1話目
パチッ
『うわっ。眩しい…』
目を開けると視界は真っ白にぼやけて見えた。
しばらく寝た状態でじっと瞬きをしてるとピントが合ってきたが、視界に入るのは相変わらず白だ。
もっと周りを見ようと起き上がろうとしたが頭が痛くて諦めた。
目だけで周りを見てみると肌色の右手が見える。
それをグーパーっと動かしてみ、ボケーと眺めてみた。
しばらく時間が経ち、寝起きの頭もようやく冴えてきた。
そうしてやっと疑問を感じた。
『ここ、何処?』
なんで自分がここにいるのか、第一ここは何なのか。
冴え始めた頭で次々疑問浮かべてみる。
なんで頭が痛い?
なんで自分以外の人がいない?
そして重大なことに気付いた。
それは『自分は…誰?』
この疑問に答えることが出来なかった。
『なんで自分が分からない?』
それすら分からない。
ガラッ
視界の一部が破れた…のではなく、ドアが開いた。
「あらま!!お目覚めだわ。」
入ってきた看護師は、ちょっと待ってねと言い出て行った。
自分のことを医者は「記憶喪失」だと言う。
頭が痛いのは強打した為で、そのせいで意識不明だったのだが、さっき意識が戻って来た。
だけどショックで記憶は失くなっているのだと、医者は淡々とそう告げた。
「君の名前は浜岡凪だ。11歳の女の子だ。」
検査をした結果、体には特に異常はなかったようだ。
だから、面会が一部、許可されそうで男と女がやって来た。
女は自分を見た途端「凪ちゃん!!」と叫び、泣きながら言う。
「凪ちゃん…良かった…目が覚めて良かった…」
「あぁ。本当に良かったよ。俺、もしかしてって…」
男と女の話が分からない。
ただ"凪ちゃん"と連呼している。
"凪"それが自分の名前だと言われても実感がない。
まるで、いきなり現れた人を「自分だよ」と言われたようなものだ。
「どうしたの?凪ちゃん?」
女がグッと顔を近付けてきた。
「貴方達は…誰?」