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契約はやがて物語となる

なぁ、眠り姫の噂聞いたか?」


「ああ、なんでも起きた姿を見たって言ってるやつらがいるらしいな。けどあの眠り姫が起きるはずがないだ


「だよなーやっぱデマかー」




この学園には【眠り姫】がいる。名前を園宮葉月といい、物語に出てくるお姫様のような美しさと誰も起きてる姿を見たことがないという噂からこの学園では眠り姫とそう呼ばれている。




そんな男子共の話に溜息を吐きながら俺は教室を後にして保健室に向かう。足がすごく重い、今からでも逃げちゃダメかな。ダメだろうなー




この後の予定を想像してテスト前のようなメンタルになりながら保健室の扉を開く。その先には




「やっと来ましたね。待つのは疲れるので今度からはもっと早くきてください」


「これでも急いで来たんだけどな?まぁわかった明日からは気を付ける。」




入って早々愚痴を言って来たのが何を隠そう眠り姫こと園宮葉月(そのみやはづき)である。普通に考えたら何気ないことだろう。しかし話してる相手が園宮だということは明らかに異常とこの学園の人々は言うだろう。なぜなら眠り姫が起・き・て・い・る・の・だ・か・ら・。




この明らかにおかしい状況に心のなかで叫ぶ




(どうしてこうなったんだぁぁぁぁぁ!!)




◆◆◆




時は前日に遡る。




体育の授業で怪我をした俺は保健室に向かっていた。




「失礼します。けがを見てもらいにきま……」




俺は言葉を最後まで紡ぐことができなかった。なぜなら………




「眠り姫が起きてる……!?」




そう、あ・の・眠り姫が起きていたからだ。それに口元の赤い液体って………血じゃないか?そう思った時には遅かった。なんか凄く嫌な悪寒が背筋に走った。早く逃げないと!そう焦るくらいに俺の勘が異常な程の警鐘を鳴らしていた。




「し、失礼しまし………ひゅっ」




保健室を出ようと顔を上げた瞬間顔の横を何かが通り過ぎて行った




ドンッ




結論から言おう。俺の顔の横を通り過ぎて行ったのは眠り姫の右手だった。つまり




(これって壁ドンじゃねぇか!)




身長差のせいで眠り姫が上目遣いで見てくるし、ほぼ密着状態のせいで姫の由縁たる






「今何を見たか教えてくれないかしら??」




眠り姫が唐突にそう聞いてきた。これって見なかった振りをするべきなんだろうか?




「なぁ、これは興味本心で聞くんだが見てないって言った場合どうなるんだ?」


「私の中であなたの印象が嘘をつく信用できない人なるわ」


「見ました」




ハイライトが消えた目でそのセリフは脅迫でしかない。現実でハイライトが消えるってどういう仕組みなんだろうな?ここは現実じゃない?ハハ、何馬鹿なこと言ってるんだよ




「話聞いてた?」




なにやら話していたようだが脳内にトリップしてた俺には聞こえてなかった。これ興味無いです。とか言ったら逃げれないか?いや、さすがに無理か。




「……もう1回お願いします」


「はぁ、時間の無駄なので簡潔に説明するわ。私と契約しなさい」


「………ハッここはどこ?私は誰?」


「死にたいのかしら?」


「すいません………」




あまりの衝撃にボケたら殺されかけた……渾身のボケだったのにスルーされたのもなんか悲しい




「というか、契約ってなんだ?」


「そこからなの?あなたの頭は考える為に使えないの?」




ちょっと今のはイラッときた。なんか舐められてるのも気に食わない。こうなったらあててやる。手・伝・っ・て・く・れ・




「お前、吸血鬼だったのか?」


「……どうしてわかったのか聞いてもいいかしら?」




園宮は少し目を見開いて驚いた様子を見せた後落ち着いた声でそう聞いてきた。こっちとしてはもうちょっと驚いてくれた方がスッキリしたのだがよくよく考えたら眠り姫と会話出来てることがこの学園の生徒にとっては宝くじの1等賞に近しい価値があるので自慢できるということで多めに見るとする。こら、そこそもそも友達いないとか言うなよ。事実は時に人を傷つけるって知らないのか?




「お前焦り過ぎて口に血が付いてるぞ?」




俺はそう言いながら人差し指で園宮の口を拭う。………我ながら恥ずかしいことしてるなと感じたのは秘密だ。




「……ありがとう。それにしてももっと早く教えてくれても良かったんじゃないの?」




頬を少し紅に染めながら園宮は呟くように言う。瞬く間に俺の心拍数が上がり余りの可愛さにこっちの顔まで紅くなっていくのがわかる。というかこの距離だと俺の鼓動が園宮に聞こえてしまいそうに感じる。




「そ、園宮一旦離れてくれないか?流石にこの距離は恥ずかしい……」


「そ、そうですねもっと問い質したいですしとりあえず座りましょ……その足はどうしたんですか?」


「え、足?」




恐る恐る足を見ると血が流れていた。そう言えば怪我したから保健室に来たんだった。ていうか保健室にいく前に止血したよな?ってことは今になって流血したのってもしかしなくても園宮と密着したことによる心拍数の上昇が原因なんじゃないか?普通こういうのって鼻血で現れるよね?テンプレばかりじゃつまらない?ハハ、ここは漫画の世界じゃないんだぜそもそも興奮による出血なんてそうそうないから。なんてくだらないことを考えつつ園宮に説明をする。




