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十二神徒

 シャルバとの対戦は終わり、勝利の余韻を噛み締める暇も無く、見知らぬ一室に通される。

 「 フフッ// 、私に聞きたいことがあるんでしょう?.. 」

 密室の女性は真っ赤な唇をニヤリと動かし不敵な笑みを浮かべる。

 心の中を見透かしたような問いに少し戸惑いを見せてしまったが、すぐ思索を巡らせる。

 どう質問すれば怪しまれないか……赤子ならまだしも年輪を重ねたおじさんが世界の常識に無知なんて不穏すぎる。

 ──此処は一か八か、()()で乗り切るしかない…少し涙目になり、行き場を失った老人のように喪失感を漂わせる。

 「 実は…随分昔に記憶を無くしてしまってな~~自分を守る事は出来ても不安も多い。この世界の常識について少々教えては貰えないか? 」

  声を震わせた迫真の演技にシャルバは涙を流し、まるで赤子を撫でるように優しい手際で前頭部を摩り、慰め始めた。

 こんな突拍子もない寸劇を簡単に信頼するなんて…目の前の純粋な空気に、少し罪悪感が芽生えたが構わずシャルバは話し始める。


 ─この世界の魔法は“三等〜一等”まであり、それを超えると『ゼロ等級』と呼ばれる神の身技になる。

 ゼロ級は歴史上、確認出来ているが目撃された事は無い…あくまでも噂程度。

 人が使える魔法は一等級まで、(五神人)の血を少しひいてる“()()()()()()()()()”などが一等級を行使する。

 またオリジナル魔法は何処にも属さないが使用者の力量で一等級以上に並ぶ。

 ちなみにシャルバは吸血鬼と人間のハーフで、八重歯が尖っているが、血を吸う事は滅多にないらしい。時々、八重歯をチラつかせ此方の首元を見つめるが…きっと気のせいだろう。

 そして生まれつき【()()()】と呼ばれる固有能力を持つ者も存在し、能力は多種多様。

 中でも一番()()しなければならないのは“十二神徒の存在(神の代行者)”。

 十二神徒とは、神を崇拝し神と同等な強さを持つ、世界で一番強い十二人のこと。

 それぞれの思想・個性が強すぎて関わっても良い事はない。一月に一回、十二人全員が召集される会議があるらしいが場所は不明。


 「…他にも知りたければウチの図書館を使ってください。それと()()()()()が有るのですが… 」  

 上目遣いで申し訳なさそうに顔を歪ませながら目の前の女性が懇願する。その心苦しい表情は、同情心を揺さ振らせるほどに重かった。

 これは身勝手な私情()に巻き込ませた天罰。

 ──受け入れるしか道は無い…

 心の中にある罪悪感を拭うように、二つ返事で快諾してしまった。

 一つは三ヶ月後に始まる()()()()()()()の為、生徒達に魔法を指南してほしいとのこと。

 “アゴナスの戦い(武道大会)”とは、各国から集まる実力者達が一対一で勝敗を決し、優勝を決める大会。  

 魔法を教えるぐらい問題は無いが…果たしてこの世界の子供に通用するのか。バラバラになった配線を一から正しく繋ぐような不安を危惧したが、リベルも参加する以上やるしかないのだろう。

 それに大会(アゴナスの闘い)には十二神徒の一人、魔法の頂点に立つ“マグス(魔賢)”の称号を持つ者が現れる。

 其奴に会えば、神の域(八サークル)に到達出来るヒントが見つかるかもしれない…そんな胸の高鳴りが不安という曇り雨を全て掻き消した。


 シャルバとの対談を終え、世界の歴史を探るべく知識の庭へ足を運ぶ。

 「..あれ…師匠? 」

  馴れ馴れしい呼び方に振り返るとリベルが立っている。今は昼時、仲間達と食卓を囲む時間に汚れた()()()()()()()()()()()()()()()()()を纏いながら物憂げに本を抱くリベルの容姿は正に“()()”そのもの。

 ──そこに親近感を覚えたのか─そうで無いかは分からない…だが思考する前に口が意思を持って目の前の少女に呟く。

 『()()()()()()()()()()()

 「 “乙女の水麗(ウォータークリーン)”……少しはマシになったかな… 」

 静かな図書館で()()()()()()()()と水音が反響し少女に宿っていた汚れがキラキラとした水玉模様に吸収され、可憐な姿を呼び起こす。

 誰でも出来る一般の生活魔法だが、リベルに取っては身に余る幸せだったか…ピンク色の唇に力を入れて笑みを我慢している様子は此方の心を揺さぶり観ている全員を幸福にさせた。

 

 背の小さい女の子が沢山の本を縦に並べ、ユラユラ揺れながら慎重な動きで机の上に本を置く。机の上に山積みになっている本を浮かせながら機敏な速さでページを捲るオジサンに周囲の生徒は全員注目した。

 リベルが語った歴史と同じで不可解な所はない……細かく調べて把握出来たのは今居る場所が【ソドム王国】と言われる国だという事。

 “()()()()()()”と言う二人の神が初めて降臨した由緒正しい歴史ある場所で、世界で一番広大な地域。

 そんな神が降臨した場所は現在“レッドゾーン”と呼ばれるモンスターの住処になっており危険地帯な為、冒険者以外出向く者は居ない。

 しかし神が消えた根拠は何処にも明確に記されて無く、どの本も同じ記述。(まるで改変されてるような異質な違和感)

 その執筆で最も目を引かせたのは“十傑(ヴァルカンの遺作)”と呼ばれる世界の均衡を崩すほどに強い、十個のアイテムが存在したこと。その中には持ち主の人格に影響を及ぼす強力なアイテムが有り、それが五神人の武器であった”()()()”。

 恐らく十傑の一つぐらいは十二神徒が所持している可能性が高い。(そうであれば最強の呼び声にも納得が行く)

 いずれにしろソドム国以外にも赴く必要がありそうだ……その想いに呼応するように次の大会が開かれる場所は世界で最も人口が多く、貴族が幅を利かせている“カナン()”と呼ばれる場所。(要するに王都)

 本の情報を元に大会への熱意が高まり、リベルを凝視した。それと同時に師匠として魔法使いとしての矜持が段々膨れ上がっていった。

 

 グゥ〜 ゴロゴロ〜..…ギュルゥルルルゥゥウ…

 抱いた誇りに魔を刺すように、音が鳴り響く。

 その雑音を聞いたリベルは、自宅を案内する子供のように、空腹を満たしてくれる安息の地へ素早く手を引いてくれた。

 厨房から()()()()と食材を切り裂く音が聞こえ、喉から手が出るように大勢の生徒が腹を空かせ集まっている。

 リベルと共に長蛇の列に並んで食事を注文し、空席の広い食卓に年季の入った腰を下ろした。

 すると目の前には自分の頭と変わらない巨大なステーキが噴水のように肉汁を流し、キラキラした白米が隣で鎮座している。

 その豪華な食品が熱気のように甘美な匂いを放出し、その余韻が鼻を通るだけで胃袋は鳴くのを止めた。

 そう未知の世界の食事に歓喜していると知らない生徒が一声かける。

 「 一緒に食べても良い? 」 

 黒の長髪に青い瞳、見知らぬ少女はリベルの隣に肩を並べ、馴れ馴れしく声をかけた。

 ──どうやら自称リベルの親友らしい


 

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