「「『銀月の姫君』?」」
ライガと騎士が声をそろえて首をかしげる。
「『薔薇姫』は有名ですが…」
『薔薇姫』。ラギューラ王国後妃の娘で第2王女の愛称である。その美貌は母親譲りでとても美人だとこちらにも噂は届いている。舞踏会などにも積極的に参加しており、王国では知らない者はいないだろう。こちらの騎士でも知ってるのだらから。
「その『銀月の姫君』と呼ばれる姫はどうやら第1王女のようだ。」
「第1王女…あまり表には顔を出していませんね…」
第1王女はあまり公的場所には出てきていない。そのため顔を見た事がない。
「あっそうそう…第2王女はあまり民に好かれていないようだ」
「…民に?」
民に嫌われた者が上に立つことは出来ない。
「第2王女の民からの呼び名は表は『薔薇姫』だが裏では『狂華姫』だそうだ。」
「狂った華やかさ…ですか」
ライガが苦笑する。思い当たるのだろう。
何度かあったことはるが確かに狂った程華やかなドレスを後妃と親子で着ていた気がする。どうやら後妃と親子そろって華やか過ぎり物好きなようだ。
「…それで陛下はその第1王女が見て見たくて舞踏会に行くと…」
「まあ…そうだな」
見て見たいのだ。民から好かれる王女。『銀月の姫君』と呼ばれる理由を。
「…久しぶりに見ますね…陛下のそんな顔」
「?そうか?」
頬が少し緩む。久しぶり楽しみと感じている。