「体育の授業中に膝を擦りむいたから保健室にきたんだよ。だから問い質す前に怪我の手当くらいはさせてくれないか?」


「それで逃げられると困るわ。……はぁ、もう既にバレてるのだからこれ以上無理に隠す必要もないわね。それにさっきのお返しもしたいから一石二鳥で我ながら名案ね。」


「え、なんでだ……園宮お前なにしようとして……」




園宮が俺の膝に近づいた次の瞬間血が伝っていた所になぞられるような感覚が伝わってきた。




「ふむ、あなたの血案外美味しいわね」




………あなたの血?いや、さすがに会って1時間も経ってない相手の血を飲んだりするはずが




「あなたの血液型ってAB型のRhなのね」


「血を飲んだだけで血液型までわかるものなのか……」




どうやら本当に飲んだらしい。余りの衝撃に放心状態になった俺は意識が戻るまで10分の時間を要することとなった。美少女の舌なめずりは破壊力が高すぎることを知った。不意打ちは倍率8倍………!




◆◆◆




「改めて契約について説明したいのだけれどその前に自己紹介くらいはして欲しいの。流石に名前も知らない人が眷属になるのはさすがに抵抗があるの」


「いや、なんで眷属になる前提なんだよ。俺が断る可能性もあるだろ?まぁ、名前くらいならいいか。俺の名前は三上嶺志(みかみれいじ)だ。眷属になる気はない」


「それでは早速契約事項の説明を………」


「いや、眷属になる気はないって言ったよな?俺の意見を汲んでくれよ」


「あなたを信用できたのならその手もあったでしょうけど今のところ信用に値しないので私としても仕方なく眷属にしようとしてるのです。恨むなら信用のないあなたを恨んでください」




そう言いながら不敵に微笑む園宮はそれはそれは可愛かった……状況は全然可愛くないんだけどな。




「はぁ、このままじゃ埒が明かないから契約内容だけ説明してくれ。それを踏まえて考えたい」


「では契約内容を説明するわ。といってもかなり簡単で私から三上くんに要求することは3つ。1つ目は定期的に私に血を吸われること。2つ目は私の正体を人に教えないこと。最後が毎日放課後はここにきて私の正体がバレないように隠すこと。この3つが私からあなたに要求することよ」




いきなりくん付けかよ。いや、寧ろ苗字のくん付けは余り親しくないからなのか?いや、問題はそこじゃないな




「一番の最後のやつは要するに園宮が俺を監視したいっていうことを言い換えただけって認識でいいのか?」


「ええ、そう思ってくれて結構よ。次に私があなたに上げれるものは今のところ2つ。この学校の学費などの諸々の費用免除とある程度融通を効かせること、あともう1つはあなたが決めていいわ。」


「……俺にも利益があっていいのか?」


「圧力だけで契約を結んだら裏切られる可能性が高いわ。けど双方に利益があり無下にしたりしないのならその可能性も低くなるわ。私はお金を失うよりもあなたからの裏切りの方が損失が高いと考えたからこのような内容にしたのだけれどもしかして圧力の方が良かったかしら?」


「いや、少し意外に思っただけだ。あと最後の1つは保留とかにできないか?今のところその2つだけで足りてるからな。だからもう1つは予想外の時に使いたいんだ。例えば吸血のスパンが早すぎるからスパンを決める権利とかな」


「それで構わないわ。それじゃあ契約書を持ってくるから大人しくしてなさい」




園宮はそういうと保健室の奥に行ってしまった。それにしても意外と良い奴だな。今契約書を取りに行ったのもあえて俺を1人にすることで逃げたりしないかを確認してるんだろうもし逃げたりするなら利益とかで何とかなる話じゃない。実力行使を行ってくるだろう。それならば大人しく契約を結ぶのが最善だ




「あら、逃げなかったの。てっきり直ぐに逃げる臆病者だと思っていたから、少し意外ね。まぁ、利益あると分かり逃げることなく契約を結ぼうとする合理的な頭があったのは見直したわ。ほらさっさと書きなさい」




園宮から渡された紙に名前を書き、契約内容を確認する。俺を嵌めるとしたらここだったが契約内容に変更はないようなので騙されてる線は無いとみていいだろう。




「これ血判いるのか」


「言ってなかったかしら。そうね、私が噛んで血を出して上げてもいいわよ?」


「いや、必要ない。予想はしてたからカッターナイフを出してある」




ネタ的な意味で出したカッターナイフを本当に使うとは思わなかったけどな。カッターナイフの先で親指をなぞると血が出てきた。まぁ、当然か。後はペタッとな




「ほら、出来たぞこれでいいか?」


「え、ええ問題ないわ。後は『契約は血へと刻まれん』」




園宮がそう呟いた瞬間契約書は2つ別れた後俺と園宮それぞれの心臓に入り込んで行った。ここってやっぱり現実じゃないのか?いや流石に吸血鬼くらいで現実を否定するのはおかしいか。




「これで契約は完了したわ。明日からよろしくね三上くん」


「ああ、こちらこそよろしくな園宮」




こうして俺と眠り姫こと園宮葉月の主従もとい契約関係が始まったのだった。



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