血はエナドリでありお酒である
園宮と契約してから早1週間と数日俺は毎日放課後は保健室を訪れている。最初は憂鬱で仕方がなかったが今ではそうでもなく、寧ろ少し楽しみにしてる自分がいた。
「園宮来たぞ」
部屋に入った俺はそう声を上げるが返事はない。こういう時は大体園宮は寝ている。というか園宮は下校の時間まで基本的に寝ていてたまに起きることはあれど俺となにかするってことは基本ない。吸血も1週間に1回程度で吸われる量もそれほど多くないらしい。じゃあ毎日来る必要ないじゃんと言われるだろうが…………
「改めて考えても保健室に地下があるとかおかしいよな」
そうこの学園の保健室には地下があった。それもかなり広めの。大体教室位の広さだろう
「人と話すのが苦手な俺からしたら人が入ってくる可能性が低いってだけでここに来る意味はあるんだよな。それにここには色んな娯楽が揃ってるから正直家に居るより退屈しない」
この部屋にはベッドやソファなどのくつろげる家具はもちろんゲームや漫画、ダーツやビリヤードのようなそういう施設位でしか見た事の無いものまでがこれでもかと言うほど設置されている。
「さてと、昨日の漫画の続きを読みたいところだかその前に課題くらいは終さないとな」
この学園は単位制なので授業をサボることも出来る。それくらいには自由で学園もその校風を魅力としているくらいだ。しかし単位制ということは留年の確率も大幅に増加する。特に課題を出さないなんて言うやつは留年街道まっしぐらとなる訳だ。
「今日の課題は日本の地理的問題についてだったかな」
地理の授業とかいつも寝てるんだが…………ん、
地震についてならわかるのか?社会の課題で地震を取り上げるのはどうかと思うが怒られることはないだろ。レポートを書くこと数刻ベッドの方から物音が聞こえた。園宮が起きてきたのだろう。
「おはよう、園宮。この時間帯に起きるのは何気に初めてじゃないか?」
「おはよう三上くん。あなたの血を舐めてから少しずつ眠気が少なくなって来てるの」
「俺の血にはエナドリと同じ効能でもあるのか?少し怖くなってきたんだが」
「……三上くんって大人しそうな見た目の割に意外と個性的よね」
「ボケをスルーしながら言うことじゃないだろ。なんなら遠回しにボケは向いてないってディスってるよな?」
「私は事実を述べただけよ。鏡をみたら納得せざるを得ないんじゃないかしら?」
園宮にそういわれた俺は部屋にある姿見に目を向ける。そこには息をするのも忘れるほど美しい女性と前髪で殆ど目が見えないパッとしない青年が映っていた。もちろん後者が俺である。
「すまんな、パッとしない男が眷属なのは嫌だろ?」
「……まぁ、パッとしないのは事実だけれどここ1週間いくらでも逃げることが出来たというのに大人しく眷属として勤めを果たしているのは評価しているわ」
そう言った園宮の頬は少し紅くなっている気がした。もっとも直ぐに違う方向を向いたせいでしっかりと確認することは出来なかったが珍しい姿を見れたのでこれ以上は追求しないことにした。というかこれ以上は俺も耐えられなくなる気がする。
「あ、そういえば今日は吸血をしようと思っているのだけど体調に問題はないかしら?」
「急だな、まぁ体調に問題はないから別に構わないが今すぐに行うのか?」
「私が言うのも少しおかしいけれど三上くんは躊躇が無さすぎない?」
「それほどでも……あるな」
「つまらないジョークを言う暇があるならさっさと吸血をしやすいようにブレザー制服脱いでくれないかしら?」
「園宮は俺に冷たすぎだろ……まぁ、反論の余地もないから従うけどな」
俺は制服の上着を脱ぎ右肩を露出させる。なんか見られてると思うと少し恥ずかしいが契約した以上やらないといけないので大人しく諦める。そのうち羞恥心が無くなりそうだな
「一応吸血の量には気をつけるけど貧血の症状が出たら直ぐに教えてちょうだい。わかった?」
「あ、あぁ分かったから始めてくれていいぞ」
園宮は意を決したようで血を吸い始めた。最初は緊張していたようだったがその緊張もすぐにほぐれたようででリラックスしながら血を吸っている。しかしそんな園宮とは違い俺の心中は穏やかではない。
なにせ普段から警戒したような態度の園宮が完全に無防備な上に初めて会った時と同じくらいの距離の近さで何がとはあえて言わないが当たってるしいい匂いで頭がクラつくし園宮が時々漏らす艶かしい声のコンボで俺の理性は崩壊直前である。
これ以上の崩壊は後が怖いためひたすら無心を心がけること数分、姿見には妙に肌のツヤが増してご満悦そうな園宮とは対照的にゲッソリした俺が写っていたのだった……
◆◆◆
吸血を終えた園宮は眠気が無くなったらしく吸血のお礼として俺のレポートを手伝ってくれることになったのだが……
「なぁ、園宮少し近くないか?」
「そうかしら?気のせいだと思うわ」
何故か俺の隣で密着するように座っている。ここ1週間程放課後は一緒にいたがそれでもこのような行動をとってくるのは初めての事で違和感があった。しかしその違和感を探ろうと普段ですら理性特攻マシマシの双丘が形容しがたい形になっているせいで理性だけでなく違和感を探るための集中力までもが削がれていく。
「園宮やっぱりもう少し離れてくれないか?流石にこの距離だと書きづらい」
「眷属の分際で主である私に意見するなんて不敬だとは思わないのかしら?まぁ、離れてはあげるけど」
そう言った園宮はススッと数センチ程離れた。俺の左腕を頑なに離さないことも含めて俺から離れる気はないらしい。俺は訴えるような目で園宮を見つめる
「……三上くんは私のことがそんなに嫌いなの?」
園宮は不安そうな表情を浮かべたまま上目遣いで聞いてきた。心做しか頬も少し紅い気がする。普段の冷たそうな雰囲気も相まって理性への破壊力は53万を軽く上回るだろう。
「………そんなこと断じてない。しかし少し離れてくれないとその……理性が持たないというかこんなナリでも一応男だから。……わかってくれ頼む」
そんな攻撃を喰らった俺はそう弁明するのが精一杯だった。しかしこれで園宮も離れてくれるだろう。そう考えた自分は傍から見ればさぞ滑稽だろう。なにせ
「ふーん、嫌いじゃないならこのままでもいいわよね。寧ろそんな風に私のことを見てくれていたならもっと近い方が嬉しいかしら?」
そう言いながら園宮は先程よりも強く密着してくる。左腕の双丘の形が更に歪みあまりの多幸感に感覚が無くなると錯覚するほどである。
「み〜かみくんはいがいとりせいつよくて〜わたしが〜みりょうでおとそうとしてるのに〜ぜんせんおちてくれないんだよ〜」
いきなり口調が激変した園宮を見て俺は違和感の正体にたどり着いた。
(こいつ確実に酔ってるだろう!)
これは推測だが俺の血を吸ったことで園宮が酔いと同様の症状が洗われているのではないとかということだ。なにせ舐めただけでエナドリの様な効果をもたらすのだ。
吸うとアルコールによる酔いと同様の効果か表れても不思議では無い。というか血を飲むという行為の時点で何も不思議では無いだろう。そう結論付けた俺は多幸感による無感覚から解放された左腕を動かしなるべく園宮に触れないように抜く。園宮は……
「すぅームニャムニャふぅー」
ぐっすりで起きる気配はなさそうだ。まぁこのタイミングで起きられると記憶がなかった場合かなり厄介なことになるのでありがたい限りである。
(園宮は甘え上戸なんだな)
そう園宮に聞かれたら冷たい視線を向けられそうな考えを脳内に巡らせつつ園宮をベッドに運ぶのだった。
◆◆◆
「あれ、私は三上くんの血を吸った後何を……///」
その後三上が帰り1人で起きた園宮は酔った時のことを鮮明に覚えており数日は三上を見る度にその事を思い出し顔を紅潮させ隠すために顔を逸らすというツンデレムーブを行うことになることを三上嶺志はまだ知らない